【障害者のリアルに迫る】『わたしたち』が『共に生きる』ためには?

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見えない『障害』

身体的な特徴を伴う『障害』ならば、「ああ、この人は『障害者』なんだな」って分かりやすい。『障害者』として分かりやすいということは、ある意味で自分と切り離して考えることができるということなのかもしれません。自分とは事情が違うからこそ、相手の事情に心優しく配慮できる面がある。

では、今度はある意味共感したり想像したりしやすく、そして見えにくい『障害』について考えてみましょう。

『依存症』ってどう思いますか?

例えばギャンブル依存症で、明けても暮れても競馬や競艇、パチンコ三昧で、仕事や勉強がままならない状態になっている人。堕落してるどうしようもない………そんな風に思っているかもしれません。

ギャンブル依存症の当事者として2017年Aセメスターに講義してくださった田中紀子さんはこんなことを言っていました。

「私たちは決して仕事ができないわけでもないし、遊び人でもない。仕事もものすごくやって、それも夢中になっていた。夫は30代のころ年収1000万円を超えていた。私自身も弁護士事務所に勤めていたときに600万円くらいもらっていたんです。だから、普通のOLにしてみたら就職してそれなりに結構稼げているほうだったんです。そのぐらい社会人としてもちゃんとできる人たちだったのにも関わらず、ギャンブルが止められなかったんです。だから自分たちに起こっていることが不可解で不可解でしょうがなかったんです。なんでこれができないんだろう、自分でもすごく意志が弱いと自分を責めていた。」

「依存症の人たちの根底にあるものの中に多いのは、もともと虐待されていたとか、すごくしつけが厳しい家だったとか、ものすごく世間体を気にするような両親のもとに生まれ育ったとか、あるいは学生時代イジメにあったとか。そういう経験をした人たちがすごく多い。健康的に自分の感情を処理するっていう方法がわからないんです。………大人になってからもそのトラウマをずっと引きずっていたんだな、ってことが後になってわかった。依存症とつながってわかったんですけど、そういう悪感情を忘れられた、いつもいつも頭の中で漠然とかかえている嫌な感情とか嫌な思いが、これをやっているときだけはスッキリした、ということが強烈なインパクトをもって迎えられてしまうんです、依存症の人って。」

公益財団法人ギャンブル依存症を考える会

 

確かに始めたきっかけは自分の『意志』かもしれないけど………。

依存症は病気として公式に認められる『障害』の1つになっており、彼らを援助する人や自助グループが存在します。依存症者は、果たして本当に「意志が弱い」「自業自得だ」「堕落している」のでしょうか。

彼らが依存症の症状そのもの、そして自らの過去や性格について苦しんでいるということは事実です。しかし、彼らの行動によって害を被った人々がいるということもまた変えようのない事実です。ギャンブル依存症であれば窃盗や恐喝などの犯罪を犯しているケースもあり、また家族への影響も甚大です。そんな彼らのしてしまったことの責任は一体どうすれば良いのでしょうか?

 

何が能力で、何が意志で、何が病気なのか?『障害』とは何なのでしょうか?

 

あなたの中の生きづらさに

『障害』を抱えていることは、生きづらさにつながります。「障害者のリアルに迫る」ゼミでは、公式に名前のついた『障害』を抱え当事者の方々をお呼びして生きづらさについて語っていただきます。様々な生きづらさを聞くなかで、これは全く共感できないしありえないなと思うものもあれば、この気持ちはものすごく分かる、という感覚を得ることもきっとできると思います。 

精神疾患の一種とされる摂食障害やうつ病というのは、“よいこ病”だと言われています。親の言いつけちゃんと守る、クラスの中心になる、教師や医者といった援助職で活躍している………。周りからはとても良い評価を得ている人たちの中に、そういった『障害』で苦しんでいる人はとても多いと言われます。

上に挙げたような『障害』を、摂食障害当事者として2017年度Aセメスターで講義してくれた鶴田桃エさんは「自分自身と仲が悪くなって起こる病気」と表現していました。

「症状は、表面的なことであって、じゃあ本質的な問題は何かっていうと、まあ分かりやすい形でいうとですね、”このままの自分じゃいけない””このままの自分じゃ生きる価値がない””みんなもっと頑張ってるから、それに合わせて頑張って生きなくちゃいけない、もっと頑張らなくちゃいけない”そんなふうに自分を駆り立てて生きている、競争の中で生きているとか、勝ち負けの中で生きていて、人と比べっこばっかりしているとか、そんな中でこのままの自分じゃいけない、もっと頑張んなくちゃ、みたいな。」

摂食障害の自助・ピアサポートグループ NABA(ナバ)

 

名前のついた『障害』は持ってない、だけどどこかうまく言葉に出来ない生きづらさを抱えている人。あるいは名前のついた『障害』がないからこそ苦しんでいる人。そんな人も、いるのではないでしょうか。

もしかして、頑張りすぎてませんか?

このゼミは受講生に救いを提供するものでは決してありません。

しかし、どこかで抑圧してきた自分自身に気づき、自分の中の『障害』を見つけてあげることは、きっと悪いことではない。そして名前のついた『障害』と生きる人々の知恵を借りて、その生きづらさと少し向き合うことも出来るかもしれません。

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ABOUTこの記事をかいた人

「障害者のリアルに迫る」ゼミ

「障害者のリアルに迫る」ゼミは「『障害』というテーマをタブーなく語る場を作りたい」という思いから2013年より活動を始め、毎期全学ゼミナールや自主ゼミナールとして前期教養学部生向けにゼミを開講しています。ゼミには主任講師として野澤和弘氏(毎日新聞社論説員)、また毎回の授業にゲスト講師としてLGBTや依存症の方などを含む『障害』当事者の方々、支援者の方々をお呼びして、活発に議論をしております。2016年にはぶどう社より「障害者のリアル×東大生のリアル」が出版され、累計1万部を突破しました。 2018年Sセメスターでは自主ゼミナールとして木曜5限に開講します。

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