【大企業辞めるってそこまでリスクなの?】農業を変えるために転職した東大卒業生が、仕事選びを語る

2017.10.22
さいしん

あなたが選ぶのは「安定」ですか?

それとも「挑戦」ですか?

お久しぶりです。さいしんです。

大学三年生になり、就職なんてものを考えるようになりました。(てか半年前までは点数低くて学科選択に悩んでいたというのに…)

やっぱ東大生なら大企業、なんなら外資・商社・コンサルでしょ!!とか安直な考えでいろいろ考えている時に、とある東大卒業生を知りました。

「え、あのマッキンゼー辞めてベンチャーに入り、農業を変えようとしている女性がいる!!??」

農学部在籍の僕にとって、農業は近い存在であるとともに、あまり変革が起きにくい印象のある分野。どのような心持ちで飛び込んだのか、そもそもその決断力に迫りたいと思い、今回お話を伺いました。

学生証
  1. お名前:菊池里紗(きくちりさ)さん
  2. 経歴:東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻卒業。大学院卒業後、McKinsey & Company 入社。主に製造業の成長戦略や組織戦略のコンサルティングに従事。 2016年SenSprout入社。2017年4月より代表取締役就任。

新しいことに挑戦するハードルが下がった

――実際一流企業からベンチャーに飛び込むにのには大きな決断力が必要だと思いますが、もともと大胆な方だったのですか?

幼いころは人見知りで、勉強や習い事も大胆というよりコツコツタイプでした。

転機としては、小学校5年生の時に父親の転勤でアメリカに引っ越したことがあります。同じ学年に日本人のいない現地の学校に入れられ、全く英語がわからなく授業のノートすらまともに取れない状態でした。

しかし、1年がたち勉強にもついけるようになり、また現地の高校ではハイレベル英語のクラスに入れるまでに英語が上達しました。一度自分の能力を捨てても成長して成果を得られたことは自己肯定感にもつながりましたし、新しいことに挑戦するハードルも下がりましたね。

農業への魅力を感じる

――その中で、東大で農学部を選ばれたんですね。

アメリカにいたころ理系科目が好きだったのですが、帰国してからは公式の暗記が苦手で…。東大も文科三類で入学しました。その頃は教育学部や教養学部を目指していました。

しかし、実際大学に入学して、理論より実践に近い分野がいいなと思いました。その中で農学部の国際開発農学専修を知りました。

――確かに農学部でも農業の観点から世界を開発し、よくしていこうという国際開発農学専修は実習が多いイメージです。

はい。もともと原体験として祖父母の家が茨城県にあり、帰省するたびに取れたての野菜を食べたりしていたので、都会より自然に囲まれていることが幸せだったのもあります。

あと、ちょうど進学振分けあたりでレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読みました。その中で漠然と「短期的な視点での農業は環境に負荷をかけてしまう。もっと持続可能な自然資源活用を学びたい」と思い始めました。

足りないのは「問題解決能力」だった

――勉強以外に大学生の頃はどのようなことをされていたのですか?

大学生の頃はいろいろな活動をしました。

まず学部4年の直前に起こった東日本大震災。そもそも東北は自分の専門である農林水産業が盛んでしたし、今東北で何が起きているのか、どのような状況なのかを実際に目で見て、少しでも貢献しないと一生後悔すると思いました。

部活を引退したのちに2011年10月に初めて東北を訪れてから、研究の調査や大学院のサマーセミナー、ボランティアや自分たちで企画したツアーなど、様々な形で東北を回りました。修士論文でも宮城にできた水産特区による資源の管理の在り方や漁協の役割の変化を社会科学的に研究しました。現場で様々な方にインタビューを行い、結果をテキストマイニングで解析していました。もともと教室外での学びが好きなのですが、やはりフィールドワークにはやりがいを感じていました。

あとは大学院1年の時に一か月間モロッコにJICAのインターンで行きました。この時、水産と農業のプロジェクトのお手伝いをしたのですが、現場で活動する日本人の専門家の方たちの、現地の方のために尽くし結果にこだわるプロフェッショナリズムに感動し、自分もそうしたキャリアを積みたいと強く思いました。ただ、一方で水資源の少ないモロッコで高付加価値な作物を作るというプロジェクトは成果は出ていましたが、他の地域にそのまま展開することにはハードルを感じ、これからは農林水産業のプロジェクトも技術の力を掛け合わせないとスケールさせることが出来ないだろう、と感じました。

――その中で、就活にもなると思うのですが…

他にも実はまだまだ色々な活動をしていたのですが、「自然×IT×教育×海外」という軸で働いていきたいと思うようになりました。また中学生の頃に受けたキャリア設計の授業から「Make a difference(世の中に何か良いことをもたらすことは当たり前)」という考えが心底にあったかもしれません。

