少林寺拳法とはどんなものか? 東大生でも、なかなか即答できる人はいないのではないでしょうか。
「え、少林寺? 中国中国!」
「あちょーーーみたいな感じで空飛んでるやつ!」
「東大生がそんな奥義発動できるわけないじゃん笑」
「武術やる意味がわかりません」
………(ーωー)ソンナモンカヨ
まぁそんな感じですかね。
というわけで、百聞は一見に如かず、部員に見せてもらいましょう。
少林寺拳法部の正村さんに会いに行きました。
まず筆者が正村さんに襲い掛かります。
正村さんは「上受投」という技で身を守ります。
結局、筆者が正村さんに固められました※。
とても痛いです。。。。
※固める…相手が動けないように制圧すること
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記者:「先ほどの解説も交えて、少林寺拳法という武道について説明をお願いします。」
正村:「端的に言えば護身術の一つです。「守主攻従」といって、攻者(先に攻撃を仕掛けた人)がその攻撃の勢いを利用されたり、動きを読まれたりして守者(相手の先制攻撃を受ける側)に手痛い反撃を食らう、という技が多いですね。
さっきの上受投も、
①記者さんが僕に攻撃
→②上受という受けでガード
→③そのまま肘と手首の関節を極(き)めて倒す、
というストーリーなんですね。で、閂固というのは、上受投などで相手を倒したあと、反撃されないよう手首の急所を極め続けて制圧する技なんです。
【動画】正村さん(左)が最後に投げ飛ばされたのが上受投
記者:「なるほど、中国4000年の極意が詰まっているわけですね。」
正村:「いや(笑)、これを言うとかなりの人に驚かれますが、実は戦後生まれの日本の武道なんですよ。開祖である宗道臣という方が「戦争が起きたのはトップに立つ者のせい。ということでワシが次世代のリーダーを育てるわ」(想像)と言って、香川県の山の上に道場を開き若者たちに技を教えていきました。「いいか?お前ら喧嘩ばっかりしとるけど人生というのはのぅ…」(想像)みたいな感じで人生論を説いてたんじゃないですかね。
ということで、少林サッカーとか少林拳とは関係ないよ、という情報を押さえていただけたら、基本知識としてはオッケーです。(笑)」
記者:「日本のものとは知りませんでした。少林寺拳法が日常で役に立ったことは?」
正村:「今のところないです。というかそんな場面に遭遇しないことを祈ってます笑。
僕が思うに武道を習う利点は、精神的な余裕を保てるようになることです。例えば嫌な上司に何か言われて、「俺はこいつをワンパンで倒せる。だから心の芯までこいつの言葉は響かない」って考える、みたいな笑。
まあそれは冗談として、いざナイフを持った男に襲われたら、大半の人は委縮してしまって動けないでしょう。そうならないように、技術と一緒にメンタルも鍛えることが大事なんです。だから僕が、自分一人の時に襲われたら戦いません。
鋼のメンタルで体を動かして、一目散に逃げます。」
記者:「すごいやらすごくないやら…。」
記者:「話は変わりますが、運動会を選んだのはなぜですか?」
正村:「前提として、僕は入学当時やりたい勉強が決まっていませんでした。でもいざやりたいことが見つかった時、行きたい学部に行けない、では困りますよね?だから僕はまず、「どこにでも進学できるくらい高い進振り点を取る」ことを目標に据えました。そうなると、できるだけ自分を追い込んでくれる環境が欲しかったので、運動会を選びました。」
記者:「勉強を頑張りたいのに、制約の多い運動部を選んだんですか?普通は勉強時間を確保するために、もっと自由にできる時間を増やす方に動くと思うんですが。」
正村:「普通はそれが正しいと思います笑。ただ、僕は余計な時間があるとぐうたらしてしまう性質で、逆に自分が追い込まれて余裕が無いときほどエンジンがかかるんですね。浪人もそんな感じ乗り切ったので、大学でもそのスタイルで行きたいなと。部活を生活の軸に据えて、余った時間に授業をぶち込めば自然と忙しくなるだろう、という感じでした。」
記者:「ドМなんですね…。では、少林寺拳法部を選んだのは?」
正村:「単純に、武道にもともと興味や憧れがあったからです。
僕は「SP」というドラマが好きなんですが、主演の岡田准一さんのアクションがめちゃくちゃカッコよくて。あんな風に動けたら面白いだろうな、と思っていたんです。
で、テント列で武道系のブースに入って、少林寺拳法部ではキックボクシングから関節技まで様々なメニューを練習できると知りました。体験練習に行くと、二人一組で戦いを演じる「演武」という、アクション映画みたいな競技もあり、好奇心をそそられましたね。僕が今やりたいことを全部経験できるのはここしかない!と思ったんです。」
記者:「キックボクシングなんてやるんですか?」
正村:「はい、近代的ですよね笑。
これは全国の少林寺拳法部でも、なかなかやっているところは少ないと思います。
東大独自の「空乱」という練習です。演武と違って筋書きがないので、相手との間合とか、相手の一挙手一投足すべてに神経を張り巡らせなければなりません。最初は全く思うように戦えませんが、徐々に相手の動きを見られるようになるととても楽しいですよ。
あとは、大学から始める人が多いというのも入部の決め手の一つでした。やるからには競技でも上位を狙ってみたかったので、帯の色=経験年数ごとに大会での出場部門が細かく分かれる少林寺に可能性を感じましたね。」
記者:「なるほど。その可能性は現実のものになりましたか?」
正村:「いえ、現実はそう甘くありません。
七大戦(旧国立七帝国大学の対抗戦のこと。今年は名古屋大会)で1位を経験したことはありますが、関東・全日本というような大きな規模の大会でメダルを獲ったことはありません。
自分は2年の夏に副将に任命されたのですが、その分結果を残さなければ!と肩肘張って部活に励んでいました。だからこそ活躍できない自分に苦しんだこともあります。
ただある時、結果を出すこと以上に大切な部活との関わり方に気づいたんです。」