初めまして。瀧本ゼミ政策分析パートのMです。
将来政治学者を目指しており偶然「官僚制」について興味深い事例を見つけたため、皆さんの進路選択の一助になればと思いUmeetさんにお願いし寄稿しました次第です。今回、記事をご覧になり少しでも有益だと思っていただけたら幸いです。
さて、先日このようなことが報道されていましたがご存知でしょうか。
「働き方改革」というと聞こえは良いですが、「官僚の仕事が一つ減った」とも捉えられそうです。こうした状況は官僚に限りません。例えば2013年に発表されたオックスフォード大学のレポートでは、現在ある仕事のうち約47%は10年から20年の間に機械に代替されると言われています。*1
ひと昔前は、公務員は安泰と言われ中央官僚なら尚更、という状況のようでしたが現在はかなり様相が違うようです。世間からの天下りに対する視線は厳しくなり、先に言及した安倍内閣での公務員改革により勤務実績が悪ければ「降格」が可能となりました。さらに2014年に政府は毎年2%のペースでの国家公務員人事削減を決定しています。*2
「とは言っても官僚は日本を担っているし、官僚になれば日本を変えられるのではないの?」
という声が聞こえてきそうです。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。現在の官僚制の姿を検証するのが今回のテーマです。
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現在の安倍政権の下で起きた象徴的な事例を二つご紹介いたします。
*3
こちらの2016年6月2日の産経ニュースの記事では、「戦力外通告」と題し、以前から増税の計画を練り打診してきた財務省の要求を官邸側が拒絶したことを報じています。
財務省は計画的に消費税増税を訴えており、例えば2007年の時点で消費税を11%引き上げることを訴えていました。*4 今回の消費税増税延期は、まさに官僚側の計画を官邸が覆した「官邸主導」と言えそうです。
*5
先日、大きなニュースとなった天皇陛下の「お気持ち」表明。一旦、話題が落ち着いた後、首相官邸の不満を買った宮内庁長官が更迭されています。
しかし官邸サイドは何を不満に感じたのでしょうか。
一部では、旧来型の天皇制にこだわる安倍首相側にとって生前退位は決して認められることではなく、数年来生前退位の話を抑えてきたが終に宮内庁が公表したことで対立が表面化したとの見方もあるようです。*6
根拠とされる時事通信やヤフーニュースの記事が削除されているため確かなことは把握できませんが、少なくともNHKの取材によると5年ほど前から生前退位の議論が存在したこと(*7)、先の記事からその対応に官邸が不満を抱いたため人事異動を敢行したことは真実と捉えられそうです。
以上、現政権での事例を紹介しましたが実は民主党政権以前の自民党内閣でも同様の事例が存在します。
待鳥(2012)では、小泉政権時代、財務省は予算編成の基本方針について決定権を持てず、道路公団改革や地方財政改革では所轄の国土交通省や総務省は計画変更を迫られたと指摘されています。
そしてそうした変化は直属スタッフ組織の「制度的な」活用によるものだとされています。
注目すべきは「制度的であった」と述べられている点です。
つまり、小泉首相の個人的裁量ではなく制度的要因の寄与を示唆しています。
次ページ:では、ここでいう「制度的」という意味はどのようなものなのでしょうか。