しかし、大学生の頃の活動は、現場に行って楽しいものの、スキルが不足していることもあって、そこからの具体的なアクションにつながりませんでした。ではどうしたら必要なスキルが得られるか考えたとき、まず考えたのは博士号を取得して学問からアプローチすることです。

また、直接東北の現場などに飛び込むことも考えました。学生時代から先輩のベンチャーの立ち上げの手伝いなどもしていたので起業もいつかは一つの手段としてあり得るかとは思っていましたが、当時は具体的なビジネス案もありませんでした。

そんな中で、自分がやりたいことをやるためにはまずビジネス的視点、つまり問題解決力を身に着けたいと思い、それが実践できるコンサルティング会社を志望しました。

「ぜひ挑戦すべき」と後押ししてくれた

――マッキンゼーに就職されましたが、今の企業にはどのように出会いましたか?

マッキンゼーに就職して一年半ほどたち、そろそろ自分の軸である「自然×IT×教育×海外」での仕事に就きたいなと思っていました。そんな時、現役コンサルタントと卒業生が集まる会で、元同期から偶然、農業に技術を取り組んだ商品を開発している、SenSproutを紹介されました。

当時、製造業などのプロジェクトでデータ活用の可能性について考えることが多く、この流れが農業の生産現場にも波及するのではないかと考えていました。また、会社設立当初から海外展開を考えていることを知り、私のやりたいことに合致していました。

そこで創業者メンバーにつないでもらい、話しているうちに直感的に自分はここに行くのだろうなと思っていました。

――ただ、新卒すぐでの転職とあって、決心するのも大変だったのではございませんか?

確かに当時はフルタイムの社員もおらず、実際正直なところ将来どうなっていくのかわからない状態でした。周りに相談しても、「それ本当に事業になるの?」という声をもらうこともありました。

しかし、その当時にお世話になっていた人から

「それは本当に社会的意義があることだし、ぜひ挑戦すべき!」

と後押ししてもらえました。これは本当に大きかったです。一人でも全面的に応援してくれる人がいるということが本当にありがたかったです。そうした声があったから、会社やプロジェクトの可能性にかけてみようと思いました。

――とはいってもなかなかできない決断ですよね…

特に、イベントなどで会う東大生によく言われます。「マッキンゼー辞めてスタートアップなんてよくそんなリスクを取れましたね」って。

でも、私はそもそも大企業を捨てることがそこまでのリスクだとも思っていません。大企業に行ってやりたくない仕事をするのもリスクだし。その中でやりたいことをやって失敗してもスキルが手に入るのであれば、やりたいことをやりたいようにできる後者を選びたいと私は思いました。

たしかにこの考え方は一般的ではないけど、私みたいにこういった選択肢もあるんだと知ってほしいですね。

農家と「伴走」する

――今はどのような事業をされているのでしょうか

今は主に土壌センサーを提供しています。

SenSproutが提供している土壌センサー。センサーとしては小さいイメージでした。

このセンサーは水分・養分・温度などを計測する機能があり、今後進めていく自動化によって農業に使用する資源(人、水、資金)の最適化ができます。

また、一般的なセンサーや自動栽培施設は大規模でコストがかかるものが多い一方、このセンサーシステムはコストがかからず、日本のようにハウスあたりの面積が少ない場合でも導入の費用対効果が高くなります。

今後は、最適な水や肥料の配分などを教えてくれるといった、いわば「農家と伴走する機械」として活躍してほしいです。

――社会的意義というのは…?

まず、現在農家が減少してきているのは周知の事実ですが、それとともに農家の方々が築き上げてきたの経験知というものも失われてきています。しかし、この機器でその経験値を情報化することで、知識の損失を防ぐことが可能になります。

また、日本の農業は非常に先進的なものであり、このような価値あるノウハウを海外に輸出することも可能です。インドでも2016年から実験を重ねていますが、深刻な水不足に対しデータを用いることで水資源の最適配分を教えてくれれば海外の農業問題を解決する手立てにもなりうると考えています。

最後に

――最後に東大生に向けてメッセージをお願いします。

私は「自然×IT×教育×海外」という軸で自分のやりたいことを探していましたが、私が軸を見つけたのも、いろんな挑戦やチャンスを経て、「自分は何をしているときが一番幸せか」を振り返ったからです。

今はまだやりたいことが見つからない人も多いと思います。
そういう人は、是非、小さいものでもいいので挑戦してみてください。そしていろんな方、特に社会人と積極的に交流してみてください。そこからやりたいことのヒントを見つけることができるのではないでしょうか。

菊池さん、インタビューご協力ありがとうございました!!
この記事を書いた人
さいしん
はじめまして! さいしんです。UmeeTのライターをやっています。よろしければ私の書いた記事を読んでいってください!
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