「もっと自由に国を選んでいい」東大卒業生が語る海外大学院という選択




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こんにちは。

びっくりするほどフランス語が話せないのに、9月から1年フランス語圏に留学することになりました。生還を祈ってください。

ところで私は、皆さんお馴染みの「交換留学」を予定しているのですが、他にも留学の形があるってご存知ですか?

学位留学
海外の大学や大学院で、学士・修士・博士など学位の取得を目指して行う留学です。

オックスフォード、UCバークレー、MIT…世界の名だたる大学に飛び込むなんて天才にしか無理…と遠ざけてしまいがちですが、実は日本でも徐々に増えてきている留学形態なんです。

そこで今回は、実際に海外の大学院に留学中・学位を取得したお二人に、その経緯や現地での生活について伺ってきました。

経験者だから語れる学位留学の世界を覗いてみましょう!


───本日はよろしくお願いします!まずは自己紹介からお願いします。

  1. お名前:向山 直佑(むこやま なおすけ)さん
  2. 所属:University of Oxford, Department of Politics and International Relations, DPhil (Ph.D.)課程2年
  3. 備考:2015年東京大学法学部卒業。在学中にトロント大学に交換留学。2017年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了後、渡英。
  1. お名前:渡辺 悠樹(わたなべ はるき)さん
  2. 所属:東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 准教授
  3. 備考:2010年東京大学理学部物理学科卒業。そのまま修士へ進学するも、2011年8月に渡米しUniversity of California, Berkeley, Department of PhysicsのPh.D課程との二重在籍に。2015年UC BerkeleyからPh.Dを取得後、MITでのポスドクを経て2016年に帰国。

*DPhil (Ph.D.):Doctor of Philosophyの略。主に英語圏で授与されている博士水準の学位のこと。

───なんかもう既にすごい。では早速、海外の大学院に進学しようと思ったきっかけと経緯について教えてください。

 

渡辺さん:僕は学内の留学説明会に参加したのがきっかけです。

ちょうど進路に悩み始めたとき、当時お付き合いしていた彼女に「こんなポスター貼ってあったよ、行ってみたら?」と教えてもらって。

───進路に悩んでいたというのは?

 

渡辺さん:修士課程に進学してから、同じ環境に留まることに疑問を感じるようになって。そのまま博士課程に進むと、少なくとも9年(学部4年・修士2年・博士3年)は同じ大学にいることになるわけじゃないですか。小学校6年、中高3年ずつだったのが「9年もか」って。

小中高と比べると確かにかなり長く感じますね。

渡辺さん:あと、僕はいつもグループの中の落ちこぼれの方から始まるような人だったので、周りの人が自分より圧倒的にできるっていう環境が自分には合ってるなと思って。

そういう意味で、今とは違う環境に出たいと考えました。それで説明会に行ってみたら、面白そうだったので行きたいなと。

向山さん:僕の場合、研究者として広い世界で勝負してみたいというのが一番大きな理由でした。

───広い世界?

 

向山さん:僕が専攻している政治学の分野だと、国内の論文は日本語で書かれたものがほとんどです。
でも、僕は英語で論文を書いて、もっと広い研究者の世界で勝負してみたい。

もちろん、日本の大学院出て英語で論文を書く人もある程度はいるんですけど、それよりも海外で学位とった方が自分のやりたいことがやりやすいだろうなと思って、海外に行くこと自体は昔から考えてました。

 

───個人的に日本で博士をとるより海外でとる方がはるかに難しそうだなと思ってしまうのですが、そこに対するハードルはなかったんですか?

渡辺さん:うーん。確かに、単に学位を取得するのが目的なら海外の方が大変かもしれないですけど、研究者としてのその後の生き残りを考えれば、実は海外に行った方が簡単かもしれない

向山さん:特に政治学の場合、日本でPh.D.を取ったら日本の大学でしか働けないことが多いんですよね。でも海外、とくに英語圏でPh.D.を取ると、世界規模に市場が広がる

そういうキャリア戦略も海外大学院に進んだ1つの理由ですね。

渡辺さん:実際僕もポスドクまでアメリカでやった結果、職探しの際に海外の大学まで現実的な候補になりました。
国外まで可能性が広がるっていうのは大きなメリットだと思いますね。

ただ僕の場合、妻が日本で働いていたので、いつかは日本に帰らなきゃいけないっていうのがありましたけど。

───(恋愛事情が気になりすぎる…)ご家族はずっと日本にいらっしゃったんですか?

