「今年から始まった推薦入試の合格した人ってさ、どんな人なのかな?」
ある日、食堂で私の隣に座っていたカップルらしき二人組。
その時、カップルの彼女のほうが言ったこの言葉に私はどれほどビビったことか・・・!
こういう時、悪口言われないか、とてもひやひやなんです。(これは推薦生の中でもたぶん私だけ)
でも、「あいつら、なんかすごそうだよな」って言ってくれた彼氏、本当にありがとう。
君は優しいよ、きっとモテる!・・・ってそうか、もう彼女いるんだよね。お幸せに。
でも!
今日は、彼氏の言葉に反して、
「推薦生って全員がすごいワケじゃないんだ」
「プレッシャーでつぶれそうな一般ピーポーな推薦生もいるんだよ….」
という悲痛な心の叫びを聞いてほしい、というのが、推薦入試合格者であり、
UmeeTの新米ライターでもある、ワタシ、田中優之介の切実な願いなのです。
というわけで、今日は、
ちょっと変わった推薦生もいる
ということを皆さんにお伝えしたい!
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まあ、まずは、とりあえず推薦入試の流れについてちょっと知っておきましょう。
1、募集要項をゲット
2、先生からの推薦状をゲット
3、課題の小論文を書く
4、小論文などの書類を提出(書類審査)
5、面接
6、センター試験
7、(うまくいくと)合格通知
ななななんと、3分クッキングよりも簡単な行程ですね〜!
ただし、最大の山場は面接。
場所は本郷・工学部四号館にある小さな部屋。
5人の面接官の先生を前にして緊張で心が折れそうな高校生は、45分間もの質問攻めに耐えなければなりません。
私は工学部志望だったのですが、一番印象に残ってる質問は、
「あなたの志望分野で好きな物理法則はなんですか?」
でした。
ちなみに私は、「不確定性原理です!」(物理工学科を志望していた)と元気よく答えたのですが、
そうすると今度は「隣にあるホワイトボードにその方程式を書いて、説明してください」という指示が・・・。
まじかYO!!
背中に流れる冷や汗を感じながら、面接の3日前に本で見た不確定性原理を、恐る恐るホワイトボードに書く私。えーっとデルタエックスと・・・。
Δx・Δp=h
思い出すだけでも恥ずかしい。バカか、俺は??うん、バカだ。
(わからない方は、ちょっとググれば正解が出てきます)
「東大の推薦制度導入に反対!」と言う人たちに、
「ほら、やっぱり推薦入学者はバカだから、推薦制度はダメなんだよ!」と言われそう。嫌だな~。
※あと、この質問の印象が大きすぎて、面接のほかの質問内容はもはやほとんど覚えていません。来年受けようと思ってる皆さん、参考にならなくてごめんなさい。
ただ、もう一つ印象に残っているのは書類審査の前に書いた小論文。お題は、
「あなたが感動した科学技術は?」
でした。
ちなみに、これについてもかなり面接中でつっこまれ、工学的知識がほとんどなかった私は生きた心地がしませんでした。
私は、情報技術について小論文を書いたのですが、途中で緊張(と勉強不足)のあまり、
自分の書いた小論文の内容を思い出せなくなるという事態に。
志望理由や経歴などをうまく言えたとはいえ、こんな感じで、工学的知識が付け焼刃だったことも面接官の先生方には明らかにバレていたでしょう・・・。
じゃあ、どうすれば推薦に受かるの?
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ところで「好きとか感動とか、工学部ってやたらとエモい質問を聞いてくるな」と思った方!
鋭い!(たぶん)
私が面接中で感じた一つのキーワードは「愛」です。(エモいですね)
書類審査の時に工学部志望者は志望分野を聞かれましたが、
「その分野についてどれほど知識があって、また、どれほど愛しているか」
ということを面接官の先生方はどうやら見たかったらしい。
入学後、同じく推薦合格した人としゃべってみてよくわかりました。
実際、一般に想像される”すごい推薦合格者”の人の中には、高校の科学部にいるうちから、地元の大学と共同で研究をしていたという人も。
やっぱりそういう人たちは自分の研究分野に愛があって、アツい!
