「地方創生をやめてくれて良かった」!?【東大法学部教授を推薦生が直撃】

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東大と地方自治

筆者:私なんかは日常的な会話で、ああこの人東京の目線だなって思うんですけど、先生が東大生を見ていて思うことってありますか。

先生:僕は大都市圏育ちですから、東京的な暮らしをしてる側のがわかりやすいですね。ただマクロな視点からすると、東大は全国の大学ではなくて、首都圏の大学になって来ています

 官僚自体もそうなって来ていて、国立大学の機能としてこれで良いのかと言う問題になります。若者が全国的に交流する仕組みをどのように作るかが国立大学の使命で、その機能を失ったら、それこそ社会的な大学の存在意義が疑われる。でも地方圏から大学に来て下宿すると金かかるし、大学の学費も高いです。

筆者:ほんとにお金かかります。

先生:塾とか色々考えたら、大都市圏の高校生が有利なのは否定できない。かといって、地方圏の高校生に入試で下駄を履かせるわけにもいかない、優遇すればいいという話でもありません。

 

東大生の家族の所在地の31.4%が東京都、67.8%が関東圏となっている。(引用:2016年東京大学学生生活実態調査)

 

先生:同じように、東大は女子3割の壁を突破できていません。テストに関しては一切のジェンダーバイアスがないはずだと考えていますが、結果がそうなってないのです。これはマクロな視点からすると、東大は男子のための大学になってしまっているということですよね?つまり国立大の使命である「若者の社会的な交流」を阻んでいることになる。女子2割の現状はおかしいと思いませんか?

筆者:ちょっと気持ちが悪いです。

編集部:理一は1割ですしね。

 

東大の女子の比率は未だ2割弱。引用:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/students/edu-data/e08_02_01.html

 

先生:アファマティブなアドミッション・ポリシーからいうと地方の、女子、あと県立非中高一貫校の学生がもう少し増えないとならない、というのはマクロ的な視点からすれば、あると思います。

筆者:でも、それで受かったんだとか言われると余計なお世話だわって思っちゃいます(笑)

先生:ミクロの視点からしたら、当事者からしたら、余計なお世話だろうけれども(笑)、ミクロとマクロの話を混同しても仕方ありません。

 若者とか、社会全体が「交流する仕組み」でなければならないのは、自治でも同じことです。それを支える国政でなければならないし、国も自治体も、大都市も地方圏も、お互いの言っていることを理解できないといけない。

 東京一極集中がいけないからといって、地方圏の若者を地方圏に囲い込む政策を進めれば、大都市圏と地方圏でどんどん別の人たちになってしまいます。

筆者:地方出身者が地方大学に止まるようにするとか、ありますよね。

筆者:そうです。政策を立案する官僚も、しっかりとしないといけません。

 

地方自治を変えてやる!と思っているそこの東大生!

編集部:もし東大生が、地方自治を変えたいと思ったら、どこのポジションに行くのがベストだと思いますか。

先生:真面目な行政職員になることでしょう。そして幅広く人の話をしっかりと聞くことです。東大生というのは、これまでの生育環境から言っても、人のことを理解する能力とスタンスにかけがちなわけだから、それは非常に意識的に注意しないといけない。

 世間では若者に明るい未来を見せたがるかもしれないですが、それはだめだと思います。そういうのは政治や民間やマスコミの仕事であって、僕の仕事ではありません。僕は、浮かれてないでまじめにやってくれ、と言いたいです。要求する側(自治体)も聞く側(官僚)も、ちゃんとしないとならないのです。

 少子化、介護難民・独居老人の増加、インフラの老朽化が進む東京も、オリンピックなどをやっている場合じゃないのです。オリンピックはやれば楽しいけど、マクロ的に言えば、そんなことやっている暇はない。他にやらなければいけないこといっぱいあるでしょっていう

 

ここで少し、進路相談…

筆者:個人的な話になるんですが、東京に学びにいく学生は多いけど帰ってそれを活かす人が少ないんじゃないか、それをどうにかするためにも私はここで学んで地元に還元するんだ!って言って東大に入ったんですよ。

でも実際には地元の人に、「え、戻ってくるの?」みたいな反応もされる。周りには官僚になる人も、市役所で働くひともたくさんいて、私は何をすべきかなって悩んでいます。

先生:まあ東大まで行って市役所に来られても、扱いにくくて迷惑なこともあるでしょう(笑)。広い意味で都会人が持っていない視点を都会で活かせば、長野に限る必要もないのではないでしょうか。地元への還元といっても、民間でできることとできないこと、行政でできることとできないこと、それぞれあります。

