【法学って何が楽しいの?】中学生でも5分でわかる「法学」の話

2017.01.25
山田 智希

法律って不思議ですよね。

家の前の信号を無視すれば、道路交通法違反。隣のあの子に消しゴムを借りるのは民法593条の「使用貸借契約」。

よくわかんないけど、法律はわたしの身近に、いつも、いる。

でも―――身近なはずなのに、ちょっと近寄りがたい。

民法はなんと1044条まであるらしい。たかが消しゴムを借りるだけのことを、「当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ること」なんていう。作った人は頭がいいんだか悪いんだか。

ある友人が、いつだったか言ってました。

「法律かぁ、興味はあるんだけど、勉強するのはちょっとなぁ…」

見るからにやばそうな法律書の数々

こんにちは。法学部4年の山田智希といいます。私たち法学部生は、そんな、法律をはじめとする様々なルールについて、日々学んでいます。

私はいままで数え切れないほど「法学ってなに?楽しいの?」と聞かれ、実を言うとうまく答えられませんでした。

しかし…つい先日、いつものようにカルピスのお湯割りを飲んでたら、突然ひらめいたんです。

「そうか、『あれ』を例にとって話せば、中学生でも法学がわかるじゃないか!」と。

そこで!

きょうは、そんなたとえ話を使いながら、「法学とは何なのか」「法学は一体何が楽しいのか」について、どんな方でもわかるように5分でさくっとお話ししようと思います!!

中は見たいけど入りがたい、そんな“お化け屋敷”のような法学の世界へ、いざ、まいりましょう!!

法学はそもそも何を学ぶのか

私はいままでこう尋ねられて、「民法」や「刑法」を無理やり持ち出して説明していました。

でも民法なんて、ふつうの人にはなじみがない。だから、うまくいかなかったんです。

そうか、ってことは、もっと身近な「法」を例にとればいいんだ。

じゃあ、たとえば。皆さんはいま高校生だとします。ある日、先生からこんな課題を出されたら、どうしますか?

「1週間後に、どんな切り口でもいいから、わが校の『校則』について研究発表して下さい」

ふつうはそんな課題出ませんけど、ちょっと考えてみてください。意外に結構難しいですよね。

でも、どんな切り口でもいいんです。

  • 「うちの校則がどんな経緯で作られたか」を調べてくる人もいれば
  • 同じ市内のP高校とわが校の校則を比べてみた」という人もいるでしょう。
  • 細かいことが気になる人は「校則の第5条に『緊急のとき以外は廊下を走るな』とあるけど、『緊急のとき』とは具体的にどんな場合か」とか
  • 友達想いの人なら「この間友達が廊下を走って指導を食らった。先生はなぜあれを『緊急のとき』に当たらないと考えたのか
  • うちの学校は伝統校で風紀を重んじるべきだ、だから校則はもっと厳しくあるべき」というはた迷惑な研究をぶち上げる人もいたり…。

法学も、まさにこれと同じなんです。

一口に法学と言っても、いろいろあります。

  • 一人目のように法の歴史を研究するのが「法史学
  • 二人目のように諸国の法を比較するのが「比較法学
  • 三人目のように実際の条文やそれを適用した裁判例について検討するのは「実定法学
  • 四人目はさしずめ「法哲学

といったとこでしょうか。

多様な切り口で法に関わる様々な現象を理解しようとする、それが法学です。

法学部生はいつもなにを勉強しているのか

したがって、法学部生もいろんな勉強をしているわけですが、中でも特に「実定法学」が、多くの学生にとっては学習の主となっています。国家試験の科目となるのもこれですし、世間の法学部のイメージにも近いんじゃないでしょうか。

ですからたいていの法学部生は日々、条文の中のよくわかんない文言について、教科書や裁判例を参考にしながらどんな解釈が妥当かについて、ネチネチ考えています

要するに、こんなイメージです。

廊下を走ってもよい『緊急のとき』ってどんな場合だろう?

災害のときはまぁ含まれるだろうな。じゃあ、トイレが間に合わなそうなときはどうだろう? 次の授業に遅れそうなときは? 鬼ごっこで捕まりそうなときはさすがに入らないよな…

こんな風に、「緊急のとき」という曖昧な文言につき「安全性」や「風紀維持」、「急ぐ必要性の大きさ」といったいろんな利益を天秤にかけながら検討する、そんな感じです。ちなみに、弁護士のバッジには、天秤が描かれていますよね。

あ、ですから、間違っても私たちは、条文や判例の暗記にいそしんでるわけじゃありません!

