東大情報学環に通う芸人・たかまつななさん。前回はお嬢様はマゾ気質? 芸人たかまつなな「向いてないからこそ、お笑いが好き」で、そのMっ気を疑うほどのストイックさに焦点を当てましたが、今回は彼女の遠大なる野望を探ります! たかまつさんがそもそもなぜ東大に来たのか、その理由も明らかにしますよ。
お名前:たかまつななさん
所属:東京大学大学院 学際情報学府教育部1年(慶応大学総合政策学部4年でもあります)
進路:「お嬢様芸人」「お笑いジャーナリスト」として活躍中
前半ではしっかり聞けなかったんですが、そもそもどうして東大に来たんでしたっけ?話題づくりとかでしょうか。
「いや、投資です。もちろん東大に入って注目されたらいいなとは思っていましたが、ずっと先の目標を達成するため。つまり優れたジャーナリストになるためですね。」
え、ジャーナリストにもなるんですか?
「私、ただの芸人じゃなくて、お笑いジャーナリストですから」
・・・!?
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「ニュースを伝えたり解説したりするのを、より面白く分かりやすくできたらと。フリップ芸が出来る池上彰さん、みたいな」
そんな人いたら確かにニュース聞くの楽しくなるかもですね。
「どうしたら興味のない人にもメッセージが伝わるんだろうなって、ずっと考えてきて。私なりの答えがお笑いジャーナリストなんですよね。」
何かそうまでして伝えたいことがあるんですか?
「小学校のころからずっとですね」
そんな小さいころから??
「野口健さんの富士山学校に小学校4年生のときに参加して、あんなきれいな山にゴミが大量に放置されていることを知りました。子供心に衝撃を受けました。『大人は見てみぬフリをするから、君たちは忘れないで』と健さんに言われて。」
富士山のゴミの放置問題が、たかまつさんにとって最初の伝えたいメッセージとして刻まれたんですね。
「それからは、何とかして多くの人に知ってもらいたくて。学校で全校生徒の前でスピーチをしたり、壁新聞を作ったり。でも全然インパクトも波及力もないなと。」
小学生にしては十分な頑張りだと思いますが。
「何とかしようと思って、読売新聞の子供記者団に参加しました。求められていたのは、子供らしいほほえましい記事だったんでしょうけど、環境問題について書こうと挑戦し続けました。」
そんな活動もしてたんですね。
「それで、高校生になってようやく全国に署名入りで環境について記事を書けたんです!」
すごい! 悲願が達成されたんですね!
「そう思ったんですけど、現実は甘くありませんでした。友達のお母さんがほめてくれるだけ。自分と同じ世代に伝えたいと思っていたのに、みんな新聞を読んでいないし、何より無関心なことについては知ろうとしないんだと思い知らされました。」
全国記事を書いてもなお満足しなかったんですか……
「興味がない人にこそ、知ってもらいたい。そのためにはどうすればいいんだろう、って考え続けていたんだなと思います。」
そのころから既に心はジャーナリストだったんですね。
「中学2年生のころ、爆笑問題の太田さんの本に出会いました。教育テレビしか見せられずに育ってきたので、太田さんってきっと学者さんなんだと思って読んでいたんですが。」
それは箱入りにも程がありますが……
「その本では太田さんが、お堅い政治的な話題を面白く分かりやすく書いていて。何かを伝えるために、お笑いという手段がとても有効だと知りました。」
そもそもはジャーナリストとしての探求があって、その先にお笑いとの出会いがあったんですね。
「そこからお笑いにのめりこんでいったのですが、それは私にとっては同時に、ジャーナリストとしてメッセージを伝えるための手段だったのです。」
だから単なるお笑い芸人ではなく、お笑いジャーナリストがたかまつさんの目指すものなんですね。
「無関心な人に、それでも伝えるべきことを伝えるためには、ネームバリューとともに、行動力・おもしろさ・わかりやすさが必要だと思います。」
有名人が自らニュースを取り上げて、面白く分かりやすく話してくれたら……確かにみんな聞いてくれそうですね。
「だから私は、爆笑問題の太田さんと、池上さん、野口健さんを合わせたような人間になりたいんです。」
恐ろしい野望ですね。各界の大物3人の力を融合させたいなんて。
「それがずっと先の究極目標です。だからしなきゃいけないことは山ほどあるんです。芸人として本気で力をつけながら、もっと勉強しなくちゃいけない。」
「大学に通いながら、芸人としてひたすらライブに出て、でもまだ家でぼーっとする余裕があるなと思ったんです。だからその分で東大に来ようと思ったんです。この投資がきっと10年後、とても大きな武器になると思います」
このストイックさ。大きな大きな目標を掲げて、しかも行動するバイタリティ。たかまつさんは実際に、お笑いとニュースを掛け合わせた試みを始めています。
<ニュース×お笑い系の告知>
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そうは言ってもたかまつさん、本当にできるんですかねそんなこと。太田さん、池上さん、野口健さん。だれかひとりに追いつくのだって恐ろしいほど難しいはずです。
「大それたことを言ってるのはもちろん分かっています。でもそれを目指したいんだから、行動するしかないです。」
こう断言できることこそ、たかまつさんの最も凄いところのような気がします。
行動すれば、現実が分かってきます。自分の野望を達成することの難しさがどんどん分かってきて、普通ならあきらめちゃう気がするんです。
「お笑いの世界で分かったのは、優勝しようと願い、出来ると信じ続けなければ、絶対に勝てないということです。とても厳しい世界です。それでも、やらなきゃどうしようもないので。」
現実を知ってなお、たかまつさんは夢を小さくしない。
大きな目標を掲げたばっかりに、うまくいかなくて傷つく、誰だってそれは怖いはずです。なのに彼女は、なんだかもう覚悟できてしまっているように見えます。
一体何があなたをここまで突き動かしてるんですか? 気になってたまりません。
「私のこの大それた夢を認めてくれた、支えてくれた人たちのことを考えたら、絶対に中途半端では終われないんです。なんとかして恩返ししたいんです。」
「本当にたくさんの人に支えられてきました。例えば私が慶応のAO入試でフリップ芸をやることになったときには、フェリス女学院の同級生たちが、みんなも受験で忙しいのに、30人以上集まってフリップの絵を描くのを手伝ってくれました。」
感謝の気持ちが原動力、ということですか。
「自分の力を惜しみなく人のために使う、そういうすばらしい人がフェリスにはたくさん居ました。だから私も、自分の能力を誰かのために使いたい。フェリスで教わった精神だと思います。」
そう簡単に身につけられる精神ではないですよね。フェリスではそれが当たり前だったと。
「フェリスが裕福な生徒たちが集まる学校だったのも一因かもしれません。でも、人に喜んでもらえる経験をした人は、誰だって理解できると思います。」
まぁ、人に喜んでもらえて嬉しくない人はいないですよね。
「そういう意味ではお笑いのいいところも、目の前でお客さんが喜んでくれてるのがはっきり伝わるところじゃないかなと思ってるんです」
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「私はお笑いジャーナリストとして、世の中に還元したい。私を通じてより多くの人に、考える機会と材料をお渡しできたらと思います。知った後で何を選ぶかは、もちろん人それぞれです。でも、知らないで人を傷つけたり、チャンスを自覚できなかったりする人を減らしたいんです。」
たかまつさんはこれからも、とびきり大きな目標に向かって、ひたむきに進んでいきます。
芸能界という厳しい世界で、お笑いの手法をジャーナリズムに生かす独自のスタイルで戦っていく彼女。その姿に勇気づけられるのは、僕だけじゃないはずです。