筋骨隆々のパーフェクトエロティックボディ。
・・・いやいやいきなり何見せてんの、そういう特集!?
とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは真剣なドキュメンタリーです。
これは、ある神童が東大に来て、深い絶望を経験する物語。そして、そこから這い上がっていく物語です。知力とユーモアと筋力を盛り込みつつも、彼が囚われた闇を解剖していきます。
ひたすら波乱万丈な彼の半生をお楽しみください。
バヤシコさんは1991年に神戸市にて生まれ、その幼少期を神童として過ごした。 成績はいつも 学年トップで、運動をやってもいつも1番。 兵庫県の名門・甲陽学院を目指し、当然のように入学した。
彼はその男子校時代を三種の神器[メタルギア, ポケモン, モンハン]の1つであるメタルギアに注ぎ、彼女なしゲームオタクガリ勉中高生としてその6年間を過ごした。そんな彼にも、受験の時期が来た。
「東大を目指したんは、片思いの女の子に認められたかったから」
その思いも虚しく、東大合格も視野に入ってきた頃、その子に彼氏がいることがわかった。最大の動機を、失ってしまった。
しかし、もう勉強するしかなかった。
幸せなキャンパスライフを信じ、わらにもすがるように受験勉強をした。見事、合格した。
「やっと東大に入れて、ようやく幸せになれると思ったわ。努力すれば幸せになれると信じとったし、それが当然やと思っとったからな。だってさ、その辺のよう分からん、努力とかしたことないやつの方が幸せとか、絶対ありえへんやろ!」
そんな彼を待つキャンパスライフは、一体どのようなものだったのか・・・
[広告]
かくして彼は理科一類に入学。しかし、これが終わらない闇の時代の始まりであった……
理科一類に入ってすぐに感じたのは、圧倒的無力感だった。 自分よりも圧倒的に出来る人の存在を前にした、絶望だった。即座にもう、勉強では闘っていけないと悟った。勝てる気がしない。
入った運動部でも、もっと出来るやつが山のようにいた。勉強も運動も、自分が得意だったはずのすべてが、奪われたような気分。そのまま留年し、半ば思考停止のまま暮らす……特になんの思い出もないような時間を過ごした。
ただつらさだけが彼を支配した。死にたいとすら、何度も、思った。
彼はもはや、自己を喪失していた。
神童だったからこそ、勉強に賭けてそして勉強で認められてきたからこそ、東大に来て「もはや何も誇れない自分」に絶望する。何者かになれると思っていた自分が、実は砂粒でしかなかった。
「何を贅沢な。東大に受かっただけで十分じゃないか」とあなたは言うかもしれない。でも共感する人もいるはずだ。周りが凄すぎて、自分が本当に取るに足りないと感じることの、苦しみ。
そしてバヤシコさんは、そんな中でも、そこまでしなくてもいいのにというくらい、思いつめ悩み続け、自分を痛めつけていたのである。
―――そんな矢先に、転機は起こった―――
大学2年の冬の出来事だった。
「部活動の練習中、足からボキッという音がなったんや。」
手術を必要とする大けがをし、一週間の入院を余儀なくされた。
「でもそのときまず最初に思ったんは、きっと骨折やしこれでいろいろ休めるな、っていうことで。」
そう考えてしまうほどに、闇は深かった。心は、とうの昔に折れていたのだ。
しかし、ひたすら止まらずに走り続けてきた彼にとって、一週間というこの入院期間は、人生について考える時間になった。
「小林さん、東大なんですか~!しかも運動部!ムキムキですね!」
ナースが気軽に話しかけてくれる。
「頭もよくて、運動もできるなんて、人生楽しいに決まってますね!」
(え、全然楽しくな・・・)
「将来、どんな人になるんだろう(^^)きっと社会の役に立つ人になるんだろうな~!」
(俺が社会の役に・・・!?)
