旅は学び~台湾長期登山と歴史探訪の記録

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僕は2015年4月から2016年3月まで一年間休学した。今回はその中で台湾に滞在した3ヶ月間を振り返って見ようと思う。

台湾へ行った目的

台湾に行った目的は主に2つあった。

1つ目は台湾の山に登りたかったからである。僕は休学前、ワンダーフォーゲル部で日本各地の山を登っていた。その延長で海外の山にも登ってみたかった。そして台湾は一番近い海外であったし運の良い事に、北京での語学留学を終えたばかりの僕は中国語を使ってコミュニケーションが取ることができた。しかし、単純に「山に登りに行きます」では、休学中の貴重な時間を使う理由として不十分だった。せっかくなら他の誰もまだやったことがないことに挑戦したいと思った。そこで、台湾の山の動植物・歴史・自然保全活動などに理解を深め、それを旅行記と共に日本語・中国語で発信するという目標を立てた。

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夕暮れ時、西南稜の断崖から望む台湾第二の高峰・雪山(3886m)。雪山は二番目に高いということから日本統治時代は「次高山」と呼ばれていた。

2つ目の目的は日本統治時代の台湾で生活した祖母の記憶を辿るためである。祖母は18歳まで台湾で生活した「湾生(台湾で生まれ育った日本人)」なのだ。ひょんなきっかけで祖母の母校である台南高等第一女学校(現:台南高級女子中学)に当時の建物がまだ残っていることを知った僕は、是非訪問してみようと思った。写真を撮ってきて、それを祖母に見せてあげればきっと喜んでくれるのではないかと思ったのだ。

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当時のクラス写真。女学校には第一女学校と第二女学校があり、日本人の生徒は主に前者に通った。

こうして、9月中旬、僕は期待と不安を胸に台湾に旅立った。期待というのは上述のような大きな目標を持って旅立ったからであり、不安というのは台湾にまだ一人として知り合いがいなかったからだ。

台湾での登山

台湾に到着し、まずは国立台湾大学登山社(日本でいう山岳部・ワンダーフォーゲル部に相当する)と連絡をとり、情報・地図などの準備を手伝ってもらった。そして、植物地理を研究している登山社OBの人の下宿に居候させてもらいながらあちこちの山に登った。

台湾の山からは日本統治時代の歴史を垣間見ることができて興味深い。例えば台湾の多くの動植物には、当時つけられた和名がある。台湾のフィールドに分け入り、その動植物を初めて学術的に研究したのは日本人研究者だったからである。

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玉山山蘿蔔(ニイタカマツムシソウ)

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玉山抱莖籟簫(ニイタカヤマハハコ)

 

 

 

 

 

 

また、台湾の山名には日本にゆかりのあるものも少なくない。

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山容が日本・北アルプスの剣岳に似て険しいことから命名された「大剣山(3594m)」

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山地原住民との戦争で命を落とした第五代台湾総督の苗字から名付けられた「佐久間山(2809m)」

 

 

 

 

 

 

 

その他、日本人が当時残していったものが見つかることも多い。台湾滞在中、国立台湾大学登山社の人達と一緒に日本統治時代の古道跡や森林鉄道跡を訪ねる機会があった。既に役目を終えた当時の古道や鉄道は、藪に埋もれつつあり崩壊が著しい。棘のある植物を掻き分け、鋭利な葉を持つ植物に手の皮膚を切り傷だらけにされながら70年以上前の面影を探したあの旅は忘れられない思い出だ。

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日本統治時代の古道上にあった吊橋。片仮名で「ロオン橋」と書かれている。

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吊橋の近くには「キリンビール」の文字が刻まれた瓶が転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

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大平洋戦争中に木材供給のために建設された森林鉄道跡。

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この森林鉄道は、日本統治終了後も使われ、30年ほど前に廃棄されたという。

 

 

 

 

 

 

また、日本で山岳紀行文と言えば深田久弥の「日本百名山」が最も代表的だろうが、台湾では1920年代~40年代に活躍した鹿野忠雄という日本人研究者が台湾の山を歩き回って書いた「山と雲と蕃人と」という紀行文が中国語訳されて広く読まれている。

これらの歴史的に興味深い要素を抜きにしても、3000m以上の険しい山が200座以上連なり、遡行に1週間以上が必要な大渓谷を多数擁する台湾の山々はそれ自体として素晴らしい。僕はとても充実した時間を過ごした。

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山頂付近に大きな氷河地形を持つ南湖大山(3742m)の朝焼け

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台湾東北部、基隆郊外の山から大平洋を望む。与那国島まであと100キロ。

次ページ:台湾は「親日」なのか?そしてその特殊性とは

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toyojapan1

農業史研究室所属。研究内容は台湾山岳地域における原住民の生業変化。 1年間休学して北京で中国語を勉強し、台湾とニュージーランドで山に登る。

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