「東大ニートと呼ばれた男」をご存知だろうか?
東大卒業後、ニートになり、東大ニートというアカウント名で、一部Twitter界隈をざわつかせてきた知る人ぞ知る強者である。
そんな東大ニートが、今や脱ニートを果たし、マッチョになってジムのパーソナルトレーナーとして働いているという。
東大→ニート→(マッチョ)ジムトレーナーという珍しすぎる進路を歩む「東大ニート」こと大道 匡彦さんに会ってきた。
忘れていたが、そういえば私は、マッチョが苦手だった。
高校生の頃、おっさんの教師が、「僕結構鍛えてるんだよね〜」と、腕まくりをして、禿げた頭・シワシワの顔と不釣り合いなモリモリの腕をクラスの前で自慢していたことが今でもトラウマ。
そんなわけで、東大ニートこと大道さんに会う日はかなり怯えていた。
「こんにちは!大道です〜」
え?!!?全然思っていた感じと違う!!!!普通にやさしそうだ!!!
なんか全然話しやすそう!と一気に(私の)緊張がほぐれたところで、インタビューを開始します。
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Qそもそもなんでマッチョになろうとしたんですか?
大道さん「2歳年下の彼女に『もっと体を鍛えて大きくしてほしい』と言われて、筋トレを始めました。
1年くらい家で筋トレしてたんですけど、なかなか体が変わらなくて。
で、彼女も「あんまりこいつ変わってねーな」と思ったのか、
あるデート中に彼女に薬局に連れて行かれ、プロテインを買わされました。
ザバスの缶の3000円くらいの。彼女に「それ飲んでみな」って言われて。
せっかくプロテイン飲むんだったら、ちゃんと筋トレしないといけない、と意識が高まりましたね。」
彼女がまるでコーチ。
大道さん「ちょうど同じ時期に、研究室の男の先輩に誘われて、東大の御殿下のジムに通うようにもなりまして。」
私の中の腐女子が、「それBLの予感…!」って言ってるけど、今回は趣旨が違うので、自粛。
大道さん「ジムに行きだして…やっぱりウェイトを使うと変わるんですよッッ!!(穏やかな口調から、突然強めの口調になる大道さん。)
ジムに行く前と後で、劇的に体が変わってきて、どんどん筋トレにのめり込んでいきました。」
Q筋トレは趣味のままにして、就活する選択肢はなかったんですか?
大道さん「理系って就活しないんですよ。
だから僕は全然焦りを感じることなく、友達とビジネスコンテストに出たりしながら、4年生を過ごしていて。
起業したいっていう友達がいたので、僕もビジネスやってみたいなと思ったり。
気づいたら就活の時期は終わっていました。」
「ビジネスコンテスト」「起業」と意識高い系ワード連発。なのに、就活の時期には気づかなかったって、すごい高低差。
Q理系だと院に進む人が多いですよね?
大道さん「院に進まない不安はすごくありました。でも、院試の勉強が正直もうこりごりだった。
大学入試の時、『もう二度とこんな勉強はしたくない!』って思ったのに、また同じことをやるのかって。
あと、ちょっと「進路決めたくない病」にかかっちゃっいまして。
大学院に進んだら、その専門と関係のあることを将来しないといけないと思って、ますます自分の進路が狭まる気がして。
休学でも留年でもいいから『とにかく考える猶予が欲しい』と。」
進路決めたくない病、めちゃくちゃわかる。今ちょうどその病気患ってる。就活してる東大生、この病気に悩んでいる人多いんじゃないのかな?
大道さん「親に相談したら、バトルになって。親は『留年も休学もさせないから、卒業して勝手にしろ』と。」
親御さん、まさかのニート推し。
大道さん「あと、卒論のテーマをいただいたのに研究を丸投げして休学するっていうのは、お世話になっている研究室の人たちにも申し訳ないという気もして。
学部4年生のくせに「僕がこの研究を止めたら新しい発見を見逃してしまうかもしれない!」という使命感もあって。
最後までやることはやって、けじめをつけてから、自分のやりたいことをやろう、となりました。」
「だらだらしてニートになっちゃった」という感じではない。研究室のことを考えたり、めっちゃ常識人ていうか良識がある。
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Qニートの間は何をされていたんですか?
大道さん「最初はもう無職を謳歌していた。のんびりしながら、『Twitter面白いな〜』ってTwitterにハマったりして。」
Q東大ニートTwitterを始めたきっかけは何だったんですか?
