東大駒場祭で、ある学術企画が行われる『「漫才」の誕生ー歴史と証言ー』
企画代表者は、今年4月から大阪に通い、フリーのピン芸人として吉本や松竹の若手芸人と同じ舞台に立って活動する東大生法学部生である。
本当に芸人を?なぜ展示を?これからどうすんの?
こうした質問に答えながら、
舞台に立つことと、史料を通して笑演芸の歴史を知ること、どちらも「人生にとって、そして、人間が自由になることにとって欠かせない!」と信じる東大生の姿をお伝えします。
ーー本当にお笑いをやってるんですか?!
そうなんです。3月にネタ見せを受けて、合格して、大阪の「キタイ花ん」や「バトルZAライブ」というライブに出ています。スイミーのゆうこという芸名でやってます。11月10日には、新宿で開催する「KOREKARA!」にも出ます。
ーーどんなネタやってるの?正直、おもしろいんですか?笑
ファンタジーな世界観で現実的・身近な話題をボケに使うようなコントをやってますね。
あんまり東大生でーす!みたいなネタはしんどくてやってないんですけど、最近はそこも生かそうと努力してます。やはり勉強が好きなのも自分の個性なので。
(自分で言うのもイタいけど、作家さんにも一年目にしてはなかなかいいと評価されてますよ!)
今までで一番すべったのは、(たまには高学歴キャラを生かそうとして失敗した)六法とお茶するコント、ですかね笑
理解を深めるために六法とお茶して普段はできない法律以外の話もしよ~っていう。
六法のオスとメスの区別がシャンプーとリンスの見分け方と一緒、っていうボケは今までで一番すべりました笑
「六法がやってるバイトはランチパックの端をぎゅーって綴じるバイト」っていうボケもなかなかスベりましたね笑、、、気に入ってたんやけどな~
最近は「自由な発想」を「わけのわからないこと」にしない技術を身に着けつつある、かな、、、?表現力も鍛えつつあると思います。
少なくともこれよりはポップなコントをお届けしているので、ぜひ見に来て下さい!
ーーずっとお笑いは好きだったんですか?
関西出身で、かなりのお笑いファンでした。テレビやラジオの笑いが大好きで、劇場にも通いました。高校の文化祭で漫才をやったりもしてましたね。
でも、大学に入ってから自分のおもしろさに自信をなくして、しばらく自分ではやっていませんでした。
ーーなんでイチお笑いファンから、自分でもやろうと思い立ったの?
決断したのは病気をして、去年半年学校を休んだ期間中ですね。そのため実は今5年生なんですが。。まあメンタルも潰しちゃって、食欲とか睡眠欲もなかったし、人と話すのもしんどかったんですけど、お笑いだけはずーっと聞いたり見たりしてて。
その際、ヒントになったのは、大学でやってたオーケストラの活動です。そこで、本当に音楽を愛する人たちが、人生の辛い事もまたオケにおいて辛い事があっても、音楽によって自分自身を癒す事ができることに気づいたんです。これを、才能というのだなあと痛感したんです。何があっても音楽と共に生きていけること。
それに、彼らは「音楽の神様の声を聞いてる」というか、自分が正しいと思うとか快適であるという以外に行動の指針を持っているように見えて。
私にとって、その人生の伴侶となるようなものってお笑いだ!って病気で休んでる期間に気づいたんです。
私はもともと好き嫌いは激しいし、我が強い人間だけど、観客の反応には素直に耳を貸したいと思うし、笑いのためだったら自分のプライドよりもっと優先できるものがあるなって。
芸人になることで、私は人間として自由になれると気づいたんですよ。
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ーーどうして東京にもお笑いサークルなどがたくさんあるのに、わざわざライブに、しかも大阪で活動してるんですか?
お金を出して見にくる、全く知らない人の前でやることに意味があるなと思ったんです。それにキタイ花んは、スマイルさんやジャルジャルさん、天竺鼠さん、尼神インターさんらを輩出した有名ライブで、昔から見に行ってたので、芸人やるならキタイ花んからやろ!と笑
お笑いにおける、演者と観客の関係って、オーケストラで言えば、指揮者と奏者の関係に似てると思っていて。
まずは私の憧れたライブを見に来ている一流の奏者の方々の前で勉強させてもらいたいな〜という感じでしょうか笑
また主催の作家さんの運営姿勢や発言に敬服しているというのもあります。
ーー駒祭で展示企画をやるんですよね?
そうなんです!展示の宣伝をさせてください!!
現在主流となっている、しゃべりだけによって演じられる漫才が誕生したのは、今からおよそ80年前。
その瞬間に焦点を当て、漫才の誕生がどのような社会状況を背景にしているか、そして演芸史においてどんな意味を持つかをお伝えするものです。
若手の頃の明石家さんまさんらが掲載された貴重な雑誌の引用等、ここでしか見られない史料がたくさん!