 行政に勤めるならば、官僚になってから地方自治体に帰るのは一つの手です。国の手の内を知ることは重要です。ただ、地域活性化をしたいのならば、民間でやるしかない。

筆者:あと私は、どこかの地域に、例えば松本に負けてもらって長野を勝たせたいわけではないんです。どの地域も均衡ある発展をさせたい。

先生県庁はそういう視点のことが多いです。

筆者:それを日本全国土って広げたら、になるんですか。

先生:そのように思って国政を担う人もいます。しかし、成功している地域だけもてはやして、便乗するとか、国際舞台や世界で活躍することだけを考える人もいます。

筆者:逆に、地域の問題を東京で解決できるのか、という疑問もあるのですが。

先生:分配の仕組みは国政がないとできません。ただ、国政の側の人間だけでやるのは難しい。自治体側にも人が必要です。それから、一人で地域活性化を目指すのであれば、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのように、民間でイノベーションするしかありません。

編集部:起業して寄付ってことですか…

 

がっぽり稼いでばーんと寄付!なんて私には難しそうだ…

 

推薦入試について

筆者:また個人的な、推薦入試に関してなんですが、制度についてどう思われますか?

先生:一国民の意見として言えば、50年くらい経たないとわからない、と思います。もしかしたら後世で、「あそこから東大の崩壊は始まった」とか言われるかもしれないですし、言われないかもしれないです。人材選抜とか教育とかは、すぐに効果がわかるものではありませんから、そういうものです。

筆者:面接で何を見られてたのか、気になって仕方がないんですが、どうなんでしょう?

先生:何を見てるんですかね、僕も知りたいです(笑)。

 入学試験とか採用試験とか昇進とか、能力を見るとはなんなのかというのは、永遠の謎です。そもそも能力によって採否を決めるべきという能力主義の発想も、絶対の物差しではありません。仮に能力主義に立つとしても、何が能力なのか、本当に能力を測れているか、公平性を保てているかはわからないということがつきまといます。面接でも筆記試験でも同じことです。

 

能力を測るって、なんだろう?

 

先生:とにかく推薦入試に関しては、皆さんが棺桶に入る頃にわかるだけです。

 

最後に…

筆者:最後に、先生の今後の夢というか、野望を教えてください。

先生:野望は特に何もありません

筆者:何もないんですか!?

先生:活躍せず、平凡な人生を生きて平凡に死ぬこと、です。それがいかに難しいことか、です。昔から「畳の上で死にたい」と言われてきたでしょう。「畳の上で死ぬ」というと、今では孤独死と勘違いされかねないですけれども、そういう意味ではなくて。

編集部:看取られながらっていうことですよね。

先生:平穏に、平凡に、生きて、死ぬと言うことが実は一番難しい。戦争や飢餓や災害や「無実の罪」で死にたいとは思わないでしょう。

筆者:思わないです。

先生:研究をしていくことが、平凡に我々自身が暮らしていける社会を作ることにつながれば一番です。いま研究しているのは住民の合意形成の話です。『縮減社会の合意形成』という本を第一法規から出しましたから、読んで見てください(笑)

 

確かに、平穏な社会で暮らしたい。

 

先生:急に平穏でない話をしましたが、地域の人々として平凡に生きて死ぬために、国政に余計なことをやらせないことも大事です。やる気のある真面目で良心的な人が、余計で有害な仕事をする、ということがあります。それをやめさせるのも、平穏な社会には必要だと思うのです。

 政策を批判してやめさせるというと、なにかネガティブに思う人も多いみたいですね。建設的でないとか、批判ばかりで提案がないとか。すぐそういう短絡的な話が出てきます。しかし、何もすべきでないこともあります。マイナスのことはしない方が良いのです。平穏を妨害するなと言っているだけです。

筆者:なるほど…

先生:UmeeTはもっと元気な人に取材している気がしますが…(笑)。新聞とか、教科書会社とかでもよく揉めるのですよ、これでは元気が出ない、と。僕としては有害な元気など、出してもらいたくない。自治の現場は明るい話ばかりではないのですから

筆者:浮ついた精神論はやめて、現実をちゃんと見ろ、と。今日は授業中に見ていた先生とはまた違った先生を教えていただいた気がします。ありがとうございました。


 今回取材に伺って、金井先生の衝撃的な発言が多すぎて、ますます先生について知りたくなりました。そして推薦入試、やっぱり、まだまだ、わからない。

 山を越えたらまた次の山がある。現実を様々な視点からしっかりと見て、「東大の崩壊の始まり」なんて言わせないように学んでいきたいと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

長野出身。自然が好きです

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