大道さん「卒業する寸前(=ニートになる寸前)に、ベトナム在住の日本人ブロガー、ネルソン水嶋さん(ベトナム・東南アジア紹介ウェブサイト「べとまる」を運営)を紹介してもらって、人生相談したんですよ。
そしたら、『今やろうとしていることは全部君が”本当に”やりたいことじゃないよね。それじゃ上手くいかないよ』って全否定されて、でめっちゃ泣きそうになったんですよ。
でもそのあとに、『Twitterで東大出てニートって人あんまりいないんだし、”東大ニート”でやってみたら面白いんじゃね?それでいろんな人に絡んでいけばいいじゃん。』って言われて。
すごい軽いアドバイスだなーって思ったんですけど、やってみました。」
大道さん「無の時期は、どうやったらフォロワー増やせるかってずっと考えてましたね。
東大生をまず片っ端からフォローするとか。自分からフォローして知ってもらうのがスタートかなって思ってたんで。
あとは、時事ネタを拾って、面白おかしくまとめたり。時事ネタは多くの人の共通の話題になるから。
Twitterでは、他の人の共感を呼ぶことを書こうと思っていて。でも、『無職ってこうだよね〜』って書いても、他に無職の人そんなにいないから、人との共通話題を探るのが難しかった。
最近は忙しくなって、ここ半年くらいTwitterで目立った活動はできてないんですけどね。」
QTwitterは、パーソナルトレーナーになった経緯と関係があるんですか?
大道さん「のちに僕が弟子入りするパーソナルトレーナー、久野圭一さんを知ったのが、Twitterなんです。
自分がトレーニングするようになってから、Twitterでも筋肉界隈の人をどんどんフォローするようになって。
久野さんはすごく有名な人で、フォロワー数も1万6000人くらい。
ジムの代表を務めながら、フィジークやベンチプレスの大会で記録を残していたり、トレーナーとしてもビジネスマンとしても活躍している。そんな人なかなかいない。
※フィジークとは?
フィジークとは、大道さん曰く「一言で表すとバランス重視のボディビルですね」。
ボディビルが下半身まで全身バキバキなのに対して、フィジークは下半身はあまり重視されないという特徴もあるそう。
久野さんのセミナーに行って、実際に会ってみて、
『この人の下で勉強したいな、僕は人に何かを教えることが好きだし、トレーニングを始めて自分の人生が良い方向に進むことも実感している。トレーナーっていう職業は自分に合っている職業かもしれないな 』
と感じた。それで弟子入りを決心しましたね。」
Qパーソナルトレーナーのお仕事について教えて下さい。
大道さん「パーソナルトレーナーには、大きく分けて2つの仕事があります。体の機能を改善する『コンディショニング』と体の見た目を変えていく『ボディメイキング』。
僕が専門としてやっていきたいのは、ボディメイキング。一般のお客さんにトレーニングと栄養・食事面の指導をすることで、見た目をかっこよくしていく。
パーソナルトレーナーは、マンツーマンでお客さんの指導を行っていきます。 僕の理想は、お客さんがパーソナルを卒業した後も楽しくボディメイクを続けていただけるように指導することです。
ダイエットやトレーニングに関する情報はネットで簡単にアクセスできますが、自分の体質や骨格、生活習慣に合ったボディメイク法を見つけるならトレーナーをつけた方が圧倒的に効率が良いですよ。」
Qどうやって新規のお客さんを開拓していくんですか?
「個人で活動するトレーナーはSNSを活用して集客する人が多いですが、基本的にはフィットネスクラブなどに所属して会員さんに指名制してもらう感じですね。
トレーナーからお客さんに声をかけて、仲良くなるっていうのが多いと思います。 『こんにちは〜今日調子どうですか?』って。」
大道さん「あと、トレーナーとして自分もかっこいい体にならないと説得力がありません。 お腹が出ているトレーナーとかいやじゃないですか。
大道さん「でも、以前の僕みたいにガリガリ体型の人は体を大きくするために食べなきゃいけないから絶対に脂肪もついちゃうんですよ。 で、そのついた脂肪だけを落とすために、減量します。
大会にでるようなバキバキの体を目指そうとすると、結構えげつない食生活になるんですよ。食事を減らしすぎると血糖値が低くなって目眩がしたり、体が思うように動かなくなったり。
それでも、コンテストに出てファイナリストになったりすることは、トレーナーとして証明にもなります。
僕もベストボディジャパンというコンテストから参加しようかなと思っています。最近は、ベストボディジャパンのように、筋肉もりもりでなくても出られる大会が増えているのでトレーナーだけでなく趣味の延長で出場するような人もたくさんいらっしゃいます。」
※ベストボディジャパンとは?
「ボディビル大会が「ゴリマッチョ」なら、ベストボディジャパンは「細マッチョ」の大会です。」
ベストボディジャパン日本一への道より引用。
さすが、筋肉界隈のことに詳しいなあ。よし、アレも聞いておこう。
Qなんでボディビル大会とかにでる人たちは黒光りしているんですか?
大道さん「黒くすることで、光が当たった時に筋肉と筋肉の境目が際立つんです。僕も日サロに通い始めています。」
Q"東大卒のパーソナルトレーナー”ってなかなか珍しいと思うんですけど、東大生活がトレーナー業に活きていることはありますか?