「なるほど、あのエモい面接で、東大はこういう人材を発掘したかったのだなあ」と、後日納得しました。
さて、これまでの話を読んで、ほとんどの人はお気づきでしょうが、
私には工学の専門的知識が全くありません。
○○オリンピックにも出たことがない。
高校の頃入っていた部活も合唱部。
その合唱部も全国大会に行ったことはない。
大きなアピールポイントは10ヶ月の米国留学と日本の次世代リーダー養成塾の参加経験。
…だけどそれって、どっちもめっちゃ文系。工学部要素まさにゼロ。
それどころか、皆さんには
「あれ?東大推薦って、こんな奴が入れるような運ゲーなの?!」って思われるかもしれません。
でも、それは、最初に前置きをしたじゃないですか、「ちょっと変わった推薦生もいるよ」って!
(ですので、「もっとまじめな推薦生の話を聞きたかった」という類の苦情は受け付けません!笑)
「…お前、ほんとによく受かったな」って思われるでしょう。
ええ、私もそう思います。異論ありません。というか、反論できません。
元々、高校3年の夏にアメリカから帰ってきてから受験勉強を始めたものの、
進学について悩んでいたこともあり、
1月に入ってもまだセンター用の世界史で悪戦苦闘していました。
2月、二次の演習量が絶対的に足りない中、
私の第一志望はかなり背伸びをして大阪大学工学部。
最終判定はD。
阪大に受かりたい!と頑張ってはいましたが、
どうせ落ちる、と、心の中では「一浪して東京大学を受けよう」と思っていました。
で、そんな感じで半ばあきらめムードの中、2月10日に東京大学合格を知った、というワケなんです。
(未来の推薦生のみなさんへ。参考にならなくてごめんなさい)
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こんなことばかり言ってると、「推薦生はみんな、お前みたいなやつなのか?」と思うかもしれませんが、
それは違う!
物理オリンピック入賞者、部活での全国大会出場経験者はもちろんのこと、
長期留学や海外での研究発表など、多くの推薦生が国際的に活動してきた経験を持ちます。
世間では
「推薦入試は東大のブランド力を下げる」だの、
「勉強ができない人が東大に入ってしまう」だの言われておりますね。
興味本意でたまに見る東大推薦入試関連の2ちゃんねるスレッドにも、そんな感じの事が書かれてます。
でも!
私の知ってる推薦入試合格者の友人たちは、将来大物になる匂いがプンプンします。
みんな、新しいことや面白いことを常に求め学び続けている。
要は、みんな、何かをやり遂げる「強靭な開拓者精神」を持っているんです。
だから、私は、初めての試みであった今年度の推薦入試は、うまくいったと言えると思いますし、
こういう人材が発掘され続ける限り、私は推薦入試を実施することに賛成です。
まあ、推薦制度に反対する人には、ぜひとも実際に東大推薦合格者と話してみてほしいですね!
これまでに言ってきたように、私は別に”スゴイヤツ”じゃないんです。
でも、受かった。(ただ、開示によるとやっぱりぎりぎりだった)
皆さん気になるでしょう。その秘訣。
答えは…..マジで分かりません。
私の方が教えて欲しい(´Д` )
「これまで君がやってきたことの結果だよ!」ってたまに言われますが、
そんな理由だったら、半数くらいの東大生が推薦でも受かりそう。
(実際、みんな、推薦で受かるほどの人材である可能性高)
ただ、
私自身のアイデンティティ確立を半分目的にして、
強いて理由を推測するならば、
私も、私が面白いと思うものを幅広く追い続けているからかもしれない。
嫌いなものも、続けていれば案外面白いと思えることもあるし、
たいていの人や事って、何かしらの魅力を持ってる。
結局、「どんなことにも」面白さを見つけて、
関心を持って探究していけるのが評価されたポイントかな….と思ってます。
就活は、「社会への推薦入試」ではないかと個人的に思っていますが、
みなさんもこういう好奇心を身に着けておくと、推薦入試だけでなく、就活でも役にたつ・・・
かもしれない・・・。
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入学前、「推薦で受かった」ということが私にはコンプレックスでした。
私は、周りの東大生ほど勉強ができないし、これといったすごい特技も持っていない。
私には、”東大生”と呼ばれる自信が、なかった。
でも、入学してみると、
良いクラスメイトや上クラの先輩、サークルのメンバーに恵まれ、
今では、東大が提供しているたくさんの面白そうなプログラムを見て心踊らせる日々。
まあ、正直、今でも、他大生への自己紹介の時に「東京大学です」と言いづらい。
でも、東大って面白い。どんなことでも楽しめる環境。
そんな環境にいることができて、私は今、とても幸せです。(数学の試験はつらいけど)
吾輩は東大推薦生。これから東大生としてやっていく自信は、ちょっと、ついたかもしれない。