「数IIIまでの知識があれば誰でも楽しめるカードゲーム」が東大で売られていた話。【制作者インタビュー】




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専攻が決まり、本郷でのキャンパスライフを開始したチロルです。

東大本郷キャンパスの生協で買い物をしていると、「数IIIまでの知識があれば誰でも楽しめるカードゲーム」なるものが売られているのを発見しました。

「ナブラ演算子ゲーム」というらしい。

え・・・何それ。全然誰でもできないじゃん・・・。

何なら、数IIIを学ばずして東大に入っちゃって、それ以来ろくに数学に触れてない僕もできないじゃん・・・。

 

本来、カードゲームとは子供から大人まで誰でも楽しめるように作るべきもの。(多分)数学の能力によって参加者を選別するような極悪非道な真似は断じて許せん!ということで、数IIIまでの知識があれば誰でも楽しめるカードゲーム、「ナブラ演算子ゲーム」を制作された方にどうしてそんなものを作ってしまったのか伺ってきました。

インタビューのサポーターとして、既に5作ものカードゲームを制作されている、カードゲームスペシャリストの東大生、符亀さんにも参加していただきました。

 

全ては数学から始まった

学生証
  1. お名前:本多弘和さん
  2. 所属:東京大学工学系研究科機械工学専攻修士2年
  3. 備考:ナブラ演算子ゲーム製作委員会代表
学生証
  1. お名前:森田雅之さん
  2. 所属:東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻修士2年
  3. 備考:ナブラ演算子ゲーム製作委員会副代表
学生証
  1. お名前:符亀さん(王仁辰巳さん)
  2. 所属:東京大学理学部化学科(学士)4年生
  3. 備考:カードゲーム作成サークル符亀

 

筆者:早速なんですが、どうしてナブラ演算子ゲームを作ろうと思ったんですか?

本多さん:ナブラ演算子ゲームを考案したのは僕なんですけど、そもそもの目的は、楽しく数学を学ぶことでした。

実は、僕は数学があまり得意ではなくて、どうやったら楽しく数学を学べるだろうと考えていくうちに、このゲームの構想を思いついたんです。

ナブラ演算子ゲームのルールについてはこちら(YouTube のリンクに飛びます。ざっくりいうと、微分や積分を使って戦う、2人プレー用対戦型カードゲームです。)

めっちゃ計算している。

筆者:え、そうなんですね!てっきり、数学が得意で好きだからゲームを作ったのだと思ってました。

本多さん:最初は製品化も全く考えていなくて、ただ自分が楽しみながら数学を学ぶためだけに作ったという感じですね。

筆者:どうしてみんなができないようなカードゲームを作ったんだろうと思っていたんですが、そもそも数学を学ぶことが目的だったからなんですね。(それなら僕ができなくても仕方ない・・・。)

本多さん:はい。手作りでカードを作って、理科I類クラスの友達と一緒に遊んでいました。ルールも1日で思いつきました。

ナブラ演算子ゲームの誕生は一瞬だった。

筆者:そんな簡易的なものが、どうして大学の生協で売られるまで大規模になったんですか。

本多さん:クラスのみんなからの評判がとても良かったので、五月祭(東京大学本郷キャンパスで5月に行われる学祭)で販売することにしたんです。

ただ、もの自体は今のようにしっかりしたものではなく、厚紙とかを切って手作りしてました。

森田さん:本田と同じクラスだった僕や、あと3人程度が手伝って、制作と販売を行いました。

筆者:ごく小規模の販売を始められたんですね。

本多さん:そして、そこでもゲームの評判が良かったんです。初日20個、2日目20個で販売してたんですが、初日は1時間で売り切れてしまって、2日目に至っては販売前から噂を聞きつけた方が並んでくださっていました。

売り切れた後もお客さんが足を運んでくださって、「えー、もう売り切れちゃったの。」って感じでしたね。

符亀さん:がっつりと数学を取り入れたカードゲームというのは恐らく初ですよね。対象者を絞ったことで、かえって他にはない独自の地位を占めるカードゲームになって、刺さったんだと思います。

本多さん:もともと、僕は楽しく数学を学ぼうという動機でゲームを制作していたので、カードゲーム業界に詳しいわけではなく、結果的に一部の人にヒットしたのは偶然でしたね。

でも、数学が苦手な人に向けて作ったカードゲームですが、やはり数学が好きな人から人気でした。(笑)

符亀さん:ナブラ演算子ゲームの販売が開始されたときは、私は高校生だったんですが、私の高校まで噂が広がっていましたね。

森田さん:ナブラ演算子ゲームを支持してくださるのは東大生だけではなく、幅広い層の方がいらっしゃって、小学生の中にもやってくれている子がいます。

筆者:え!小学生ですか。

森田さん:はい、最近だと「くもん」とかで数IIIを先取りしている子がいて、そういった子から人気でした。

筆者:ええ、小学生でナブラ演算子ゲームするんですか・・・!(焦り)どうしよう、今から数Ⅲ勉強しようかな・・・。

本多さん:そして、その後の駒場祭(東京大学駒場キャンパスで11月に行われる学祭)で本格的な制作を開始しました。その時点で、ほぼ今と同じ製品が出来上がって、販売する個数も300セットと大幅に増やしました。

筆者:ここで大規模な形になったんですね。

森田さん:とはいえ、制作人員はここで本田と僕の2人だけになったんですけどね。(笑)

筆者:え、2人でやられてたんですか!?

