Kardæ! Lóë Tomohíro Näkäno / Tormís Nárno. Ónohe nātu on værion në. (こんにちは! 僕は中野 智宏/トルミス・ナーノです。初めまして)
以上は僕の創った人工言語「アルティジハーク語」による挨拶でした。
初めまして、文科Ⅲ類2年の中野智宏です。
「人工言語? 言語を創る? なんのことやら」というあなた、そして、「マジ? 東大にも人工言語やってる人いるの?」と思ったそちらのあなた、この記事を読んでいきませんか。
ここでは、僕が熱中している、人工世界というこんにちではまだ珍しい作品形態について、その一部である人工言語の話も含めてしていこうと思います。
人工世界 conworld (constructed + world) / world-building という単語に、あまり一般に認められた定義はありません。僕はここで「人工言語や地理など、細かい作り込みがなされている架空の世界」と定義します。
一方で、人工言語 conlang (constructed + language) は、特に海外で比較的一般的に使われるようになってきた単語です。人工言語とは特定の人または団体によって創造された言語を指し、僕自身は人工世界の一部として捉えています。
また、人工言語はエスペラント語のような国際補助語、シンダール語・クウェンヤ語(『指輪物語』)やクリンゴン語(『スター・トレック』)のような芸術言語などの下位区分を持ちます。
さて、人工言語や人工世界はどのような歴史を持っているのでしょうか。
人工言語だけでいうと、11-12世紀の神聖ローマ帝国の修道女 ヒルデガルド・フォン・ビンゲンまで遡ります。
彼女は lingua ignota ——「未知の言語」として、「神」「天使」などを表す架空の単語を作り出しました。その用途はもっぱら宗教的なもので、神秘性を高めるものだったと言われています。
「人工世界」と呼びうるようなものを生み出した有名な作家といえば、J.R.R.トールキン(『ホビットの冒険』『指輪物語』)やC.S.ルイス(『ナルニア国ものがたり』)などでしょう。
実はそんなに新しい発想ではないんですね。このうち、トールキンはエルフたちのためにシンダール語・クウェンヤ語を創り、現在世界各地に熱狂的なファンをもっています。
また、『スター・トレック』のクリンゴン語、最近では『アバター』のナヴィ語、『ゲーム・オヴ・スローンズ』のドスラク語・高ヴァリリア語など、様々な作品を通じて、人工言語はメジャーになってきています。
ここでいう人工世界においては、設定の細かさとア・プリオリ性(ラテン語 a priori; 「先天的な」の意で、既存のものに依らず、一からなされていること)が重要になります。
少なくともここでは、人口世界は単なるハイ・ファンタジー(異世界ファンタジー)とは区別して扱います。
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