【17世紀のオタクを研究】英文学×フェミニズム!東大卒研究者・北村紗衣先生を訪ねる

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良い市民、良い消費者、良い観客

編集部:少し話が変わりますが、先生は、研究者が社会において果たすべき役割はあると思いますか?

 

北村先生:私はあると思います。ただ、その役割っていうのは人によって違うんじゃないかな。

他の研究者の方だと、弟子を育てることに興味がある人が多い気がするんですが、私がやりたいのは「良い市民、良い消費者、良い観客」を育てることですね。

 

編集部:良い市民、良い消費者、良い観客?

 

北村先生:世の中の経済を回すためには、面白いコンテンツが必要ですよね。

そして、面白いコンテンツを広げていくためには、面白いクリエイターだけでなく、そのコンテンツを楽しめる人間が必要です。それが「良い市民、良い消費者、良い観客」なんですけど。

私はそういう、色んなコンテンツを色んなやり方で楽しめる人たちに尽くしていきたいし、そんな人を増やすことで社会に貢献したいです。

編集部:良い市民、良い消費者、良い観客は、それぞれどういった意味なんでしょうか。

 

北村先生:良い市民は政治的領域、良い消費者は経済的領域、そして良い観客は芸術的領域における、「コンテンツを賢く享受できる者」を意味しています。この3つって、必ずしも両立しないんですよ。

ある映画が、芸術的には優れているが、労働基準法に反して作られているとします。

ある人が「この映画を観に行かない」という選択をした場合、その人は良い消費者ではあるかもしれないが、良い観客ではないかもしれない。

こういった状況で決断を迫られた時に、色々な軸からコンテンツの価値を考えて、バランスの良い選択ができる人を増やしていきたいですね。

 

編集部:なるほど…。例えばどういったことを通して、「良い市民、良い消費者、良い観客」を育てようと思っていらっしゃるんですか?

 

北村先生:例えば私は今、「Wezzy」というメディアで、フェミニズムや英文学について連載をしているんですが、これは「良い観客」を育てることにつながると思っています。

北村先生の連載「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」より、ラインナップの一部

北村先生:普段みなさんが楽しく見ている映画や小説に対して、「こんな切り口もあるよ!」「実はプロットにこんな穴があるんだよ!」という話を提供することで、より多くの人が、より色々な視点からコンテンツを楽しめるようになったらいいですね。

あとは、大学の授業で、学生に英語のウィキペディアの記事を日本語に翻訳してもらう授業をしているんですが、これは「良い市民」の育成かな。

情報源となることが多いウィキペディアを掘り下げることで、情報の取捨選択の仕方が身につくんじゃないかと思っています。

誰が何で成功するかなんてわからない

編集部:最後に、研究者を目指している東大生へアドバイスをお願いします。

 

北村先生:研究者になるのは大変だとみんな言うと思いますが、自分の目の前にいくつかある選択肢を考えて、その中でもやっぱり研究がしたいと思ったらやった方がいいです。

誰が何で成功するかなんてわからないじゃないですか。普通に考えれば就職した方が楽かもしれないけど、あなたはそうじゃないかもしれない。私は多分死んじゃうし(笑)

あとは、あなたがやろうとしてる課題にかかる時間は、他の人がやろうとしている課題にかかる時間と違う」ということを覚えておいてほしいですね。

研究者の道を目指すと、「他の人はもう修論や博論を出しているのに、自分は全然進捗がない」と悩むこともあると思います。私も博論を書いていた時は、何度も思いました。

ですが、何をテーマにするかで研究にかかる時間は変わります。

全然進まないから自分は優れていないんだ、と思う必要はなくて。かかるであろう時間を冷静に見極めて、やるべきことをやってみたらどうでしょうか。

北村先生訳・イギリスのミリオンセラー「女になる方法」


最後に北村先生がおっしゃっていた、「やりたいならやった方がいい」「あなたがやろうとしてる課題にかかる時間は、他の人がやろうとしている課題にかかる時間と違う」という2つのアドバイス。

これ、研究者を目指す人以外にも当てはまるんじゃないでしょうか。

企業に就職する人、資格を取る人、研究者は目指さないけど大学院に行く人、大学に残る人。

皆それぞれ、やりたいことや抱えている課題があると思います。それにどう取り組むかは個人が考え決めることですが、

実際にやりたいと思った研究者の道を選び、周りよりも時間と手間のかかる観客研究に取り組み成果を出した北村先生のアドバイスは、一つの大きな指針になり得るのではないかと思いました。

 

最後になりますが、取材にご協力くださいました北村先生、本当にありがとうございました!

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ABOUTこの記事をかいた人

りほ

美しいものとお酒が好きです。

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