大道さん「東大で学んだ論文の読み方、研究のやり方は、トレーナー業にめちゃくちゃ活きてます。
体づくりって運動学や生理学など学問が結構必要になってくるんです。
最新情報にアクセスしてインプットしたり、科学的根拠に基づいた指導をするにはまずその研究を理解できなきゃいけない、あと英語の論文が読めなきゃいけない。」
大道さん「学問を放棄したら、トップのトレーナーにはなれない。
その点で、東大での研究生活はかなり活きていると思います。」
お客さんへの地道な声かけ、減量、日サロ、そして研究…….。
パーソナルトレーナーって想像以上に大変そうだ。ジムのトレーナーなんて雰囲気イケメンの筋肉バカがやってるんだろうと思ってた人は、考えを改めて。
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Qトレーナーっていわゆる「東大生っぽい職業」ではないですよね。決断するのに迷いはなかったんでしょうか?
大道さん「東大生はプライドが高いんですよ、みんな。で、そのプライドが高いゆえに、『こうあるべきだ』っていうイメージ像がすごいあるような気がするんですね。
勉強ができて、競争を勝ち抜いてきて、これからも競争を勝ち抜かなきゃいけない、みたいな。僕はあんまりそういうのが好きじゃなかった。」
大道さん「もっとオリジナルな人生がいい、人に『ああやっぱり』って言われたくないなって思っていて。
東大生とか1学年3000人いるし、甲子園にスタメン出場する確率より高いんですよ。甲子園行った人が全員プロを目指さなきゃいけないなんて言わないですよね。
東大生も肩書きで進路を左右されるのはもったいない。
もっと自分の感情とか直感に身を委ねてもいいんじゃないかなと思います。」
Qいつからそういった思考だったんですか?
大道さん「高校を出た時からですね。高校がわりと予備校みたいな感じで、あんまり自由を感じなかったんです。
でも、大学って自由じゃないですか。だから、いままでやってこなかったことで、自分がやりたいことをやろうって。」
大道さん「テニスを10年やってたんですけど、大学では一切やらず。茶道部とビリヤードサークルに入りました。」
大道さん「進振りも同じで。最初は点数の高い薬学部に行きたいなって思ってたんですけど、ちゃんと考えてみたら、本当に興味を持ったのは、生物素材を扱うところで。
そこは、60点もいらないくらいの超穴場学科。それを知って僕は2年生の春に点数を取るためだけの勉強はやめました。
やっぱり、「人気があるから点数が高いのか、点数が高いから人気があるのか」ってよく言われますけど、進振りでどこに行くかっていうのは、一つ一つ見て、自分の興味のあるものを見極めて、よく考えていただきたいところですね〜。
点数が高いからという理由で今の学科を選んだ節もある私には耳の痛い話。(学科嫌いじゃないけど、いやむしろ大好きかもしれない….。)
でも、進振りに悩んでいる2年生は、ぜひご参考に。
Q自分のやりたいことに悩んでいる就活生に対して何かアドバイスはありますか?
大道さん「自分の選択に不安があるなら、立ち止まって考えてみる時間があってもいいんじゃないかなと思いますね。みんな忙しくしすぎなんですよ。
何もない一週間を作って、じゃあそうなった時に自分は何をするのが好きなのか、とか、やってみたいことは何なのか、とか自分と向き合ってみるのは必要なんじゃないかと思います。
正直、留年とか休学とかにビクビクしすぎなんですよ。学年が上がるとどうってとないし、一年生で留年したら、上クラとも下クラとも友達が2倍になるチャンスです。」
Qじゃあニートになるのは自分と向き合う最善策ですね(?)
大道さん「まあ堕落する可能性もありますけどね。
堕落しないコツは、規則正しい生活をするために午前中にジムに行くことです笑」
ニートの魅力的な点と、危険な点、さらにその回避策まで教えてくれたところで、インタビューは終了です!
インタビュー終了後には、UmeeTメンバーの腰の痛みにもアドバイスをしてくれた、大道さん。
大道さん「腰痛って骨盤周りの筋肉が固いとトレーニングで痛めやすくなるんですけど、普段の姿勢や動作の影響も大きいです。腰を丸めながらしゃがんだり、浅く椅子に座るのはNGなので気をつけましょう」
これから夏が来て、体を見せる機会はどんどん増えていきます。一年中長袖長ズボンの人以外。
かっこいい体、綺麗な体を作っていきたい方は、大道さんが勤めるジム 『ハルトレEBISU TOKYO』に行ってみてはどうでしょうか。
就活、進振り…と、悩みは尽きませんが、みなさんも、ちょっと無になってみて、自分のやりたいことを探すといいかもしれません。私も頑張ります。