文字資料だけではなくて、京都芸大美術学部デザイン科の卒業生によるおしゃれなアートが楽しめたり、都内にはない戦前のネタの録音を聞くことができたり、畳に座れたり!五感で楽しめる展示をご用意しますよ!!
☆Mizuki Takaishi
京都市立芸術大学美術学部デザイン科ビジュアルデザイン専攻卒業生。
作品集はこちら:mizukitakaishi.jimdo.com
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ーーこの企画を立ち上げたのはなぜですか?お笑いを学術的に検証・展示する意義はどこにあるの?
幼い頃から、実際に作品を見ずに、芸人・お笑いに対して
「下品だ」とか「頭が悪くなる」と言ったり、あるいは他の表現や創作(例えば西欧芸術とか)に比べて下等だという判断を下したりする大人に対して反感を持ってきたんですよね。
あと、お笑いについて語ったりしたい欲求は誰にでもあると思うんだけど、
ちょっと賞レースの決勝をテレビで見ただけで「漫才っていうのは〜」と大きい理屈を語ってみたり、
「本格派の芸じゃないよね〜」という断定的な価値判断を下したり。そういうのにイラっとしてて笑
少ないサンプルで断定的にものごとを語るべきでない、と分かっているはずの東大生でさえ、お笑いに関してはすごーく少ないサンプルでとっても大きく語ってくることが多いでしょ?笑 あれなんなん?!と。
色んなものを見ればみるほど、どのお笑いも尊い!面白さって一種類じゃない!っていうことに感覚的に気づいて、それにみんな気づいて欲しい!!でも、お笑いをそこまで好きじゃない人にネタをたくさん見ろ!っていきなり言うのはキツいかな、と。
そこで私なりに、面白さの多様性を伝える、別のアプローチを考えたんです。それが、歴史的な史料を辿ることで、今回の展示なんですよ。
面白さには何か一つの正統や伝統が存在する訳ではなく、その感じ方は、時代に応じて、すなわち、経済や教育や服装の変化と連動して、形成されてきたものなんですよね。
もちろん個人の面白さの感じ方は尊重されるべき。
でも、「こうあるべきだ」という不確かな先入観によって素直に面白さを感じる感性が邪魔されていることがあると思う。
そのバリアを取り除くために人生を使いたい!と思っていて、その一歩が今回の展示ですね。
また同時に、東大vs京大~的な、そうでもない偏見で人を笑ったり、必死に争点にして言い争わせるような番組、ほんっまに何がおもろいねんと思ってて。
勉強はもっと面白いものだし、私の憧れたお笑いはこんなもんじゃない、もっと豊かなものだと思っています。
それを言えるように私がもっと面白くならないといかんなと思いますね。批判しているだけでは説得力に欠けるし、何も変えられないかもしれないので。
丁寧にかつ決まったペースで活動的に東大生やOBOG達の活動を紹介するUMEETさんの姿勢にはこの点で共感しています!
ーーこれからどうするんですか?
勉強もお笑いもどちらも大事な私の友達なので、一生たいせつに付き合って付き合っていきたいです。
ーー来年からもお笑いの研究を続けるの?
来年からは大学院でアフリカの同時代美術の研究をする予定です。卒業頑張ります笑
研究を通じて、西欧から「芸術」という概念が輸入されたことによって、国内にもともとあった文化が、「芸術」の枠からはじかれたり、その下位に置かれたりした状況について調べたいんです。
日本で言うと、書道とかがそれに当たるし、また演芸も、芸術ではなくその下位にある芸能と位置付けられることが多いですよね。
ただ日本の事例だけ見ているのでは私の中に元々ある価値観たちに縛られてしまうから、一度アフリカの文化について勉強する必要を感じました。日本とアフリカと西欧の三点観測、です。
ーー芸人は続けるんですか?
芸人は続けます!よその国の文化にアレコレ言うだけじゃなくて、日本人としてのこの身体で、日本語を使って、表現し、お客さんの前に出ることはできる限り続けていきたいです。
空を飛ぶような広い視野や、時空間を越えて考えを組み立てる力強い思考力を持ちながら、しっかりとどこかに根ざした人間になりたいと思っています。
最終的には世界に日本の演芸を紹介できるような説得力を持つ人間になりたいです。
笑いには、どうしようもないことを一度笑って保留して、次の現実に向き合う手助けをするという現世肯定の力があると思います。大げさかもしれないけど、世界の癒しや平和のために活かせる知恵ではないかなと思っています。
笑いを実践して、それを学問を使って世界に広めることは、人間が自由になるために必要なことだと信じています。
その第一歩である漫才展、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます!!
「漫才」の誕生ー歴史と証言ー
11月25日(金)~27日(日)
駒場キャンパス KOMCEE21 WEST オープンスぺ―スアリーナ
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