【世界を「創る」】僕が熱中する人工世界という芸術形態について




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実際にどんなものを作っているか

限界ファンタジーオタクなので、机はいつもこんな感じ。

①世界観は惑星の形成過程とプレートテクトニクスから考える

創り始めの時に、いわゆる地学・地理に含まれるような知識が山ほど必要になります。

それは設定を始める際、惑星の形成過程やプレートテクトニクスから考え始めるからです。こうすることで、非常にリアルな地形の設定が可能になります。

また、地理的な環境は文化にも大きな影響をもたらします。これは歴史や言語を創っていく上でも重要なファクターなのです。

 

人工世界を創ることは文系らしい活動に見えますが、実際には理系の知識も必要です。人工世界作りに関係のない学問は存在しないのです。

(このため、僕は1年生の時に総合科目E系列 惑星地球科学と宇宙科学の授業を履修しましたが、特に後者については文系の僕にはかなり厳しかったのは言うまでもありません。)

②神話の根底には哲学を

人工世界の神話を考える上では、ある程度哲学を学ぶ必要もあります。

設定を考える上では「かっこよさ」も大事ですが、僕は「物語の流れの上での必然性」も重視したいと思っています。そのための指針となるのが、自分が内面にもつ哲学的思想です。

 

当面僕が考えているのは、その世界の人々に自由意志はあるのか、それとも運命は決まっていて不可変なのか。

いわゆる決定論 determinism V.S. 自由意志 free will の議論ですね。このような哲学的トピックついてはまだまだ学ぶことは多いことを自覚しています。

③言語を作る

もちろん人工言語も人工世界の重要な一部分です。

具体的な創り方としては、言語に使う音素(発音される音)を選ぶ → 文法を作る → 意味論について考察するというプロセスになります。

人工言語を作る上では文字も創作します。写真はヴァロケリム文字と名づけたもので、内容は聖書の「バベルの塔」(創世記11: 1-9)の一部です。

特に力を入れているのは時間の経過による言語音の変化(音素交替)です。

地球の言語の進化の過程で実際に起きた音韻変化(例えばインド・ヨーロッパ祖語からラテン語・ギリシア語・サンスクリット語などへの変化)を参考に、言語を変化させていく作業をしています。

例えば

エスュル祖語 arhanqui- 心臓(√arha- 中央 + √nqui- ある (体の)真ん中にあるもの)> アンダル祖語 arakwi- 心臓、心> 南アンダル語 arachwe- 心> フェレンダ語 archwe- 心(を尽くすこと)、愛> アルティジハーク語 arwa

(言語名は全て中野が作った人工言語のもの;ルート記号は、言語を構成する最小単位である「語根」であることを表す)

ここでこのような変化を説明するために、国際音声記号(IPA)の説明を少しだけしておこうと思います。

国際音声記号は、言語学の分野において、全ての言語の音を統一された記号体系で表記するための記号です。

両端を [] とか // とかで挟んである記号です。英語の教科書や辞書などで見たことのある人は多いのではないでしょうか。

上の各言語の綴り字はおよそ国際音声記号をそのまま書いたものになるのですが、”ch” はドイツ語のchのように、[x] の記号で表される音で読まれます。なお “r” は巻き舌の [r] です。

それでは、この国際音声記号を用いて、エシュル祖語からアンダル祖語への音の変化を表すと以下のようになります。

h > φ / D_D

N > φ / _CC

q > k / _

u > w / _i

ただし、D=任意の有声音、N=任意の鼻音、C=任意の子音。φ は音素が存在しない状態を表す(つまり変化後がφならば、音が欠落するということ。以下同様)。

上から、「[h] が有声音に挟まれているとき、欠落する」「鼻音の後に子音がふたつ以上連続するとき、鼻音が欠落する」「[q] が [k] に交替する」「[i] の前の [u] が [w] に交替する」という変化を表します。

このように、「A > B / C」という形の式で、「条件Cの元で音素Aが音素Bに変化します」ということを表すことができます。

アンダースコア「_」は、該当する音素の位置を表します。つまり例えば条件式「D_D」は、「該当の子音が有声音に挟まれているとき」の条件を表現します。

 

続いて、アンダル祖語から南アンダル語への変化では、有声音に挟まれた [k] が柔らかくなって、先述の [x] の音になります。

また、語末の母音 [i] がはっきり発音されなくなって、曖昧母音とも呼ばれる [ə] になります(”e” と書いてありますが、この言語では末尾の母音、特に “e” は曖昧母音 [ə] で読みます)。

