「ひらめきは、汗と涙でできている。」東大院卒の広告クリエイターに聞くアイデア論。

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ひらめきは、目的と手段のパズル。

 

──真面目に勉強して来た東大生と、生まれつきの才能が必要そうなクリエイティブの領域は一見相容れないように思うのですが、小竹さんはどのようにしてクリエイティブの仕事に就かれたのですか?

 

私は大学時代に建築学科で学んでいたんですが、その中で自分は特に建築のコンセプトを考えるのが好きだったんですね。
例えばこういう「立体駐車場なのに、リゾート施設のような開放感」みたいな。そういう建築の概念的な面白さにハマりました。

 

なので企画やコンセプトを立てる訓練をもっとしたくて、東大本郷のi.schoolに通い始めました。
i.schoolというのは、IDEOがスタンフォード大学に開設したd.schoolの東大版という趣旨で、「デザイン思考」とか「アイデアの作り方」をワークショップ形式で学べる学校です。

東京大学名誉教授の堀井秀之先生が主催していて、monogotoの濱口秀司さんや、マザーハウスの山崎大祐さんら著名なクリエイターがゲスト講師で来るような刺激のある環境でしたよ。 

 

──クリエイティブになるための学校が東大にもあるんですね!でも、クリエイティブって努力で何とかなるものなんですかね…。

 

既存の二つのものを組み合わせれば新しいアイデアが生まれる」と、世界初の広告代理店を作ったジェームスW.ヤングが言っていましたが、この言葉知ってる?

 

──「涙」と「掃除機」という既存の二つのものを組み合わせて「全ての涙を吸い込んでくれる機械」という新しい商品を思いつくみたいなことですよね。

 

…なんか悲しいことでもあった?

 

──…続けてください。

 

お、おう。

でも僕が思うクリエイティブは、単なる物と物の組み合わせではなくて、目的と手段の組み合わせのパズルです。パズルは時間と根気があれば誰でもできる。

だから別に才能が必須なわけではないんですよね。その質を上げる訓練を僕は大事にしていますね。

 

具体的に言うと、僕はこのアイデアのパズルを「問題系」と「解決系」に分けて考えています。問題系は”高齢ドライバー問題”とか”人種差別”のような、解決したい問題のことです。解決系は例えば”自動運転技術”や”AI技術”、”心理学的手法”のような、解決のために使える手段の事です。

この問題系と解決系を組み合わせて、「AIを使って人種差別を解決できないかな…」みたいに考えるんですね。たとえば「go back to Africa」という海外のキャンペーンがあります。

 

黒人に対して「アフリカに帰れ!」というヘイトスピーチをした問題に対して、テキストマイニングとディープラーニングの画像変換技術を使って、「旅行でアフリカに行こう!」という旅行キャンペーンに変えてしまった事例です。

普通にヘイトスピーチを解決しようとしたら、SNSプラットフォーム側でそれらを規制しちゃうだけだけど、意外な解決方法を発見する事で新しい価値を生み出す事ができる。

「人種差別」と「AI」って普通は結びつかない二つの概念ですよね。このように「問題系」と「解決系」の距離を大きくすると、とたんに仕事がクリエイティブに見えてくる。

 

──ただ組み合わせるだけではなくて、その距離が重要ということですね。

そのかけ離れた二つを繋げるために日頃から意識していることはありますか?

 

問題系と解決系ではやることは違いますが、どちらも日々のインプットがカギを握ります

問題系に関しては、僕は毎日のニュースの見出しをメモしてストックしています。たとえば、高齢ドライバー問題、あおり運転、東京湾の水質汚染、セクハラ、痴漢冤罪、年金2000万円問題、8050問題、日韓問題、米中貿易摩擦・・・というように単語レベルでリスト化します。

解決系に関しては、バズったテクノロジーだったり、過去のプロモーション事例、美術館やアートイベントで得たインスピレーション、文学作品のプロットとか色々ですね。色々な手法をストックしてリスト化するわけです。

 

そしてこの2つのリストの組み合わせで、「これだ!」と思えるものを見つける。問題系と解決系のリストさえあれば、アイデアがでるのは確率論になるので、最後は時間と根気がものを言います。パズルに似ていますよね。 

ひらめきって、泥臭いんです。

 

──それ自体がコピーになりそう。

いちいち言葉のセンスがすごい

 

考えてみれば、机の前で懸命にあーでもないこーでもないと言いながら論文の内容を検討する事だってクリエイティブな行為だよね。

何かしら調べたいテーマ(問題系)があって、調査手法(解決系)を検討する。
まあ「これだ!」というコンセプトが見つかっても、すでに既往論文があったりロジックの甘さを教授に詰められたりする訳だけど。笑

 

──言われてみると確かにそうですね…!

