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【運動会報コラボ記事】ITで東大のサッカーを支える〜ア式蹴球部テクニカルスタッフとは〜

2017.04.06

さて、みなさん。

突然ですが、問題です。

前回、2014年のW杯の優勝チームはどこでしょう?

①「サッカー王国カナリア軍団」ブラジル(出場回数20回)

②「我らがサムライブルー」日本(出場回数5回)

③「美しく勝つ無敵艦隊」スペイン(出場回数14回)

④「愛称なんだっけ・・・?」ドイツ(出場回数18回)

 ・・・・・・・・

答えは、④「愛称なんだっけ・・・?」ドイツ。

愛称なんだっけ・・・?とか言ってごめんなさい。(本当はマンシャフトっていう愛称あります。ちなみに独語で”集団”という意味。)

ドイツ代表、超強いんです。 

ドイツ代表の強さの秘密は、ズバリIT技術。 

サッカーとIT・・・?

サッカーとITってどういう関係があるの?

と思ったそこのあなた。

古い!

ビッグデータが叫ばれる現代において、スポーツとITの距離も急速に縮まっており、特にサッカーにおいては、ドイツがIT化をリードしていると言われています。

 2014年のW杯でドイツ代表が優勝した際には、そのITを駆使した分析が話題になりました。

ところで、今回一番伝えたいことは何かと言うと、

「東大でもこういうことやってるよ!」

ということ。

自己紹介が遅くなりましたが、私は、東京大学運動会ア式蹴球部(サッカー部)のテクニカルスタッフをしています。

部室には、計7台のパソコンがあります。

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テクニカルスタッフってなに?

私たち、ア式蹴球部のテクニカルスタッフは、Data StrikerというJリーグでも使われているようなソフトを用い、チームを強くするために、日々サッカーのデータや映像と格闘しています。

分析開始画面はこんな感じ。様々な分析ができます。たとえば・・・

これは、あるボランチの選手のホットゾーン。青→黄色→赤の順に、そのエリアでプレーした回数が多い、ということを示しています。

ボランチというのは、布陣の中央に位置し、攻守において要となるポジションのこと。この選手もピッチの中央で多くプレーしていることが分かりますね。

次にこのデータは、同じ選手のパス方向と距離、その成功・失敗を示しています。こちらのデータも、ボランチの選手らしく、前後左右、様々な方向にパスが散らされています。

んー・・・なんか小難しくてとっつきにくい?

では、そんな人のために、実際にデータや映像を用いながら、ア式の選手を紹介していきましょう。

①中沖隼

1年生時からリーグ戦に出場している不動の左SB。

俊足を生かした縦の突破やオーバーラップで度々チャンスを演出する。

(※左SB:左サイドバック。左の後ろの方にいる人。)
(※オーバーラップ:主にSBの選手が、自分の前でボールを持っている味方を追い越して走っていくこと。映像参照。)

例えるならば、日本代表の左SB。

最近、かわいいタレントと結婚し、幸せ絶頂なあの人・・・

(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/長友佑都 作者:Майоров Владимир 作成: 2011年9月27日 ライセンス:CC 表示-継承 3.0

そう、ア式版・アモーレ長友だと想像してください。

では実際にデータを見てみましょう。

この選手は、昨年18試合に出場し、計24本のクロスをあげています。

(※クロス:グラウンドの角のほうから、ゴール前にむかって出されるパスのこと。)

より詳しく見ていくと、24本のうち、ほぼ半分の11本が、ドリブル突破の後に行われており、縦への突破からチャンスを演出している、ということを裏付けています。

次に、クロスが右・左どちらの足であげられたか、という点に注目してみてみると、右足2本に対して、左足であげられたクロスが22本。

一方、成功率(クロスが味方に渡った確率)は、右足が100パーセントに対して、左足は13.6パーセントであり、左足でクロスをあげることが多いが、成功率は右足のほうがかなり高い、というデータが見て取れます。

実際には、より複雑な要因を考慮して分析を行っていかなければなりませんが、簡単にまとめると、『この選手は左SBでの出場が多いことから、利き足の右足ではなく、左足でクロスをあげる場面が多いため、左足でもドンピシャで味方に合わせるクロスを上げることができれば、東大により多くの決定機が生まれる』ということが言えるわけです。

②山岐豪憲

ア式の2トップの一角を張る、魂のFW。

ボールへの執着心は人一倍で、自らゴールを奪ったり、味方へのゴールをお膳立てしたりする。

例えるならば、昨シーズン、イングランドプレミアリーグで優勝を経験した日本人FW。

最近、生え際が怪しいという噂のあの人・・・

(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/岡崎慎司 作者:jello von アップロード: 2011年2月8日 ライセンス:CC 表示-継承 3.0

そう、ア式版・岡崎慎司だと想像してください。 

しかし、この選手は、データでみると、チーム内でそれほどシュートを打っているわけではない、ということが分かります。

1位の選手の独走っぷりがすごい。

FWといえば、シュートをばんばん打って得点を取りに行くポジション。FWなのに、シュート打たないの??

と思われるかもしれません。これは、どういうことなのでしょうか。

では、この選手について、「シュート関係数」というデータから、分析をしてみましょう。 

シュート関係数とは、「シュート=5点」「シュートの前のプレー=4点」・・・というように、シュートとシュートの前のプレーをポイント化したものの合計値を示しています。

この選手のシュート関係数は116で、チーム4位の数字ですが、より詳しく見ていくと、シュートの1つ前のプレー、つまり、シュートアシストの数が12回、ポイントとしては48ポイントで、チームで最も多いことが分かります。

選手同士のパス交換を見てみると、2トップを共に組んでいる選手(シュート数ランキング1位の選手)へのパス、が全体の23パーセントを占め、かなり多いというデータが出ています。

つまり、自らがゴールを奪うというよりも、ゴール前でのパスで、2トップの相棒の選手のシュートを引き出しているのです。

「シュート数」という分かりやすいデータだけでは見えてこない、シュートに至る過程での貢献度を、「シュート関係数」というデータは示してくれます。

なんとなくでも、私たちがどのようなデータを扱っているかを知っていただけたでしょうか。

次ページ:なぜ、東大で運動部のスタッフをするのか。
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