【日本の大学最古の学術標本を展示している!?】東大博物館の謎に迫る!!

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展示の解説

 

地学・生物資料ーホロタイプとは

 

久保さん:ここからは基本的に時系列に沿って、標本が並べられています。

最初は宇宙、星の成り立ちということで、隕石から始まっています

ただの石のように見えるが、その中には恒久の歴史が詰まっている。

丁重に収められた石片。

筆者:時系列、というと宇宙規模の歴史になるんですね・・・。

スケールが大きすぎますね・・・(笑)。

久保さん:その次は生物に移っていきます。

生物標本にはホロタイプと呼ばれる、生物種の基準となる標本があるんですが・・・。

筆者:ホロタイプ?

久保さん:はい。新種を報告するときは、その特質を示す上で根拠となる標本を用意することが必要になるんですが、その標本がホロタイプです。

仮に、論文の対象としている生物と、同種か別種か判断が難しいような個体が見つかった場合は、ホロタイプと比較して検討します。

この博物館にもたくさんのホロタイプが保管されています。

筆者:ホロタイプがなくなってしまうと、生物分類ができなくなってしまうんですね。それは絶対に失えませんね。

一見、生物には見えない。

骨。愛らしい。

 

人類・考古資料ー複製も展示品に

 

小高さん:ここからは人類標本、そして考古資料に移っていきます。

ここに展示されている人骨には本物もありますが、複製のものもあります。

筆者:そもそも博物館ではなぜ複製の標本まで展示されることがあるんでしょうか。

本物でなくとも、展示する価値はあるのでしょうか。

突然現れた人骨に、ぎょっとしてしまう。

小高さん:あくまで一般論ですが希少な標本は、複製の場合でもやはり重要だからです。

例えば、この本物の骨(上写真)とこちらの骨の複製(貴重なため写真撮れず)を比べると、一見本物の方が価値があるように感じますよね。しかし実は、複製の方は本物と比べてぐんと古いもので、これほどの古い時代の化石はなかなか見つからないため、たとえ複製であっても決して価値が低いわけではないんです。

加えてそもそも、元の本物の標本がなくなっていたり、政治的な事情などでさらなる複製作成が事実上不可能になっている場合もあります。こういう本物を手にすることがほとんどできなくなってしまった標本は、複製でも学術的な重要度はかなり高いですね。そうした標本は貸し出すこともあります。

筆者:感覚的には複製だと価値が低いと感じてしまいますが、研究標本としては重要なんですね。

小高さん:手に入りにくいといえば、古代メソポタミアの資料なんかも価値が高いです。

現在の政治情勢では、現地を訪れての遺跡発掘には限界がありますし、国を越えて文化財を持ち帰ることを禁止するという法律の制限もあります。

東大の場合は何しろ歴史が古いので、かつての制度下で現地国から資料をいただけたんです。

アジアにおいては東大博物館が所蔵する資料の数、種類は絶対的に多いですし、これからもそうでしょう。

こちらは日本の縄文土器。

奥に写るのは子供のネアンデルタール人骨。こちらも複製。

弥生土器。可愛い。

 

剥製の展示

 

突然現れる大きな剥製たちに、またしてもぎょっとしてしまう。

大きな骨たちが整列する。

次にくるのは家畜の剥製、巨大動物の骨が並べられるブース。

これらの剥製や骨を作るための動物の解体は、実際に東大で行われているそうだ。

 

年代を測る装置ー専門の垣根を超えた繋がり

 

動物たちが配置された部屋を抜け、次に現れるのは、巨大な機械だ。

周りでは何人かの人がパソコンに向かって作業にあたっている。

筆者:この機械は一体何なんですか?

小高さん:はい、これは年代を測るための装置ですね。これを使って標本の年代を特定します。

筆者:こんなに大きい機械で測るんですね! 

なかなかここまでの設備が揃っているところはなさそうですね・・・。

小高さん:そうなんです。なかなかないです。希少なため、外部から使用を申し込まれるケースも多いです。

僕らも測定自体に関わる専門ではないし、管轄も違うので、測ってもらうときにしっかりと申し込みをしないといけないのですが、何しろ同じ博物館内に機械があるので、直に相談できて助かります。

筆者:本来は専門が異なる方が一緒の場所で働いておられるんですね。

小高さん:はい。僕は考古学が専門の文系ですしね。この機械がどのような仕組みで動いているのか、ほとんど知りません(笑)。

でも、確かに、専門の異なる人たちが集まっているということは、大学の各学部にはない、東大博物館の特色だと思いますね。

久保さん:そもそも博物館には展示それ自体を研究する方や、このように測定される方、また僕らみたいな標本の研究担当もいて、その役割も多様なんですね。

そして、先生みたいに考古学をやられる文系の方や、僕のような理系の人間もいる。

「資料に関わる」ということを唯一の共通軸にして色々なジャンルの方々が集まる環境は、学問的に有意義なものだと思います。

筆者:ここではまさに学問的な垣根を超えて、研究が進められているということですね。

久保さん:はい。そして共通項となる「資料に関わる」ということは実はどの学術分野でも言えることなんです。

というのも、大学で行われるいわゆる研究というのは、高校までの学習と違って、何らかの新たな発見をしないといけませんよね。

そのためにはやはり、「資料」に当たることが必要になってきます。

本それ自体が「資料」である文学研究を除いて、ただ本だけ読んでいても、その人個人が知識を得られるだけで、人類全体の知の体系としての発展はない。過去の研究のマナーを理解しながらも、やはり、真実に近づくためには実物の研究が必要なんです

筆者:その通りですね。そう考えると、その資料の倉庫としての東大博物館の重要性が、より一層深く理解できますね。

 

 

 

次ページ:博物館の今後のあり方について、お二人に伺います。

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ABOUTこの記事をかいた人

チロルです。 小学校の時に、少年が全国に散らばったチロルチョコを集めに旅に出る、という漫画を描きました。

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