この記事を、これまで数多の前売り券を買い、そして儚く散っていった全ての東大生に捧ぐー Y. Motohashi
この季節がやってきました。五月祭です。
個人的に、学園祭はすごく好きです。
他大学の友人に、制服姿の高校生、孫の姿を見に来たのかもしれない、近所のおばあちゃん。
めいっぱいコスプレした輩が音楽に合わせて踊っていたり、
泣きながら大量の「前売り券」を後輩に配る学生の姿があったり……あれ?
「前売り券、お前だけは許さん」
今日この記事を読むみなさんにお送りしたいのは、「前売り券」というシステムの虚しさ、そしてその虚しさに立ち向かう、一人の男の、果敢な、しかし孤独なストーリーです。
[広告]
前売り券とは……
焼きそばやフランクフルトといった学園祭の商品をあらかじめ販売し、当日売る数を減らそう、というシステムのこと。
これだけなら何も問題ではありません。
問題なのは、買い取りが義務づけられていることです。
大抵のクラスやサークルでは、あらかじめ売上を確保しておくために、所属メンバーに、決められた数の前売り券を購入させます。
「一人○枚買ってください。売れるなら売ってきて。もし売れなかったら自腹買取りしてね」と営業を課されるわけです。
これがしんどい。
皆さんの中にもクラスやサークルの前売り券を購入した方は多いでしょう。
ちなみに、わたs…いえ、友人のM氏も、昨年度大量に売り券を購入させられたそうです。所属しているサークルのお店の前売り券を、「この分だけ自腹買取で人に売ってきてください」といった具合に。
○サークル1の前売り券:唐揚げ(¥350)× 32枚 = ¥11200
○サークル2の前売り券:揚げアイス(¥200)× 20枚 = ¥4000
○計:¥ 15200
学園祭を通り越して、もはやちょっとしたレジャー並みの金額になりました。
複数のサークルに入ってるとこんな風に悲惨な状態になります。
この記事の本題はここから。
徹底的に、売り切らねばならない。一枚残らず売りきるために、一体、どうすればいいのか。
先ほど紹介した
○サークル1の前売り券:唐揚げ(¥350)× 32枚 = ¥11200
○サークル2の前売り券:揚げアイス(¥200)× 20枚 = ¥4000
○計:¥ 15200
これ、当事者であるM君は売り切りました。どうやら血反吐を吐くような思いをしたらしいのですが、
その時に得た「コツ」を一つずつ紹介していきます。
目的は「前売り券のために支払ったお金を全て回収すること」です。
この目的に徹底的にコミットしましょう。
基本的に、前売り券の売り込みはうまくいきません。だからこそ、「数」を当たりましょう。
自分、もといMくんの場合は、「一言でも言葉を交わしたことのある人には全員声をかける」ことを徹底していました。
「あ、あそこでジュースを買っているのは1年生の新歓期に航空部の新歓コンパで隣の席だった○○くん!おーい○○くーん」
「お、向こうの教室から出てくるのは、2年のときの主題ゼミでとなりのグループだった▽▽さんだ。確か懇親会で喋ったはず、おーい▽▽さーん」
……とまあこんな具合に、徹底的に「知り合い予備軍」いわゆるヨッ友にも声をかけていきます。
そして、買ってください、とお願いするわけです。
そんな数回喋った程度の「赤の他人」から、前売り券なんか買わないだろう……って? いえむしろ、そうした人の方が買ってくれるのです。
なに? 罪悪感?
…悪いのは前売り券というシステムを生み出したサークルじゃああああ
いくら売り切りたいからといって、出会って3秒で
「ねぇー、、、前売り買ってくんない?」
とか聞いた時点で、もうチャンスはありません。
A●じゃあるまいし。
まずは普通に雑談をしましょう。
そして徐々に、自分が前売り券を大量に売らねばならないこと、その悲痛な運命を切々と語るのです。
悲劇のヒーローになりきって、最後は泣き落とし。
「一枚だけでいいからさ……助けてくんねぇかな? 」
本気は相手に伝わります。
コレコレ!
ありがちな失敗が「値引きしすぎて、交換しすぎてお金を回収できない」というもの。
前売り券を売る理由は「払ったお金を回収すること」この一点のはず。
値引き・交換するくらいならまだそのまま前売り券を持っていた方が良いです。
それに、人は一度妥協するとブレーキがかからなくなります。
定価三百円のはずが、値切られ続け、いつの間にか百円で売っている……。なんてことだって起こりかねません。
「絶対に値引きしない」をモットーに売りましょう。
セールスチャンスを逃さないためにも、大量の百円玉と五十円玉を財布に入れておきましょう。
「これ、買ってくれない?」
「仕方ないなぁ〜、いいよ、いくら?」
「ありがとう!三百五十円!」
「あぁー……、わりい、ぴったり無いわ。釣りある?」
「……ごめん、無い。」
「まじか、じゃあ、また今度」
そして、二度とその「今度」はやってきません。
買ってくれる人が少ないからこそ、そのチャンスは絶対に掴んで離してはいけません。
自分も、ピーク時は20枚以上の百円玉を財布に入れていました。
売り切るためならなんでもやりましょう。
***
この4つの基本戦術を用いて、自分…いえM氏は50枚以上の前売り券を売り切りました。
もう営業として給料もらってもいいんじゃないかレベル。
これらのノウハウが前売り券に苦しみ喘ぐ哀れな東大生の救済になることを祈ります。
p.s.
しかしこの記事を書きおわって唯一はっきりしていることがひとつ。
もう誰も私から前売り券を買ってくれないであろうということ。
今年の学園祭は何とかサークルの後輩から逃げ切ろう、そう強く決意する筆者なのでした。