ちなみに、あるアイデアを思いついたときに、それが本当に「いいアイデア」なのかどうかを見抜く方法はあるのでしょうか?
自分が「これだ!」と思えても、それが他の人々にとっても「いいアイデア」であるとは限らないですよね。

 

いいアイデアかどうかを見抜くためには、自分の目を養う必要があります。そのための方法は3つです。

いちばん簡単なのは、アイデアを初見の第三者に友達や家族に話して反応を観察すること。

2つめは、バズってるコンテンツを観たり、賞をとっている作品を普段からインプットし、なんの掛け算なのか分析してみることです。

3つめで、いちばん面倒臭いけど効くのはSNSでコンテンツ配信をして滑ったり、コンペをやって負けたりして悔しい思いをすることです。

そういうことを継続するしかないんじゃないでしょうか。

 

アイデアをみつけた瞬間の、ドーパミンは麻薬。

 

──お話を聞く限り、クリエイターの仕事はかなり大変なように見えるのですが、クリエイティブな仕事の良さってどんな時に感じるんでしょうか?

 

まず「このアイデアいいじゃん!」って発見する瞬間が最高だよね。さらに打ち合わせでアイデアの面白さが共感されると嬉しいし、それが世の中に出てバズり始めたときに、ひたすらエゴサするのも嬉しい。
大学入試の数学の問題で解法を思いついた時の感覚に、近いっちゃ近い。

アイデアの場合は、問題自体を自分で定めて、その解答を自分で作る。光が見えた瞬間は、ドーパミンが出るのが分かります

ドーパミンの良さを語っている

 

アイデアに対する世の中の反応が良かろうが悪かろうが、毎回きちんと学びがある。PDCAがどんどん回る感じが脳トレみたいになっています。

考える事が好きな東大生は、そういうの好きでしょ?

 

──今からエントリーシートを出そうかな。

 

すべての業界で、アイデアが生存戦略になる時代。

 

──でもそんなクリエイティブって、広告代理店の人だけが持っていればいいんですよね?

 

もちろん広告代理店の人は特に必要だけど、今はそれ以外の企業もクリエイティブな発想がないとやっていけない時代になってきている気がします。

古くは手織り機を作っていた会社が、自動車のエンジンを開発して今のトヨタになった。今は、通信会社のソフトバンクが投資事業をやったり、塾経営の会社の学研が老人ホームを経営したり、チャットアプリのLINEが友人間での決済サービスをやったり、ZOZOが宇宙開発に投資したりしていますよね。

そういう意外性のあるアイデアを起点にした事業拡大は、どんどん増えていくんじゃないかな。そういう大胆な取り組みは必ず話題になるし期待される。逆にそれが出来ない企業は縮小しているよね。

 

──アイデアを出せる企業が生き残っていく時代…。

 

低予算でもアイデアの面白さがあれば人を惹きつけられるし、勝手に拡散される。逆に、どの業界にいたとしても「アイデア」を考えられる価値は大きいとも言えるんじゃないかな。 

 

──我々一人ひとりがクリエイティブであることが、今からの社会を生き抜いていくために必要なわけですね。

 

東大生こそ、クリエイティブの才能がある説。

 

で、ここまで聞いてわかるかと思うのですが、東大生はクリエイティブの仕事にめちゃくちゃ向いています。 

クリエイティブは芸術性とかだけではなく、脳みその問題
思考習慣や思考体力がモノを言うので、毎日十数時間の勉強や思考をすることに慣れている東大生は絶対に有利です。抽象的に思考をして、ひたすら問題系と解決系のパズルを繰り返す仕事なので。

だから、「東大生だけどクリエイティブに向いている」ではなくて、「東大生だからクリエイティブに向いている」と僕は思います。

 

──最初は「東大生がクリエイティブなんてふざけているのか?」と思っていましたが、ふざけていたのは僕でした。

 

広告代理店の人以外にも、クリエイティブが必要な時代です。

なので仕事の種類に関わらず、「アイデア」を仕事にするという選択肢を自分の未来に入れてみるといいかもしれないですね。

 


小竹海広さんのTwitterはこちら→ @0dake

 

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苔

写真を撮るのが好きです。

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