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ユーグレナ社長・出雲充氏が斬る「成功に、正しさも効率も関係ない」

2016.08.17

「質とか効率とかの先に、未来はありません」

そう語るのは、出雲充さん。

「人と地球を健康にする」を経営理念に掲げ、大躍進するバイオベンチャー・株式会社ユーグレナの創業者。

日本で一番効率よく勉強ができる集団、東京大学の卒業生であり、効率をなによりも重視するビジネスの世界に身を置きながら、なぜ「効率」を否定するのか。

効率の先に未来がないなら、これからの時代を生きる我々に必要なものとは何なのか。

出雲さんは、その答えを、同席した社員の方が「あんな出雲社長はあまり見たことがない」というほど、熱く語ってくれた。

「別に、効率を否定する理由とか興味ないわ~」という人もいるかもしれない。でも、もしあなたが進振りや就活について考えているなら、決して無関係な話ではないと思う。

出雲さん曰く、「今の東大が教えていること、東大生が就職する職業もあと30年で半分以上がなくなる」のだから。(詳細は後述)

学生証
  1. お名前:出雲充(いずも みつる)さん
  2. 所属:東京大学農学部卒業
  3. 進路:学生時代の友人らと株式会社ユーグレナを設立。世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功し、食品や化粧品、バイオ燃料など幅広い分野で事業化に取り組む。日本の大学発ベンチャーとして初めて、東証一部上場を達成。15年1月には「第1回日本ベンチャー大賞」で「内閣総理大臣賞」を受賞。

理由を探すことに、意味はない

今日はよろしくお願いします。最初に、なぜ東京大学に行くことを決めたのか、教えてください。

…そういう「なぜ?」と問う質問に対して、一応ちゃんとした答えを用意してはいます。

でも、人のキャリアを決定する極めて強い理由というのは、当人の体験と身体性を伴ったすごく衝撃的な体験によって生まれるものなので、これを活字で共有するのは、非常に難しいと思っています。

「なぜ?」という質問は無意味、ということですか?

「なぜ?」と問うこと、行動に明確な理由付けを求めることは、効率的ではあっても正しくはないと思います。

例えば、「なんで成功するか分からないのに、起業したの?」というのが1番よく聞かれる質問なのですが、

(それ、聞こうと思ってたやつだ…考えてきた質問がことごとく先回りされる…)

少なくとも私の知る限り、うまくいくと確信してベンチャーをスタートする人は、一人もいないですよ。

成功するかどうかはわからないですが、世の中の人は全員「無理だ」と言うけれど、自分はとてもワクワクしてるし、好きだからやるものです。

それほど没頭できるものであれば、ベンチャーでも研究でもなんでもいい、私はそれに人生をかける価値があると思っています。別に失敗しても死ぬわけでもないですよ。

ユーグレナだって同じです。うまくいきそうだから始めたのではなく、ただ好きだから、始めました。

逆に「イノベーションを起こす」とか「とにかくベンチャーをやりたい」と言ってる人は、あまり起業しない気がしますね。

ユーグレナファームの緑汁、いただきました

起業って、完璧なプランを立ててから、するものだと思ってたので意外です。

そういう学生や社会人を大勢見てきたので、分かります。

絶対にうまくいくビジネスモデルなんて存在しません。多くの人が90点のビジネスモデルを95点にすることに5年かけようとするけど、あまり意味がありません。状況は刻一刻と変化するんですから。

差異を生み出すのは、スピードだけです。とにかく早く着手する。早く行動する。

行動を起こすための完璧な理由を探すことに時間をかけていては、新しいことはできません。

完璧なんてありえないのだから、とにかく行動しろと。

そういう完璧主義者は、特に東大生に多いですね。

例えば、いろんな大学で授業をするとき、いつも課題を出しています。

白い紙を1枚渡して、「表に、みんなが今日行ったすばらしいことを書いて、裏に、みんなが今日行った反省すべきことを書いてください」という課題です。

すると、東大生は裏ばっかり書いて時間切れになります。一方、アメリカの学生は表ばっかり書くんですよ。「今日は早起きした」とか「元気にあいさつした」とか、何でもないことばっかり。

国が違うとはいえ、学生の生活に大きな差はないはずなのに。悪いところばっかり見がちな東大生。のんきなアメリカ人。

僕も多分、裏ばっかり書きますね…。東大生に限らず、日本人って「完璧な状態になるまで、人に見せたくない」みたいなマインドがある気がします。

それに対して、アメリカとかは失敗に対して寛容ですよね。「シリコンバレーでは、失敗した回数が勲章」みたいな話もありますし。

そういうことですね。つまり、粗探しばっかりして、効率を高めることにこだわってる間に、他の人がサッと成功しちゃうんです。

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効率よりも大事なこと

そんな出雲さんは、どんな大学生活を送っていたのでしょう?

人が大学時代何をやってたかとか、何をすべきかとか、そういう情報を参考にすることに、私はあまり意味がないと思います。

多くの東大生はそのように、時間を有効に使いたがり、効率というものを非常に重視しますが、私は世の中に「効率」による違いなどないと思います。

(また、質問が先回りされた…)

なぜ、効率を否定するのでしょう?「要領よくやりなさい」って親とか学校の先生は言ってましたが…。

理由は二つあります。

ひとつめ、おたまじゃくしの時に平泳ぎのことを考えても意味がないから。

おたまじゃくしは変態を行って、カエルになります。カエルになって、手足が出てきて初めて、平泳ぎを始めればいいわけです。手も足もないおたまじゃくしが、変態前に必要以上に悩んでもしょうがない。

イメトレはちょっとは役に立つかもしれないけど、ほとんど何の意味もないんです。

いろんな環境の変化にあわせて、やるべきこと・やりたいことをみつけるのが一番大事です。

おたまじゃくしにしか、できないことを

ふたつめ、そもそも人間に違いはほとんどないから。

人間の遺伝子は、みんな99.9%一致しています。設計図が同じということは、みんな大差ないということです。

効率も一緒で、誰かのやり方が他の人よりも非常に優れているとか、効率が悪いとかは、遺伝子と同程度の差しかない。ほとんどゼロに近い、と言えます。

ならば、成功している人とそうでない人の差は何なのでしょうか?

重要なのは、「質より量をこなすこと」です。

誤解しないでほしいのですが、インターネットでたくさん情報収集することは、量をこなすうちには入りません。

どこでもいいけど行ってみる、誰でもいいから会ってみる、何でもいいからやってみる。

そして、熱いとか、寒いとか、痛いとか、おもしろいとか、とにかく五感と密接につながったフィードバックを得ること。

そういう体験があるか否かは、すごく大きいと思います。

たしかに、今までの僕の質問全部、「効率よく、成功できる方法」を聞き出そうとしていた…。

出雲さんのやり方を真似しても、身体性が伴っていない限り無意味なので、自分で試行錯誤して見つけていくしかないみたいです。

→次ページ、出雲さんの原体験とは…

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田中マルクス
はじめまして! 田中マルクスです。UmeeTのライターをやっています。よろしければ私の書いた記事を読んでいってください!
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