東大卒女芸人が、ホームレス支援と路上ギャグ師から考える「豊かな路上」




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オモロ川さんに出合う

取材を試みるにあたり、先輩女性芸人の「とりあえず夏海」さんにオモロ川さんをご紹介いただいた

アパホテル社長のコスプレに身を包んだとりあえず夏海さん


なんばの喫茶店にて、
路上で演じ続けている彼だからこそわかる、路上に立つ人と通行人、または地域とのかかわりについて様々な疑問をぶつけてみた。

――ずっとピンでいらっしゃるようですが、外でしかも一人で演じるって難しくないですか?

「三年目までは一人でコントやってたんです。
コントなんてね、まず最初聞かせることがむずかしいじゃないですか。」

――私も、去年の春に、医科歯科大学の癌チャリティイベントに参加する機会があって、屋外ステージでコントをやったんです。そしたら、普段の舞台に比べてぜんっぜんウケなかったんですよ

「ああもう!!それはもう無理ですよ!!」

―‐現在は聞かせるコツをつかまれました? 

「昼の梅田はね、昨日やっとつかめましたよ。音楽をかければ足をとめられるんですよ。

ただもう、「おもしろい」ではなく、「楽しい」になってしまいますけどね。
私はもう「おもしろい」を捨てて「楽しい」に専念することにしました。」

素顔は素朴な青年風のオモロ川さん


――路上ギャグは順調ですか?

「ほんとは許可を取らないと違法なんですけどね。ただビラまき、演説、募金とかは取れるらしいんですけど、ミュージシャンとかギャグ師とかは、許可絶対とれへんらしいです。

でもね、なんばはミュージシャンとか多いから連帯感ありますよ。助け合ってます。楽しいですね。」

――警察の人が来たら??

「やめるふりしますよ。自分の中でのルールで、3回まではOKっていうのがあるので。

仲のいい警察官は「いま一回目な」とかそのオモロ川のルールを知ってくれてるんですよ笑」

 


路上芸人の道を歩むきっかけは「罰ゲーム」

それまで路上単独ライブというものを行っていたとのこと。

「よしもと入ってた時は、30分の単独ライブを外でちょくちょくやってました。

環状線全駅回ったりとか。全部で196回やりました。多いときは一日に5公演とか。」

――そもそもなぜ始めたんですか?

「罰ゲームですね。」

――罰ゲーム?!

「芸人6人でルームシェアしてて。
トランプのブラックジャックの罰ゲームで、路上単独30分を負けた方がやるみたいになって。ストレート負けでした。」

――笑

「それが5,6年前。その年クリスマス、なんばの喫煙所ではじめてやりました。

はじめてやから、めちゃくちゃ緊張して。めちゃくちゃ怖くて。」

「今の感覚で考えたらもう「人おらんじゃないか」ぐらい思えてしまうくらい人少ないところなんですけど

その時は、どんな人が通るかもわからんしっていう、怖さしかなくて。他の芸人に裏方やってもらいながら。」


当時は投げ銭なしで純粋な(?)罰ゲームとしておこなったいた。

「たしか2か月後に第二回やることになって。次はなぜか環状線回ることになって。(ファンの証言によるとこれも罰ゲームの結果)

いつも来る人がいて、ころころさんっていうんですけど。今も9割の確率で来てくれるんですよ。

環状線一周の時も芦原橋以外ぜんぶ来てくれましたね。今でもその二駅来られなかったことをそれ悔やんでますよ。」


偉い人に怒られてよしもとを辞める


よしもとをやめるきっかけになるのは、阪神の優勝の際、道頓堀に飛び込んだのがテレビに映ってしまったこと。

大阪の会社の事務所に呼び出されたオモロ川さん。

「呼び出された時にはね、社長も来ましたよ。」

――えー!ダウンタウンの初代マネージャーとして有名な大崎さんですよね!!