 

渡辺さん:そうです。別居婚が2年以上ありました。

でも、離れてる間お互い自分の好きなことに集中できたので、逆によかったんじゃないかなと思います。

結婚してないと、早くパートナー探さなきゃとか焦りがありますけど、もう結婚してるから自分のやりたいことに打ち込める

なんだか笑顔が増えていらっしゃる先生

向山さん:何歳くらいで結婚されたんですか?

渡辺さん:留学して3年くらいたった頃だったので、26歳くらいですね。さっき話した留学説明会を教えてくれた彼女とそのまま結婚しました。大学1年の頃から付き合ってたんですけど。

向山さん:もう2人の馴れ初めを記事にした方がいいんじゃないですか?

留学先を選ぶポイントは?英米大学院の違い

───それぞれ留学先の大学を選ばれた理由を教えてください。

 

渡辺さん(米・物理学):僕の場合、留学を決意したのが遅く準備がギリギリだったので、そもそも選択肢があまりなくて。アメリカの大学に絞って出願し、最終的にはオファーをもらった大学を実際に訪問して決めました。

───どうしてアメリカに絞ったんですか?

 

渡辺さん:アメリカの大学の場合、合格した時点で授業料も生活費も保障されるんです。日本の奨学金は取れていなかったので、アメリカしかないなと。

 

───なるほど。ということはイギリスの大学だとそうはいかないんですね?

 

向山さん(英・政治学):そうですね。イギリス留学では費用が一番のネックです。
授業料も生活費も保障がないので、奨学金を集めに奔走する必要があるんです。

自分の場合は、留学する前の年度始めから応募をはじめて、2つの財団から奨学金をいただけることになりました。それでも1、2年目の生活費分が足りなくて。

だから留学先の大学に生活費分だけ出してくれるように要求して、「出してくれなかったら他の大学に行く」と伝えて乗り切りました。

ものすごい交渉をさらっと流す向山さん

向山さん:生活費だけでもかなりの金額が必要ですからね。この3つの奨学金のどれが欠けていても、イギリスには行ってなかったと思います。

 

───イギリスとアメリカでそんな違いがあったんですね。そのほかにも違いってありますか?

 

向山さん:学業の面でいうと、コースワークがあるかどうかは大きな差ですね。

コースワーク
一定の教育目標や特定の学修課題を達成するために、複数の分野や科目などを横断した体系的なカリキュラムを履修すること。
(出典:コトバンク|コースワークhttps://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF-1611871 2019/7/15 12:01閲覧)

アメリカの大学は1、2年目にかなりハードなコースワークがあるんです。もちろん、それによって能力が養われる面はあると思うんですけど、僕の場合は進学時点で研究関心がある程度固まっていると思っていたので、コースワークをまた2年やらないといけないのが正直少し億劫で

コースワークをしたところで勉強って多分どこまでいっても足りないって思うんだろうし、だったら最初から研究に集中したいなと思ってイギリスにしました。

僕の場合は研究の方向性の違いも理由の一つになりましたね。

アメリカはデータとか実験をベースにしたアプローチが主要になっているんですが、僕はちょっと違っていて。たぶんアメリカでメジャーな方向性の研究をしてる人の方が有利だろうなって思いました。

あとは、なんとなくイギリスに住みたかった

 

───緩めの理由もあってなんか嬉しいです。アメリカはコースワークが重いとのことでしたが、実際どうでしたか?

 

渡辺さん:確かにコースワークには結構時間を割きましたね。これに加えて、僕は現地でteachingをすることで授業料や生活費を支給してもらっていたのですが、このteachingもとても忙しかったですね。

───現地の学生に教えるということですか?