本多さん:はい。現在も2人でやっています。

駒場祭でも好評で、300セットを売り切ることができました。

それ以降は、東大の学祭での販売に加えて、国内最大規模のアナログゲームの祭典であるゲームマーケットなどにも出店するようになりました。

 




「ナブラ演算子ゲーム」が売れ続けたわけ

符亀さん:ナブラ演算子ゲーム製作委員会さんのすごいところは、最初から今まで、ナブラ演算子ゲームのみを販売しているというところなんですね。

筆者:普通は他の新作ゲームを作るんですか。

符亀さん:私もゲームマーケットなどに出品しているんですが、やはり基本的に新作でないと興味を持たれにくいんです。だから、新作に興味を持ってくださったお客さんに、過去作を一緒に紹介するというやり方をとるのが一般的です。

販売開始から5年以上も経って、いまだに売れ続けれているのは本当にすごいです。

販売された個数も数千個と、ボードゲーム業界ではかなり多いほうですし、カードゲームショップ大手の「すごろくや」で取り扱いが始まるなど、学生が作ったゲームでは驚異的ともいえる結果を残してますよね。

筆者:売れ続けた理由はなんだと思いますか。

本多さん:これまでになかったタイプのゲームですし、数学を使うというのもあるので、ルールなどを詳しく解説することには力を入れてきました。

Youtubeでルール解説動画を配信したり、学祭でルール講習会を開いて直接教えたりもしています。

それと、学祭での販売では、保護者の方にも手にとってもらえることが多かったです。数Ⅲの知識を使うので、知育玩具としての観点から購入していただけることもあるのが、ナブラの強みだと思います。

筆者:もともとの目的は、数学を楽しく学ぶことですもんね。

 

思いついたらゲームを作ってみて欲しい

筆者:いやらしい話ですが、そんなに売れていたら、めっちゃ儲かってますよね。

カードゲーム業界に参入することについてはどう思いますか?

本多さん:ビジネスとして参入するのはお勧めできないですね。カードゲームはお金を稼ぐにはすごく効率が悪いんですよ。カードの原価も結構しますし。

符亀さん:実はここ2、3年でカードゲームのブームが起こっているんです。ゲームの質が上がってきているので、制作コストもどんどん高くなってきています。50%に原価率を抑えることができるとすごいという世界なので、それにイベント出店代や宣伝の労力もかかると考えると、とてもじゃないけど儲けることは難しいと思いますね。

本多さん:ただ、面白いアイデアを思いついたなら実行に移した方がいいと思います。特に、東大生の場合だと、その看板を利用することもできますし、そもそも学生という身分なら失敗してもリカバリーしやすいです。学祭という場もあるので、そこで反応を見ながら改善していくこともできます。社会人に比べて思いついたものを形にしやすい環境は整っていると思います。

符亀さん:うちも、ゲームのために論文を調べたり、図書館で史料を借りたりしていて、そういうことが簡単にできるのは強みですよね。

筆者:ナブラ演算子製作委員会のおふたりは修士2年で、今年大学を卒業されてしまうんですよね。

ナブラ演算子ゲームの今後については、どのように考えていますか。

本多さん:学祭での販売は、前回の五月祭で最後です。ただ、これからもゲームマーケットでの販売は続けていく予定です。

それと、海外でも販売していきたいですね。計算式のみを用いているカードゲームなので、言葉の壁に縛られることがないという強みを生かして、これからもっとたくさんの人にナブラを知ってもらえるように活動していきたいです。

 

終わりに

制作者さんのお話を聞いて、僕もナブラ演算子ゲームをやってみたくなりました。

ですが今から数Ⅲを学ぶ気力はないので、これをみている皆さんで数Ⅲが出来る方は、ぜひ僕の代わりにナブラ演算子ゲームをプレーして僕の雪辱を果たしてください。

今回ご協力いただいたお二方は、共に11月23、24日開催のゲームマーケットに出店されます。皆さん、ぜひ行ってみてください。

インタビューに協力してくださったナブラ演算子製作委員会のおふたり、符亀さん、そしてここまで記事を読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

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ABOUTこの記事をかいた人

チロルです。 小学校の時に、少年が全国に散らばったチロルチョコを集めに旅に出る、という漫画を描きました。

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