「しかも怒られるってわかってるのに、いまギャグしてるこのオモロ川の恰好で行ったんですよ。

そしたらもう、「なんでその恰好で来たのかね!!」ってその恰好で来たことを怒られて。ひっかけ橋から飛び込んだことはもうどうでもいいってなって。」

「また問題が起きるから今後その恰好で生活するなって言われたけど、嫌だ嫌だって脱がずにいたんです。

そしたらクビになるぞ!って言われたんです。クビになるって言われたとたん、急に怖くなって。わかりましたって全部脱いで、普通に生活しますって言って。

でもしばらくしてやっぱ違うな、と思って、自分から会社に「この格好続けます」って連絡しました。それでクビに。」

――呼び出された時から姿勢を貫いてたら完全にかっこよかったのに笑

「呼び出されたとき、大崎社長は笑ってたんですよ。でもNSC32期を担当するマネージャーの人がバンバン怒ってきて。偉い人の前っていうのもあるし。大崎さんはニコニコしてましたよ。」

――大崎社長側から見たら「これなんの仕事やねん!」っていうエピソードかと思います。

その後イベンターに転職し、オモロ川だいすけのギャグ大会や、週一で笑いの大魔王というライブを主催。

「それで大借金(おおじゃっきん)をかかえてもうて。それで、その宣伝で路上ギャグをやり始めてたんですよ。

その運営費の足しにするためにそっから投げ銭もはじめたんですよ。

…そしたら、そっちにいった感じですね。」

「そっち」ってどっちやねんと思いつつ、新しい分野を開拓するまでのさまざまな成り行きを楽しく聞いていた。

――舞台と路上はやっている感覚違いますか??

「ぜんぜん違いますよ。

舞台で受けるネタは路上では受けへんし。路上で受けるネタは舞台ではうけへんし。

お笑い見に来てるお客さんと、ふらっと通ったお客さんでは、もう笑うアレが違うんで。

お笑いの目になってる人は「繰った」ネタの方がいいんですよ。普通の人にはそれが伝わらないんですよ、だからもう私は「楽しい」にシフトチェンジを。」


オモロ川さんのやばい路上エピソード

――ウケ方以外では?

「路上の方が刺激がいっぱいあるので。いろんなこと起こるから。

たとえば、女詐欺師が来たりとか。」

――詐欺師?!
  
「ギャグ見た後に一時間ぐらいその場に溜まる人たちがいるんですよ。

その日は毎回来てくれる「ころころさん」も含めて5,6人ぐらいおじさんおばさんが残って、話し込んでたんです。

ひとりの、初めて見るおばさんが『私今日昼間に村上ショージに騙されたんや』って言いだして。

その人が言うには、4年ぐらい前に村上ショージさんに『しんどいときあったらいつでも俺のとこにきなはれ』って言われたんですって。それをおばさんは真に受けて、NGKに行ったらしいんです。おばさんはNGKの3階に通されて村上さんに会えたらしいんですけど、でも村上さんには当然知らんって言われてそのまま返されたそうで。」

よしもとの大御所が出演する笑いの聖地なんばグランド花月


――そもそもよく会えましたね?!

「で、おばさんは、『岡山からせっかくきたのに、返されて、私にはもう帰るお金もない。だからヒッチハイクして岡山に帰るしかない』しかも、『私は今年の八月に死ぬ!!!』って言いだして。」

――?!?!

「『私は病気をしていて余命が八月までなんや』って言うんですよ。」
 
その場にいた中で、特にころころさんが、そういう身の上話聞くとたまらなくなる人なんですよ。それでころころさんがおばさんに5千円渡して。
回りに残っていた他のおじさんたちもお金渡さなあかん空気になったんですよ。オモロ川も投げ銭全部渡して。」

――その後は??

「4日後ぐらいに来たんですよ。こないだはありがとう、お金かえしにきたわ、と。そもそも岡山から往復してそんなすぐに来ることないんちゃうかと思ったんですけどね。

お客さんにギャグしてる間に、おばさん投げ銭のざるをもぞもぞいじってて。
そのおばさんはお金返したって言うんですけど、明らかに、私のお金を移動させただけなんですよ!!笑」

――まあ、見たらわかりますよねそれは笑

「で、僕、そのおばさんに「あなた詐欺師ですよね?」って言ったんですよ!」

――?!?!?!