 

渡辺さん:そうですね。クラスを持たされて、英語で授業してました。

 

───英語で。

 

渡辺さん:英語で。大学からは週20時間をteachingに割くようにと指示されていました。慣れないから準備にも時間を取られますし、実際それくらい時間を割いていたと思います。僕の場合、これらに加えて東大の修士号のための修論を書くというミッションもありました。

忙しさの想像が追いつかなくなってきた

───二重在籍がここで効いてくるんですね。

 

渡辺さん:自分がコースワークしてる間にも日本の同期は研究を進めてるんだろうなと思うと、研究にも力を入れたくなっちゃって
本当に寝る暇もないような生活でしたね。もう二度とやれない。

当時を思い出し、思わず頭をおさえる先生

向山さん:それ聞くと、なんか申し訳ない気持ちになりますけど、オックスフォードはかなり自由時間が多くて

teachingも義務ではないので、就職を見据えてやっておくかという程度ですね。授業も1年目しかなくて後はどこにいてもいいので、2年目からは自国に帰っちゃうっていう人も結構います。

───帰る!?!?!? そんな手もあるんですか!!

 

向山さん:本当に自由なんです笑

イギリスは確かに奨学金のハードルが高いんですけど、それを乗り越えたら自分の研究に没頭できるという感じですね。

現地でも日本でもアピールを欠かさない

───現地での生活はどうでしたか?

 

向山さん(英・政治学):生活が軌道に乗るまでが大変でしたね。一旦軌道に乗ったら大丈夫なんですけど、最初の一歩が大変。
研究面でもこいつ良い研究してるって気づいてもらうための一歩が大事ですし。

 

───研究面での一歩というと、具体的にはどういう行動になるんでしょう?

 

渡辺さん(米・物理学):議論の場での発言とかセミナーでの発表とかですかね。

最初は本当に0からのスタートなので、まだ英語が下手なただのアジア人ってところから始めて、現地の先生と信頼関係を築いて、この学生はできる学生だって認めてもらって…。卒業するときには推薦状を書いてもらわなくちゃいけない。

向山さん:信用を少しずつ積み重ねていかないといけないんですよね。
最初は周りほど発言ができないから、書いたもので評価してもらおうとか。そうやって、ちょっとずつアピールしていく。

渡辺さん:そういう意味で近道がないというか。結局、研究能力での勝負になってくるんだと思います。

向山さん:でも、そういう新しい生活を築く経験をすると、「最初は大変だけど、一旦軌道に乗ったらあとは大丈夫だ」って学習していくんです。新しいところに行くハードルはどんどん下がっていきますね

 

───そういう世界に飛び込むのに不安を感じることはなかったんですか?

 

向山さん:それは普通にありましたよ。出国の前日も、ホテルの天井を眺めながら「行きたくないな、やめようかな」とか考えてました

向山さん:留学先での生活も、その後の生活もどうなるか分からない不安定な状況に置かれるわけなので。

渡辺さん:僕は特に、日本に所属機関がないっていう状況がすごく怖かったですね。今までは学校という居場所が日本にあったのに、それがなくなって。家族以外に帰る場所がなくなる。
根無し草というか。

向山さん:向こうが本拠地になってしまうと、もう日本が非日常なんですよね。日本にいても半分観光客気分というか。

向山さん:そう考えると、日本との関係を繋げておくのも大事かなと思います。もし帰ってくるなら、そのネットワークが生きてくるだろうし。

今でも日本の指導教員の方に研究の相談もしますし、日本の学会やセミナーも積極的に参加します。日本での就職も選択肢にありますし、どこかのタイミングで日本には帰ってきたいと思っているので。

渡辺さん:自分という人間がいるんだってことをいかに海外からアピールするかが大事なんです。

僕も留学中に日本で何回セミナーに参加したかわからないです。

───人間関係をどちらも維持するなんて、かなり大変そうですね……。

 

向山さん:でも逆に、居場所が2つあるのはいい強みになると思うんですよね。
仮に向こうの指導教員と仲が悪くなっても、こっちに支援してくれる人がいる。向こうだけじゃないっていうのは周りと比べたときに強みになるんです。

自分にしかできないことをやりたい

───ここまでお聞きして、やはり研究者の道って非常に厳しいなと思ったんですが、それでもこの道を進もうと思えるモチベーションってどこにあるんでしょうか?