P > F / D_D

e > ə / _#

P=任意の破裂音、F=任意の摩擦音。#記号は単語の端を表す。つまり「_#」は「単語の末尾で」。

破裂音:口の中の空気の流れを止め、一気に解放することで得られる音。英語でいう p, t, k, b, d, g など。

摩擦音:口の中の空気の流れを阻害して得られる、擦れるような音。英語でいう f, s, v, z など。

だんだん表記の方法がわかってきたでしょうか。

では、南アンダル語からフェレンダ語への変化は、

V > φ / _[-stress]

ここでは、[-stress]は、その直前に書いてある母音に強勢(アクセント)がないということを意味する。

そして、フェレンダ語からアルティジハーク語は、

x > φ / D_D

e > a / _#

となります。

 ④テクストを書く

人工世界制作のアイデアを描き溜めるために使っているノートたち。

人工世界を作っても、それが頭の中やメモ書きの中にあるだけでは人に見せることができません。そこで僕はとりあえず小説を書いています。

人工世界を表現する方法は、絵画や音楽などいくらでもあるし、なぜ文字媒体でそれを発信しようと思ったのかと尋ねられることがあります。

はっきりした理由は思いつかないのですが、主たる理由は、なんとなく僕が最初にこういう系統のファンタジーを受容していた方法が文字と映像、つまり「小説+その映画化作品」のセットが多かったからかなと思います。

『ナルニア国ものがたり』『ハリー・ポッター』『指輪物語』『エラゴン』あたりを小学生の時に観たので、その影響が大きかったと思います。

こういう大きなサイズの作品を誰かに見せる方法として、小説と映画のセットというのは書き始めた当初の僕にとってはなんとなくデフォルトのように感じられていて、今も結局創っている作品の形態にはそれが一番あっているのかなと思っています。

 

一方で、同時進行でその小説の中に登場する書物なども書いています。

例えばこの間は、小説の中のある登場人物(ある国の王)が宰相に対して書いた罷免状や、地方長官がこの王に宛てた地方反乱の報告書などを書きました。

これらは小説自体にはほとんど出てこないのですが、小説の追補編に入れることで、より奥行きを持たせることができるのではないかと考えています。

 

まだちゃんとしたテクストになってはいないものの、メモ書きとして残しているプロットやアイデアは多くあります。

‘Book of Days’ (お気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、これはEnyaの同名の曲からタイトルを借りています)は雑記帳のような扱いで、思考の過程を日々記録するのに使っています。

また、出先などで Book of Days にアクセスできない時のためのミニサイズの ‘Fragments of Hope’ と題したノートもあります。

これらに思いついた設定を書き込んでいき、形になりそうだと思ったら書き始めるようにしています。

‘Book of Days’

登場人物の衣装デザインなどを集めた ‘Illustrating the Imaginations’

‘Fragments of Hope’ と題した小型のノート。移動中とかにアイデアを書き留める際はコレです。

ところで先述の通り、僕は現在のファンタジーに物足りなさを感じているわけですが、そのもうひとつの原因がワードチョイスです。

例えばスマホゲーム等(僕はそんなにプレイするわけではありませんが)、YouTubeや他アプリの広告やらツイッターやらで情報が流れてくる中で、「難しい言葉を使おうとしすぎではないか」という感想を抱いています。

 

「紅蓮の炎」「紺碧の空」など(あくまでも一例ですが)、いわゆる「かっこいい」言葉を使わなくても、文章はかっこよく、美しくできると思うのです。

もちろんこういう強い意味を持つ単語を印象づけのためにスパイスとして使うのは大賛成ですが、こういう単語を、それぞれあえて「あかあかと燃える火」「真夏の海のように青い青い空」などと言い換えると、また別の趣が出ますよね。

僕は自分の人工世界を後者のように表現したいと思い、難しい言葉を使いすぎていないか、自分でチェックするようにしています。

次ページ:人工世界の意義と今後の目標

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東大2年文科Ⅲ類TLPフランス語→教養学部教養学科超域文化科学分科学際言語科学コース。趣味は小説執筆/人工世界創作/語学全般/人工言語/音楽演奏・作曲(YoutubeでTormis Narnoで検索)/ダンス/絵画/木工など。東京大学室内楽副会長、自作曲「交響詩『クー・ヒュルン』」を演奏。映画製作スピカ1895のミュージカル映画『めくるとき』の音楽担当。人工世界と現実世界の関係を描いた『世界のあいだ』を制作予定。言語等創作に興味のある方は、ツイッターの創作アカウント@Firraksnarre_TN をどうぞ。

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