あなたの写真で首里城がデジタル復元される!?プロジェクト発起人の東大講師に話を聞いてみた。

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2019年10月31日、火災により沖縄の首里城が焼失したという悲しいニュースが流れてきました。

様々な人や団体が復興に向けて動いています。

 

そんな中、こんなプロジェクトを発見しました。

 

みんなの・・・?デジタル復元・・・?いったいどういうこと・・・?

 

よく分からなかったので、実際にサイトを覗いてみると、

カーソルを使って360度どこからでも見ることができる。

うわっ!!首里城がデジタルになってる!!

この3Dモデルは、実際に首里城で撮影された写真、ビデオから復元していくもので、この写真は誰でも提供することができるといいます。だから「みんなの」なのね!つまり、プロジェクトはまだ途上なわけです。

しかも、これからその写真を提供した人の思い出がデジタルの首里城に表示されるようにしていくそう。僕は首里城へ行ったことがないのですが、様々な人が同じ場所でどんなことをこれまで感じてきたのかがまとめて見られるというのはとても面白そう!実際に首里城に思い入れのある人なら、楽しいだけでなく、何らかの拠り所とすることもできそうです。

 

そしてどうやら、この活動は東京大学の教授、学生を中心としたボランティアが行っているそうです。

これはUmeeTで取材しに行くしかないでしょう!

一体どうしてこんな活動を行うことになったのか、発起人の東大特任講師、川上玲さんにお話を伺ってきました。

せっかくだから現地の人の意見も聞きたい!ということで、カメラマンとして「首里城の敷地から10mほどしか離れていない小学校に通っていた」という上園海(かみぞのまりん)さんにも随行してもらいました。

  1. お名前:川上玲さん
  2. 職業:東京大学大学院情報理工学系研究科特任講師
  3. 備考:みんなのデジタル首里城復元プロジェクト発起人

 

  1. お名前:上園海さん
  2. 職業:グラフィックレコーダー・デジタルマーケター
  3. 備考:首里城の近くに住んでいた

 

筆者:どうしてこのプロジェクトを実施することになったんでしょうか。

川上さん:もともと私は、文化財を3Dで復元するプロジェクトに、いくつか関わっていたんです。カンボジアのアンコールワットや王塚古墳に行って、調査して、3Dモデルを作るということを、修士や博士の頃にやっていました。

筆者:ご自身の専門分野がちょうど生かせると思われたから企画を始められたんですか。

川上さん:いえ、プロジェクトに関わってはいましたが、実は私は3Dの専門家というわけではなくて。

最近は学生がやりたい研究を一緒にやっていくというスタイルで活動していたので、文化財のデジタル保存の研究からも距離をおいていました。

筆者:ではなんでまたこのプロジェクトを。

川上さん:首里城が燃えてしまった10月31日、実は私は韓国にいたんです。

韓国で、ICCV(International Conference on Computer Vision)と呼ばれるコンピュータビジョン分野の学会が開かれていたんですが、これに参加していました。

その本会議の初日で「Building Rome in a day」という、10年前の研究が賞をとっていたんです。

筆者:うわっ、コロッセオの復元ですね!

川上さん:この三角の点からそれぞれ撮影された写真を数千枚使って、3Dモデルを作っているんです。

筆者:まさに、今回の首里城の3D復元とそっくりですね。

川上さん:はい。ちょうどこの研究のことが頭の中にあったので、3D復元をしようと思いました。

首里城が燃えたというニュースは、帰りに電車で空港へと向かっているときに読みました。

悲しくて自然と涙ぐみました。

筆者:でも、川上さんは沖縄出身というわけではないですよね。

川上さん:はい。ただ、これまで文化財調査のために、いくつかの文化財を訪れていたので、文化財の周りに住んでいる人の気持ちが、なんとなく分かっていたんです。

あって当たり前なので、燃えてしまうと、自分の家が燃えたくらいの気持ちになると思うんですよね。小学生がショックで学校を休んだというのを知ったことも大きかったです。

そこで、なんとかしたいと思い、その場で首里城の3Dモデルを作らないかとツイッターで呼びかけました

(実際のツイート。火事当日の10月31日17時40分に投稿されている。)

筆者:そんなすぐに行動されたんですね!