 

渡辺さん(米・物理学):僕が常に意識してきたのは「自分にしかできないことをやりたい」という気持ちですね。

渡辺さん:アカデミアの研究って何をやるのか、何を成し遂げるのかに対する自由度がかなり高いですよね。自分が重要だと思う問題に取り組んで、成果が出ればそれが論文として残る。 そうやって積み上がっていくのが学問なので。

自分のやっていることにそういう意味を見出せるのが研究者という職業の魅力だなって思いますね。

向山さん(英・政治学):もちろん研究が自分の人生の全てではないですけど、仕事しないと生きていけないってときに、僕も自分にしかできないことをしたいし、誰も考えていないようなことをしたい

それは別に小説家でも良いし、ビジネスをおこすとかでもありなんだろうけど、自分が一番情熱を持てるのは研究によって新しいものを作ることだった。

向山さん:周りが安定してるとか給料上がっていくなかで、研究をやり続けられるのはそういうパッションがあるからかなって思います。

あと、自由度が高いのもいいですね。自由すぎて平日の昼間にも私服で出歩いたりするわけですけど、これって世間的には相当奇異に映ると思うんですよね。
日中一人で公園をうろついている私服の人は、だいたい不審者か研究者です

公園に行ったら要チェックですね

渡辺さん:確かに、昼間にTシャツとジーパンで電車に乗りたくないって先生はいますね。

研究者って基本的にどこにいてもいい。逆にそのフットワークでいろんな研究をしていくって感じですね。

自分にしかできないことをやるってことは、どうやってやったらできるのかも分からないってことなんですよね。
何をしたらその問題を解けるのかを自分で考えて、自分で行動していかないといけない

その意味で自由度の高い職業ってことになるんだと思います。

向山さん:誰もやってないことをしたい、新しいものを作り出したいというメンタリティと自由が好きというメンタリティは結構近いんでしょうね。

もっと自由に国を選んでいい

───最後に海外留学を考える東大生に向けてメッセージをお願いします。

渡辺さん(米・物理学):世界にはこんなにたくさん国があって、当たり前ですけど日本に生まれたからって日本にいなくちゃいけないわけじゃないんですよね。
今日は洋食、明日は中華みたいな感じで、もっと自由に、勉強する国、就職する国って選んでいっても良いはず

渡辺さん:別に研究者になりたいとかじゃなくても、若いときの何年間かを海外で過ごすっていうのも全然いい。

僕は留学に行って、もし日本でうまくいかなかったら海外に行けばいいんだって考えられるようになりました。
今から振り返るとそういう考えを得られた貴重な体験だったなと思います。

向山さん(英・政治学):確かに、留学に行くとオプションが広がりますよね。

海外大学院への進学っていうのも1つのオプションなんです。
就職とか日本の博士とかいろんな選択肢がある中で、同じくらいの大きさのオプションとして海外留学がある

ごく限られた人しか行けないわけでもないし、逆に留学しないと人生ダメとか言うわけでもない。

向山さん:もう少しカジュアルに、数あるうちの1つのオプションとして海外留学っていう選択肢があってもいいんじゃないかなと思います。

渡辺さん:そりゃやっぱり大変な面もありますよ。みんなに向いてるわけではないし、みんなが成功するわけではないし、やるからには大変だし。

でも、そこは覚悟を持って、一旗あげようって気持ちで行ったら楽しいんじゃないかな。

向山さん:「周りが行ってるから」とか「研究者になるには行かなきゃいけないから」とかじゃなくて、あくまで自分の選択として選ぶのが大事ですね。


学年が進むにつれ進路に思い悩むことも増えるものですが、今高く見えているハードルも、ゴールによっては、夢に近づく魅力的なステップなのかもしれません。

あなたのゴールはどこですか?一度見直してみたくなりますね。

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詳細:イベント詳細ホームページ
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