【今を生きる学生たちへ】人工知能と作る未来を考えよう




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それではまず、東京大学准教授である松尾豊氏の著書であり、東大生協本郷店理工部門で売上一位を達成した『人工知能は人間を超えるか』を参考にしながら、基礎知識を一緒に整理していきましょう。

そもそも人工知能って? 

人工知能(Artificial Intelligence)の定義ってなんでしょう?

松尾豊氏は「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれを作る技術」と定義しています。

その他の専門家による人工知能の定義(45ページより)

「人間のような知能を作るって、そんなこと出来るの?」と驚く人も多いでしょう。実際現段階では、松尾氏の定義するような人工知能は完成していません

しかし専門家は、人間の脳は電気信号で情報を伝達しているのだから、コンピュータでそれを再現することが出来るはずだと考え、日々人工知能技術を研究しているわけです。

つまり、人工知能研究とは、人間のような知能を作る技術の研究と言い換えることができるでしょう。

 

ただし、人工知能を「人間の脳と全く同じ働きをする知能(強いAI)」と定義するのではなく、「限定された知能によって一見知的な問題解決が行えるようなもの(弱いAI)」と定義する立場もあります。

人工知能搭載の掃除機などの言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、そういったものは、あくまで人間の知能の一部(掃除機であれば、ゴミを認知するという知的活動)を真似して一見知的な活動をしているだけなので、弱いAIの立場からすると人工知能となりますが、強いAIの立場からすると人工知能とは呼べないというわけです。

 

この記事における人工知能は強いAIの方を指しており、未だ実現していない人工知能がどのように発展してきて、どのように進化していくかを追っていきたいと考えています。

 

今話題の「ディープラーニング」って?

さて、人工知能研究は人間のような知能を作る技術の研究のことを意味すると説明しましたが、近年この人工知能研究に大躍進が生まれました。

その大躍進のキーワードとなるのが「ディープラーニング」なのです。

 

そのディープラーニングの技術によって、人工知能は特徴表現学習が出来るようになったのです!

 

……いきなり言われても意味分からんわって感じですね。

これだけではディープラーニングが何なのかも、どうすごいのかもよく分かりませんね。

しかしそれを理解するためには、一度人工知能研究の歴史を振り返ってみる必要があります。

少し遡ってみましょう。

 

人工知能研究の歴史

人工知能研究の歴史は、大まかに3段階に分けることができます。順を追ってその歴史を追っていきましょう。

人工知能研究の3段階を表した図(61ページより)

①第一次AIブーム(1950年代後半〜1960年代)

この時期に主に開発されたのは「推論」と「探索」の二つです。

具体的な例として、将棋やチェスでどの手を出すのが最適かを決めたり、複雑な迷路の道筋を割り出したりする人工知能が発展しました。

定義されたルールの中で、あらゆる選択肢の中から結果をシミュレーションして最良の一手を繰り出す人工知能の強さは桁外れであり、近年人工知能がプロ棋士に勝利したというニュースを知っている人も多いでしょう。

人工知能が勝っちゃった

しかしこれらには限界がありました。

なぜなら、この人工知能は定義されたルールの中で限られた選択肢の中から選ぶことは得意でも、我々が現実に直面するような複雑で抽象的な問題には全く歯が立たなかったのです。

 

②第二次AIブーム(1980年代)

そこで出てきたのが「たくさん知識を詰め込んでしまえば現実の問題にも対応できるんじゃないか」という考えです。

確かに、たくさんの知識を入れたらその道の専門家として複雑な問題にも対処できそう。

実際、多くの知識を詰め込んだ人工知能が2011年にクイズ番組で人間を差し置いて優勝したり、ある質問に対してそれに対応する返答を返すように設計されたSiriも登場してきています。

東大合格を目指す人工知能「東ロボくん」の名前を聞いたことがある人も多いのではないしょうか。

 

しかしこれもまた限界がありました。

クイズを解いたり言葉を当意即妙に返す人工知能は、クイズの内容や相手の言葉の意味を理解しているように見えて、実はそうではありません。

「その単語が出てきたら、こう答えるのがいいだろう」というプログラムに沿っているだけなのです。

このやり取りも、プログラムに沿ってるだけ。

概念や意味を理解することが出来ない人工知能に知識だけを詰め込んでも、いずれは限界がやってきます。

この世の全ての知識や一般常識を詰め込めば全ての質問に答えられるかもしれませんが、そんなことは明らかに不可能であり、結果として「知識を詰め込めば現実の問題に対応できるんじゃないか」という期待が実を結ぶことはありませんでした。

 

③第三次AIブーム(現在)

そんな中で次に登場するのが機械学習です。

これは近年急速に増えてきたWebページやビッグデータなどの大量のデータを活用していくものです。

ここでの「学習する」とは物事を「分類する」ことであって、分けることはある物事を認識して判断することに繋がります。

 

機械学習とは、第二次AIブームのように人間によって一つ一つ与えられたデータを用いるのではなく、あらかじめ大量のデータが与えられて機械がそれをもとに「分け方」を自動的に学習し、未知のデータを分類できるようになることを指しています。

与えられたデータから自分で勉強できちゃう

学習のプロセスは、多くの受験生と同じように、たくさんのデータを入れた後、問題を解いてみて間違った部分を何度も修正していくというやり方です。

 