川上さん:泣いてるくらいなら何かすればいいんじゃないかと思ったんです。

ただ、一歩踏み出すのはめちゃくちゃ怖かったですね。

「Building Rome in a day」も10年前の研究ですし、今その首里城版をやったところで研究的な価値はないと思ったんです。しかも、写真が集まるという保証もありませんし。「他の研究者の方から白い目で見られるかもしれない」という恐怖はありました。

ただ、いざツイートしてみると、他の研究者の方からも良い反応があって、研究室の学生も一緒にやってくれると言ってくれました。

筆者:他の方たちもすぐサポートの意思を示してくれたんですね。

川上さん:はい、それですぐに行動に移りました。

左はすぐに協力を申し出てくれたという研究室の学生、亀井さん。川上さんいわくめちゃくちゃ優秀らしいです。

 

ピュアな善意で動くプロジェクトにしたい

川上さん:ただ、もともとはここまで大規模なプロジェクトにするつもりはなかったんですね。

筆者:それはどうしてですか?

川上さん:学生に過剰な負担はかけられないですし、私も子供がいるので、大幅な労力はさけないと思ったんです。

ただ、研究者の方などに協力を仰いでいく過程で、たまたま情報が外部に漏れてしまって、こちら側が予定していないタイミングで、大々的に拡散されてしまったんです。

筆者:えー!!かなりピンチですよね。

川上さん:はい。その後に、首里城の3Dモデルが既に存在していることを発見したりとか、予期せぬことが起こって、どこにプロジェクトの意義をおけばよいか分からなくなったりしたんですが、もう情報が漏れていたので、やっぱりやめるとも言えない。すでに、沖縄タイムズなどの地元紙からの取材申し込みがきていました。

そこで、思い出のメッセージを写真に紐づけて3Dモデルに反映させる手法を使うことにしたんです。モデルと人との関わりを強めようと。苗村研は人とデジタルツールの関係を深く考えることに長けていますから。現地の人が望むものと、研究的な価値をすり合わせながら、プロジェクトを進めていこうと考えています。

ただ、そのデータをどのように使うかということについては、まだ検討している段階です。

筆者:海さんは首里城のすぐ近くに住まれていましたけど、実際に、現地に住んでいる人の立場からして、プロジェクトについてはどのように感じていますか?

海さん:大賛成です。首里城の再建にかかる期間としては、5年とも10年とも言われているんですけど、実際に私たちのおじい、おばあ世代の人がその年月を待てるのかと不安に思っていました。そんな人たちが、このデータを使って首里城の思い出を懐かしむことができるなら、とても価値のあるものになると思います。

川上さん:最初から、このプロジェクトは現地の人のため、それからデータを送ってくれたみんなのためのものにしようと考えていました。本当は研究者ですから、研究的な側面を考えなければならないのですが、もう、ピュアな善意だけのプロジェクトでいいだろうと思いました。

確かに、このプロジェクトによって私たちの分野や名前を知ってもらえます。でも最終的には、絶対に現地の人に喜んでもらえるものを作らなくてはいけないと考えています。

外野の人でもピュアな善意で動くことがあるよってことを、子供たちに示すことができれば、その子供たちにとってもとてもいい経験になると思うんです。

ピュアな善意で動くプロジェクトにしたい。

海さん:その姿勢が、プロジェクトから感じられるので、私はこのプロジェクトを応援しようと思ったんです。実は沖縄の人って外部への反発の精神が強くて、こういったプロジェクトが実施された場合も、まずどこの人がやっているものなのかっていうのをしっかり確認するんですね。ただ、この「みんなの首里城デジタル復元プロジェクト」からは自分たちの名前をアピールしようという意識が見えませんでした。

ただ、気になるのは川上さんはどうやってこのプロジェクトを現地の人に役立てようと考えていらっしゃるのかなって・・・。

川上さん:実際の活用方法についてはまだ考えている途中です。

ただ、このAR/VR自体が首里城に人を引き寄せる力にならないかなという期待はあるんですね。

このプロジェクトでは、3Dモデルを復元するために、実際に首里城に訪れたからから写真をいただくというプロセスをとっています。

そういったワンアクションを挟むことで、写真を送ってくれた人に、もう一度首里城に行ってみよう、コンテンツができたら見に行ってみよう、という気持ちが喚起されるんじゃないかと思うんです。