「そしたらそのおばさん泣き始めて。」

――!!!!!!

「こんなんが結構ありますね。」

――こんなんが結構あるんですか?!

そのほかにも、どうやらホームレス状態にあるおじさん2人ところころさんで飲み会をする話。おじさんBは毎回連絡なしで欠席する話。その中のおじさんAによくお金を貸すが、四月に返すはずの分がまだ返ってこず、おじさんもしばらく姿を現さない話。
 

――でも、オモロ川さんという媒体を通して経済が回ってるんですね!

「おじさんAはしゃべりが結構おもしろいんですよ。ギャグしてる間にオモロ川の客を取っていくんですよ。やから、路上漫談勧めてるんですけど。」

――ギャグあげたらいいじゃないですか?

「いやもうあげますよ。でも体裁があって、そこまでは踏み出せないです。」

路上で一人立つ勇気は誰もが持てるものではない


メンタルにも変化が…?

「あとメンタルが強くなりますよ。外でやってたら。バイトで怒られてもなんとも思わなくなります。」

「ある日、知り合いに誘われてスーパー銭湯のバイト行ったんです。

初日に行ったときに、僕リンスのタンクをひっくり返して、床一面全部リンスになったんです。そこでどうしていいかわからんくなって。30分ぐらいずっと止まってて。

これはもう路上のメンタルが効いてきてますよ。普通30分止まれないですから!」

――笑

「僕、研修中やのに毎日風呂入ってて、お食事どころでも社割で半額で食べてて。そういうずうずうしいとこも嫌われてたんでしょうね。4日で事務所呼ばれてクビになりました。」

全く反省していないが反省しているように見せる表情の再現

バイト先での失敗エピソードを何の反省もなく語るオモロ川さん笑

「怒ってる人の顔が何よりもおもしろくて仕方ないんですよ。怒られてる人の顔も好き。しかも、反省してなければ反省してないほどおもしろいんです。」

路上の経験は、人を自由にする価値観を作るのか。あるいは、オモロ川さんにとって、路上ギャグが天職なのかもしれない、、


このインタビューした晩、AbemaTVの仕事があるとのこと。

――繋がってるんですね!ほかの仕事に

「ラッキーですね。最初の罰ゲームの時、負けてよかったです。

負けるべくして負けたのかもしれないですね。ストレート負けっていうのもね。」

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「ロカフレ」というウェブメディアでも取材されたそう。 右の男性は、その取材を担当された、ブロガーのニシキドアヤトさん。

 

――続けてるのもすごいですよ

「たぶん面白かったんでしょうね。覚えてないですけど。」

7月から東京に移られるオモロ川さん。なぜか、「東京だと通り魔に刺されたりしやすい」という根拠が不確かな不安を抱えていた。 

「東京では路上ギャグで極めますね。基本、事務所に所属もしたくないですね。路上OKのとこあったら、所属するかもしれないですけど。」

――なんかもうNPO法人とかで活動したらいいんじゃないですか?

「私は人を元気にしますからね。ありがたい言葉をもらったりします。

最近朝やってると、立ち止まって見てくれる人は少ないんですけど、

『そこにおるだけで、おって、ギャグありますよ、って言ってるのを見かけるだけで、今日も一日頑張れるわ』ってリプもらったり。」

ここまで読んで、きっと読者も思ったに違いない。

路上に立つことの重要な要素は、立ち止まる人や通り過ぎる人との相互関係なのだ!
確かに彼の体験は刺激的で面白いけど、オモロ川さんだけに話を聞いていたのでは、豊かな路上は部分的にしか捉えられない。
路上ギャグの現場に行って、立ち止まる人に話を聞こう。そして、路上ギャグ師おっかけであるコロコロさんにもぜひとも話を聞いてみたい!

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ころころさん会ってみたいですか?!まじで?!といいながら笑うオモロ川さん。 連絡先を教えてもらった。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

去年東大法学部を卒業しました。今はキンシャサの現代美術を研究してます。 ピン芸人。

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