「2」という文字を見分けるシステムを例にとって見てみましょう。

まずたくさんの「2」の画像を取り込みます。これら全ての「2」の画像に「これが2である」という答えを結びつけておきます。

そして問題の「2」を見てそれが「2」であるかどうかのテストを繰り返し行なっていきます。

もしも「2」だと認識できなかった場合には認識の構造微に調整を施して誤差が少なくなるように調整していく、というものです。

 

実際これを用いて文字を見分ける文字認証システムが開発されるなど、ただ知識を詰め込んでいくよりも精度は高く、実用的でもあります。

これを発展させていけばもっと実用的な問題にも適応できそう。

 

しかしまたこれにも難点が見つかります。

それは「与えられたデータのどこに注目すればいいかが機械だけではわからない」という点です。この「データのどこに注目するか」のことを「特徴量」と言います。

つまり、特徴量が何であるかを判断することは人間に依存しているのです。

特徴量を何に定めるかによって機械学習の精度が大きく変わってくるのですが、少し実感しづらいので、例を挙げてみましょう。

 

A君はBさんのことが好きです。

そこでA君は「Bさんが自分に気があるか」ということを知りたいと思っています。

二人に関する大量のデータがある中で、皆さんだったらどこに注目するでしょうか。

きっと「A君とBさんが遊んだ回数」だとか「A君とBさんがお互いのことを考えている時間」とかに注目するでしょうし、これらに注目すれば脈アリ度もおおよそ分かるでしょう。

しかし例えば「A君とBさんのそれぞれの睡眠時間」だとか「A君とBさんの家族構成」とかのデータに注目しても、きっと欲しい結果は得られないですよね。

 

特徴量が機械学習の精度に大きく影響を与えていることが分かったのではないでしょうか。

しかし人工知能にはこの「与えられたデータのどこに注目すればいいかを見つける能力」がないのです。

AI「どこに注目すればいいのか分かんないよ」

 

この50年ほどの研究で人工知能は進化してきてはいるものの、物事の概念や意味を理解できないことや、物事のどこに注目すればいいかという点において、人工知能研究者は苦しめられてきました。

 

その壁を打開しつつあるのがディープラーニングなのです。

ディープラーニングのすごいところ

ディープラーニングの技術によって、今まで不可能だった「人工知能が概念や意味を獲得し、データのどこに注目すればいいかが分かるようになる」ことに一筋の光が見えてきたのです。

 

具体的なメカニズムはここでは割愛しますが、非常に簡単に説明すると、元のデータを何度も何度も圧縮していって無駄な部分の情報量をそぎ落としていき(抽象化していき)、そのデータの中心となる部分だけを残すという技術です。

 

次は数字ではなく、より複雑な「ネコの画像」を見分けることを例をにとって見てみましょう。

 

まずネコの画像を大量に取り込むところまでは機械学習と同じです。

しかしそこからのプロセスが全く異なります。ここからネコの画像にノイズをかけていくなどして細かい部分の情報量をそぎ落としていくというプロセスを繰り返していきます。

これを繰り返していくと「典型的なネコの画像」、「ネコの画像の核の部分」が残るというわけです。

猫「僕の核の部分ってニャンだろう!」

このような作業を通して何度も何度も(それこそディープに)繰り返していくことは、その物事の核となる部分を特定していくことに他なりませんし、核となる部分とはその物の概念だと言い換えることができます。

 

そうして作り出された概念に名前をつけることで、名前と概念が結びつきます。

この結び付けは日々私たちが行なっていることと同じであり、概念を獲得した後はこれまでとは桁外れの精度で物を見分けていくことができるのです。

猫「僕が機械に見分けられる?ニャンてこった。」

人間が外から特徴量を決めるのではなく、抽象化を繰り返していく過程で自ら特徴量を作り出し、概念を獲得していくディープラーニング。

今これほどまでに注目が集まっている理由は、ディープラーニングが人工知能研究に立ちはだかっていた壁を壊す救世主であるからと言えるのではないでしょうか。

 

初めは画像認識システムに留まっていたものの、近年機械翻訳やゲームにもその活躍の場を伸ばし始め、ここから爆発的に人工知能の性能が上がっていくことも考えられることです。

そうして進化していく先に待っているものは何なのでしょうか。

 

シンギュラリティって何だ?

ディープラーニングの誕生により人工知能の性能が期待される今日、よく耳にする「シンギュラリティ(Singularity)」という言葉。

直訳すると「技術的特異点」となりますが、人工知能が自分より賢い人工知能を作ることができるようになった瞬間(点)のことを指します。

一度自分より優れた人工知能を作れるようになれば、無限に能力が上昇していき結果として人間を超えることだって大いにあり得るというわけです。

シンギュラリティは起きるの?

「いやいや、ディープラーニングで人工知能が大きく進歩しているからといって、人工知能が人間を超えるなんてあり得るの?」と思った方。当然の反応です。

実際のところ松尾氏も「シンギュラリティで議論されているような『真に自己を設計できる人工知能』の実現は遠く、現在のところ、その糸口さえもつかめていない」と述べます。

また、人工知能がターミネーターのように意思を持って人間を侵略することもないだろうと結論づけています。

こんな侵略戦争は起きない

だからと言って「なら安心だ」と高を括ることも適切ではありません。

なぜなら、人工知能が人間そのものを超えることはなくとも、ある部分では人間の能力を超えることは現段階でも起こっていることであって、人間と機械が入り混じった社会になってきていることも事実だからです。

 

それでは、この人間と機械が共に存在する社会は今後どうなっていくのか?そして我々はどのようなことを考えながら行動していけばいいのでしょうか?

 

次ページ:人工知能はこれからどうなっていくのか?

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苔

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