コメントを書いていくうちに、それぞれの人が実際に首里城を訪れたときの体験を思い出してくれたら嬉しいですね。

筆者:確かに、いろんな人が首里城についてもう一度考えるきっかけにはなりますよね。

海さんは、現地側の立場として、どうすればこのプロジェクトをうまく活かすことができると思いますか。

海さん:今、沖縄にそういったバーチャルのものを活用できる力が全然育っていないので、実際に住んでいる人がうまく使うことのできるような導線づくりをして欲しいですね。

使い方を考える上でも、沖縄は実際に会って話をするというのを大事にする文化なので、完成が近づいてきた段階で、他の沖縄のプロジェクトなどと連携して、現地の人と一緒に使い方を考える機会なども提供できたらいいなと思います。

川上さん:そうですね。現地の人との交流は必要だと感じています。

筆者:これもう、海さんが現地側としてプロジェクトに参加した方がいいんじゃないですか。

川上さん:ぜひ、お願いしたいです!現地の人の理解を得るのって本当に難しくて、文章を書いても長いと読んでもらえないし・・・。

海さん:全然できます!私、沖縄の県人会に入っているので、他の人の協力も仰げますし。

筆者:本当に参加できそう。すごい。

海さん:やっぱり、デジタルなものは高齢の方だと抵抗が強いと思うんです。提案としては、実際に現地の人が利用している映像を作ったりするのはどうですかね。

川上さん:いいですね。早めに進めていきたいですよね。

海さん:現地の人から、思い出を引き出すためのツールとしても、役に立つと思うんです。実際にデジタル化された首里城を見ながら、こんなことがあったなーって語りあったりとか。ツールがあるからこそ生まれるコミュニケーションを大事にしたいですよね。

川上さん:おじいちゃん、おばあちゃんにもツールを使ってもらいたいんですけど、そのためにはまず、デジタルに詳しい若い人にツールを知ってもらう必要があると思っていて、そういった若い方の協力が得られるのはとても心強いです。

海さん:私、なんとなくですが県内高校生にも授業したこととかあるので、もしかしたら中学校とか高校で使い方を説明できたりするかもしれないです。

川上さん:うわー!!とてもありがたい。そこら辺のコネクションが今まで全然なかったので、うまく輪を広げられればとても面白いことになるかもしれません。

筆者:ここですごい話が進展してますよね。外部からやってきてこんなプロジェクトに関わる話になるなんて思ってもみませんでした。

川上さん:私、善意の力って大きいと思うんです。人に「ありがとう」と言われたいという気持ちは、とても大きな原動力になるはずです。

だからこそ、今回のプロジェクトには色々な人に関わってもらいたいんです。

みんなやりたいと思っているけど、普段なかなかできないからでしょうか、このプロジェクトはありがたいことに多くの人から協力してもらえています。現地の方への応援と思って、色々な人に関わってほしいです。

海さん:私、今度11月23日前後に沖縄に帰るんですけど、そのときにうちのおばあとかがVRを使っている様子を撮影してきて、プロモーションを作ってきてみてもいいですか

川上さん:お願いします!

海さん:今、おばあに撮影できるか聞いてみますね。

おもむろに電話をかけ始める海さん。

海さん:もしもしー

今、首里城の写真をみんなから集めてデジタル上で再現するっていう面白いプロジェクトやってて、

それをみながら首里城についての思い出を話しているのを取りたいんだけど、何人か協力してもらえないかな。

海さんの祖母(電話):【思い出を言うってこと?】

海さん:そう。

海さんの祖母(電話):【みんなに協力を頼めばいいのね。言ってみるさ。】

海さん:ありがとう。

筆者:進展早すぎです。

というより、このプロジェクト、全体的に進みがとても早いですよね。

川上さん:やっぱりみんな何かしたくて動いているからでしょうね。

私が指示しなくても、各々が自分のやるべきことを分かっているので、無駄な時間がないんです。

しかも、それぞれ専門が違う人が集まって、多様なのも特徴だと思います。

参加者みんなで作り上げる、いいプロジェクトにしたいですね。

 

最後に

目の前でプロジェクトがどんどん進んでいって、勝手にめっちゃ興奮してました・・・!

このプロジェクトのいいところはどんな人でも参加できるところだと思います。首里城の写真や動画を持っている方はぜひ、公式サイトを確認して、アップロードしてみてください。

取材に協力してくださった川上さんを始めとするプロジェクトチームの皆様、上園海さん、そしてここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

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ABOUTこの記事をかいた人

チロルです。 小学校の時に、少年が全国に散らばったチロルチョコを集めに旅に出る、という漫画を描きました。

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