プロの弁護士や裁判官ももちろんそう。どんな厳しい生徒指導担当の先生だって、さすがに校則を暗誦できるわけじゃないのと同じです。

暗記するのではなく、校則の文言や過去の処分例について自分の頭で地道な検討を積み重ねることが大事なんです。そうすることで、たとえあなたが生徒指導の先生になり新たな問題に直面した時でも、多くの教員・生徒が納得できる妥当な解決を導けるのです。

法学って結局なにが楽しいのか

ここまでくると、なぜこんなことに楽しさを見出す人間が存在するのか、いよいよわからなくなります

「そもそも自分は生徒指導の先生になんてならない」「校則の文言とか過去の処分とか、興味の湧きようがない」と間髪入れずつっこみたくなる。

ご安心下さい。私を含め法学部生の大半も、「そもそも自分は弁護士になんてならない」「条文とか判例とか、興味の湧きようがない」という感覚を、実は何度も味わっています

つまり、皆さんの感覚は至極まっとうですし、同様に我々も最初から変わっているわけじゃありません。

じゃあ、どういうわけで、こんな法学に楽しさを見出す人が出てくるのか。

ではここらへんで、「校則」に代わる例に登場してもらいましょう

たとえば、あるとき映画を見て、それがとても面白かったとします。

さて、その映画の中に、意味深な不思議な1シーンがありました。当然、「あのシーンはどういう意味があったんだろう」と疑問が湧く。調べてみると、ある著名な評論家がそのシーンの解釈を述べていて、あなたは「なるほどそうだったのか!」と納得する。

そのとき、何となく満ち足りた気分になりませんか。

「興味→疑問→理解」というプロセスを経るとき、人は楽しいという感情を抱きます。

では、逆につまらない映画を見た時は?

そもそもつまんないから1つ1つのシーンに興味も疑問も生じないでしょうし、仮に引っかかる部分があっても「まぁつまんないしどうでもいいや」となる。

そう、これこそまさに、多くの法学部1年生が陥ってしまう状況なのです

面白いとも思わない映画と、いやいや向き合い、権威ある先生に「映画の基本的な表現技法」だの「この映画の山田監督は黒猫をこんな場面で象徴的に使う」だの教え込まれる、そんな感じ。「興味→疑問」というプロセスが、そもそも生まれないのです。

しかし。

よく使われる表現技法や「山田監督の黒猫の使い方」をいやいや学んでいくうちに、山田監督の別のつまんなそうな映画を見て「ここはこういう技法だ」とか「このシーンは黒猫が出てくるからこういう意味だな」とわかるようになる。

あるいは「あれ?ここでは白猫が出てきたぞ。じゃあここはどういう意味が込められてるんだろう」と疑問が生じ、自分で調べようと思うかもしれない。

するとある評論家が「白猫はこういう意味だ」と言っていて、それを知り「なるほどなぁ」と納得したり、「いやそれは違う」と感じ自分なりに考えて答えらしきものに行きつく。なんとなく、満ち足りた気分になる。

そうした経験を繰り返すうちに、その監督の映画の魅力に気付いていき、気付かぬうちにどっぷりはまっていく…、なんてこと、ありえませんか?

私は最初、法学がわからなすぎて、退屈すぎて、もうどうしようかと散々悩みました。

そんな苦しい時間を経て、しかし、私は条文や判例という名の「つまらない映画」に、いつしか大きな興味と問題意識を持つようになりました。法学的な思考や知識が身につき始めるとともに、条文や判例が少しずつ色彩をもって見えるようになる、思えばなんとも不思議な感覚でした。

ただ残念ながらこの感覚は、言葉では伝わりません。だからこそぜひ皆様自身で、この「映画」をまずは見て頂きたいのです。

法律の裏側にあるドラマ

ただ、一つ言えることがあります。

条文や判例は、ただの「つまらない映画」ではないということです

それこそ、これがどこかの高校の「校則」なら、どれだけ研究してもつまらないままでしょう。一方、法律の条文や判例は、その時々の国会や裁判所が、社会の状況や人々の価値観、対象事件の当事者の利益等々、いろんなことを考え悩んで議論して送り出した、極めて深い「作品」です

とっつきにくいが、それだけ研究しがいがある。まさに「噛めば噛むほど味の出るスルメ」のようなものだと思います。

かつ、いうまでもなく国会や裁判所は、我々の生活を実は身近な見えないところで支えている統治システムです。

これらの産物を多角的に研究することで、自らの生きる社会について理解が深まり、社会の在り方や自分の市民としての生き方を考えるきっかけにもなるのです。

大げさに聞こえますか? でも、実際私はそう思っています。これこそ、私が法学を学び続けようと思う、原動力そのものです。


いかがでしたか?法学のイメージ、なんとなくつかめましたか?

憲法をめぐる政治問題や間近に迫った民法改正を背景に、いま、法学への関心がじわじわと高まっています。本屋にも一般向けの素晴らしい入門書がたくさん置いてあります。

もし今日の小旅行でイメージを少しでもつかめたなら、次はぜひそれらを手に取ってみてください。

そこにはきっと、思わず興味をひく「お化け」が、あなたを待っているはずです。

この記事を書いた人
山田 智希
はじめまして! 山田 智希です。UmeeTのライターをやっています。よろしければ私の書いた記事を読んでいってください!
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