東大生が頭を大怪我して、ひらがなも読めなくなった話

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話せない、返せない、考えられない

杉山:それで1月中旬にリハビリ専門の病院に転院して、1日で3〜4科目リハビリをし始めて。

中でも「心理」っていうのが面白かった。頭の回転の速さ、マルチタスク、注意力とかを鍛える科目なんだけど。

編集部:おお、小学校受験とか、小学校低学年で習うような問題ですね。

 

杉山:むちゃくちゃもどかしかったね!

「バカにすんなよ!こんな簡単な問題できるに決まって………できんやん………」みたいな。

リハビリって、頑張れば頑張るほど成果が出るというわけではないのよね。お医者さんには、リハビリをひたすらやるのではなくて、映画を見たり漫画を見たり、色々な刺激を与えた方が、脳の機能が戻りやすいって何度も言われた。

 

編集部:ああ…。記憶喪失の人がピアノの音とか昔遊んだ場所とかが引き金になって全てを思い出すっていうの、よくドラマとかにありますよね。

 

杉山:そうそう。実際ひらがなを練習してた時も、この文字は練習してないのに、他の文字を練習したことでその文字も思い出すみたいなこともあった。

まあ実際は僕の場合ドラマみたいな展開はなくて、地道に戻していくしかなかったんだけどね。

手に力が入らないので筆圧がふにゃふにゃ

編集部:文字が読めなくなっても、リスニングというか、他の人が話している言葉は最初から理解できたんですか?

 

杉山:日本語としては聞き取れる。けど、頭の回転がクソ遅いので、難しいことを言われると認識に時間がかかってた。キャパオーバーというか、「もう無理!!!」ってなるんだよね。

そういうことって今までの自分の人生にはなくて。むしろ頭を働かせてうまく喋る、言語を使う、っていうのは自分の自尊心に関わる根幹だったんだよ。漫才も、編集も、ファシリテーションも全部その力でやってきたわけだから。

だから文字は読めないし、人の言うことは理解できないし、っていう状態になるっていうのは、アイデンティティの喪失と一緒なのよ。つらかった。

入院中の杉山さんの日記

編集部:それって、ファシリテーター・編集者としての仕事にも影響しましたよね…?

 

杉山:うん。3月はじめに退院して、その前から仕事は少しずつ再開してたんだけど、

仕事全体において、馬力が足りないなっていうのは最近までずっと思ってた。

でも、ファシリテーション講座の本番とかってお客さんが来てくれてるわけだから、失敗できない。そういう、「頭が働かなかろうがなんとかしなきゃけない本番」の場数を踏んできたことで、どんどん頭が戻ってきた感じはする。

 

編集部:プレッシャーの中で回復することもあるんですね…。

怪我した分絶対に何かを得る。ドケチなので

編集部:逆に、怪我したことで得たものって何かありますか?

 

杉山:丸くなりましたね。

怪我するまでは、根拠のない「まあなんかいけるんじゃね?」みたいな自信があったんだよね。もちろんそれは良いことでもあるんだけど、きちんと勉強すべきところをおろそかにしてたのかもな、と思って。

杉山:あとは、頭をガンガン回転させて物事に対処したり、上手に話したり、っていうことが苦手な人の気持ちがリアルに分かった。自分がその究極みたいな状態になったわけだから。

自信がない人にどう寄り添えばいいのか、アドバイスすればいいのか、っていうのが少し見えた気がしますね。

 

編集部:理解するだけでなくて、共感できるようになったんですね。

個の悲しみがあるから、別の人の悲しみに対しても、受け止めて、もしかしたら何かを差し出すことができる気がしています。

心の調子を崩してしまった友達、恋人の死に苦しむ友達。
大なり小なり、人はみんな「固有の悲しみ」を背負っていて、それは僕のものとは違うから、できることは少ない。

でも、もしかしたらと言葉を探す。
そのときに寄り添おうと思う感情と、探し出せる言葉の質が、怪我によって得たものだと思います。

(杉山さんのブログより引用

杉山:でもまだ、「怪我したことで得られたものもあった!良い経験だった!」って心の底から信じられてるわけじゃないんだよね。

こんなバカみたいな怪我のせいで、失ったものばかりだった。

仕事も旅行も忘年会も新年会も全部なくなった。退院してからも全然元々の力が発揮できなくて、万全だと言えるまでは、本当に長く感じた。

でも今は信じられなくても、これから「怪我したことで得られたもの」を作っていけばいいじゃん、って思ってる。「せっかくこんな大ごとになったんだし、何か活かせるだろ!」っていう。ドケチなので。

ママチャリだけど、再発防止のためヘルメットを被ることにしているそうです

編集部:事故の原因になったドケチが最後にも出てくる。というか、大怪我してもドケチ精神は忘れてないんですね。

 

杉山:忘れてないね!根幹の性格みたいなものは変わってないと思う。

大怪我についてブログを書いているのも、この経験は風化させるのではなく、振り返って思い出すことで、ようやく何かを得られるんじゃないか?と思ってやってるんですよ。「辛かったなあ」だけで終わらせたくない。

 

編集部:例えばどんな気づきを得ようとしてるんですか?

 

杉山:こういう大きな挫折体験をどういう切り口・コンセプトで発信したらみんな見てくれるのかな?っていうのが分かればいいな、と。

編集部:いやすごいですね。普通そんな大変な経験をコンテンツ化して、さらに読者の反応を分析しようなんて思わないですよ。

 

杉山:いろんな人に反応もらいたいから、ぜひ読んでもらいたいね。

 

編集部:事故前を100とすると、今はどれくらい回復したんでしょうか?

 

杉山:最近はもう完全に回復したと思えていて、怪我の経験で成長したのを足して100を超えた感じ!

 

編集部:すごい。

確かに、ひらがなが読めなかったとか人の言ってることが分からなかったとか、今の杉山さんを見てると想像つかないです。

 

杉山:9月15日には、「漫才vsマジック 〜異業種コラボライブ〜」ってのも企画していて。

一緒にM-1に挑戦する、僕とイギリス人アレックスとのコンビ「忍者研修」。
そしてニューヨークの路上でマジック武者修行してきた猛者で東大卒の五味悠介。

漫才とマジックという異業種が、技を闘わせ、技をコラボさせる。
そして僕の仕事であるファシリテーションを生かした、「お客さんが参加する場づくり」。
2つが見どころです。

このライブで、僕の完全復活をお見せします! 素敵な会場借りちゃったんで是非来てください!

 

編集部:どう見ても怪我人のバイタリティじゃない。安心しました!


明るく笑いながら話してくれる杉山さんですが、頼りにしていた言葉に見放されて、深く悩んでいた闘病生活の苦悩が伝わってきました。

自信や収入の源になっていた能力が消えてしまい、いつ完全に戻るか分からない状況。自分に降りかかったらと想像するだけでぞっとしますし、絶望から立ち上がる自信は私にはありません。

しかしそんな経験をして悲嘆にくれても、そのあとにできるだけ何かを搾り取り学びを得ようとする杉山さん。その姿を見て元気付けられたり、救われる人もいるのではないでしょうか。

私も、何か大きな失敗をしたり落ち込んだときは、この記事を読み返そうと思います。

 

・杉山さんのブログを読みたい方、支援したくなった方はこちらから!

「漫才vsマジック 〜異業種コラボライブ〜」の詳細はこちらからご覧ください!

ライブに意気込んでいる図

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ABOUTこの記事をかいた人

りほ

美女とイケメンとお酒が好きです。

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