今の自分の認識と、周囲からの見られ方のギャップにハッとした。
立派に働いているそのナースが自分(当時20才)と一歳しか違わないというのも、衝撃だった。
それから一週間の間、ナースの言葉が頭を反芻し続けた。
人生について、考えた。
『こんなに追い詰められなくったって、他の大学生と同じように、もっと気楽に人生を楽しんでもいいんじゃないか?』
そんな考えが、彼の中で芽生え始める。
考え方を、変えてみた。
『今を楽しむスタンスで生きてみよう。』
そう、骨折という不運は、確かに彼を救ったのだ。
第二の人生が、始まった気がした。
「卒業するときには必ず、同級生にお前は変わったなと言わせたる。」
こう決意して、彼は闇から這い上がっていく。
[広告]
血と涙の時代を終わらせられたのは、骨折が直ったその足を、部活動の外へ、一歩踏み出した勇気のおかげだった。
体育会でバリバリやっていたせいでなんとなくバカにしていた「サークル」。しかし、大学生活を楽しんでみようと決意したバヤシコさんは、あえてそこに飛び込んだ。
まったく雰囲気の違う人たちに囲まれて、若干コミュ障っぷりを露呈しつつも、段々と「普通の楽しい大学生活」を受け入れはじめた。英語サークルに入り、多くの友人を作り、「ムキムキな先輩」として後輩にも崇められるようになるのだ。
2年の夏、進学振り分けでは、かき集めた得点でなんとか理学部地球惑星環境学科に内定した。
体を動かすのが好きな性格とフィールドワークという研究スタイルが合致した。化石を掘ったりそれを顕微鏡で調べたり、充実した学科ライフを送った。 院試にも見事合格、ロシアへ海外調査に出かけるなど、駒場時代とは打って変わって学業にも取り組むようになる。
また同時にマッチングアプリを使って彼女も次々にGET!!ハードな部活動で鍛えた体をやっと披露する機会も手に入れ、過去を取り戻すように充実した大学生活を謳歌していた。
(注:バヤシコさんによると、「部活動でしんどい思いをしとったおかげで、今では日常の大抵のことは簡単に思えるようになった。部活にはむっちゃ感謝しとる」そうです)
…….ところが、彼は卒論をきっかけに、研究の道を諦めることになる。
楽しく化石を掘るだけでは卒論は書けない。膨大な実験とその集計の連続。実際の研究生活は彼にとっては辛いものだった。そこで彼は就職することを決意し、就活を始めた。
しかしながら、研究をやめた今、一体何を軸に就活すればいいのか。
自分の中を探してみた。
あった。それは「性」だった。
中・高・大とずっと考えてきた、唯一のことだった。
思えば、彼はいつも性のエネルギーに突き動かされ、ここまで走り続けてきた。
東大に合格したのも。ハードな部活動を頑張ってこれたのも。
(ちなみに、部活動時代にがむしゃらに頑張れていたのも、実は部内の片思いの子に認められたかったからだそうだ!!)
「異性に認められたい」
この思いが人をどれほど突き動かすかを、彼は身をもって知っていたのだ。
一方で、「異性に全く認められない」
この状態が、人をどれほど絶望に追い込むかも、彼は痛過ぎるほど知っていた。
そして出会ったのが、TENGAである。
「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」 その理念の大きさに惹かれた。
「性的に満たされてる人が鬱になったり、これ以上頑張れへんとか思うことってあんまないと思うねん。少なくともメンタル面で受ける恩恵は計り知れへんやろ。性的な面で少しでも満たされて、みんなが自分の頑張るべきことを頑張れるようになったらええなーって」
今の世の中じゃ、頑張ったところで「※ただしイケメンに限る」とかいうバカげた風潮のせいで、オトコたちの頑張るエネルギーが失われているような気がしてならない。実際に彼自身も、実らなかった過去の恋の経験から、性をかつてほどのエネルギーに変える元気がなくなっている自分を感じている。
「もっと、性のエネルギーを、前進へのエネルギーに変えられる社会を作りたい」
TENGAでなら、それができる。
TENGAの面接では、その情熱を、渾身の思いを、伝えた。
こうして在りし日の神童は東大に行き、そしてTENGAへ内定したのである。
[広告]
見事手に入れたTENGAの内定であったが、 親に猛反対された。決意を伝え、何とか説得を試みたものの、かなわなかった。
バヤシコさんは闇の中で成長し、神童という殻を破ったものの、親にとってはまだ大事に育ててきた神童だった。彼が戦ってきた「自分への高すぎる期待」と同じように、「周りからの期待」というものもまた、本当に強固な縛りなのだ。
決意が固かっただけに、TENGAを捨てるのは苦しい決断だった。
しかし、実は彼はまだあきらめていない。「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」という理念は、彼に刻まれたままだった。まずは自分を成長させるため他の入り口を見つけることにした、というだけである。
そうして現在、彼はある商社への就職が決まっている。「規模が大きいというわけではないが、自分が活躍するにはそれくらいの方が良い」と考えている。会社の名前ではなく、その先の自分を見据える。やりたいことは、その先にある。
「性のエネルギーの強さは人一倍知ってるつもりやから、絶対に将来、性の可能性を広げる会社を作る。自分の手で、変えてやる。オトコたちがもっと全力で頑張れる社会にならなアカン」
熱く語るバヤシコさん。
日本の性を取り巻く環境を、彼が変える日も近いだろう。
———————————————————————–
彼が大学生活で学んだのは、「いやなことはいつでも辞められる」ということだった。ストイック過ぎる性格は彼を追い詰めた。しかし、骨折という転機により、彼は「気楽に人生を楽しんでもいいんじゃないか。」と思えるようになった。今は就職して、そこで全力を出す。でもいやになったら、考え直すことだってできる。
もしあなたが今、何かしんどい思いをしているなら・・・、辞めてもいいのではないだろうか。自分に厳しい余り、自分を痛めつけてはいないだろうか。頑張りすぎていないだろうか。
最後は、人生を楽しむ現在のバヤシコさんの笑顔で締めたい。
バヤシコさんのブログ 「バヤシコが〇〇について本気出して考えてみた」 はこちら
撮影: 佐藤雄志