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【下町アフリカのルーツに迫る】アフリカのリズムに乗れ!ジェンベと町屋のコミュニティ

2018.06.20

東京の小さなアフリカ、第二弾―下町になぜこんなにアフリカ?

こんにちは、スイミーのゆうこです。

Little Africa in Tokyo連載では、現在アフリカ現代美術を研究している私が、「東京に息づくアフリカ」、東京の中の「小さなアフリカ」を紹介していきます。前回記事では、千代田線町屋駅にあるアフリカの布とお仕立ての「アフリカ屋」を紹介しました。

【下町アフリカ!】東京の「小さなアフリカ」から「布の世界史」が見えてきた
社会・文化
【下町アフリカ!】東京の「小さなアフリカ」から「布の世界史」が見えてきた
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スイミーのゆうこ
2018-05-08

下町の履物屋さんからアフリカの布屋さんへの転身。アフリカの布が持つアジアのルーツ…驚きの数々だった前回に引き続き、町屋駅近辺にあるもう一軒の「下町アフリカ」を紹介します。

Little Africa in Tokyo連載・第二弾となる今回は、アフリカの太鼓・ジェンベに関するお話。

併せて、「地元感」溢れる荒川区の住宅地に息づく「下町アフリカ」のルーツを探ります。なぜ下町に「小さなアフリカ」が根付いたのでしょう?

そこには、日本の下町のポテンシャルと奇跡の出会いの連続がありました。

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アフリカのリズムに乗れ!東京ジェンベファクトリー

「実はうちの娘と結婚した人がジェンベ屋さんをやってるの!」

アフリカ屋店主・佐和子さんからこうご紹介頂いて、次なる下町アフリカの門を叩きました。西アフリカの文化が繋いだご縁なのでしょうか。

第二の下町アフリカ。その名も「TDF:東京ジェンベファクトリー」

読んで字のごとく、ジェンベというアフリカの打楽器を取り扱うお店です。店主の加藤さんはロサンゼルスに滞在していた時ジェンベに出会い、日本でWeb通販サイトからジェンベショップを始められました。

日本でジェンベ仲間を集めながら、西東京に店舗を開店。お店を広報する過程で、アフリカ文化関係者との輪が広がり、アフリカ屋、そしてアフリカンダンサーである奥様と知り合われたそうです。現在は、アフリカ屋のすぐ近く、町屋に店舗を移され営業しています。

「僕がジェンベの店を東京で始めた頃には、アフリカ屋さんは東京のアフリカ界隈ではすでに有名だったんです。」とおっしゃる加藤さん。

まさに人が暮らす「下町」感の高い周辺の風景。

そんな加藤さんが扱うジェンベは、コートジボワール・マリ・ギニアといった西アフリカで使われている楽器で、このお店では楽器の販売はもちろん、ロープや皮の張替・修理といった製作に関することも行う、まさに「工房」なのです。

▲TDFWebページより。奥様の日光さんに学ぶダンスクラスも!

さらに、加藤さんを始め3人の方からジェンベを学べるレッスンクラス、奥様の日光さんにダンスを習うクラスも受講できます。楽器を選び、アフリカのリズムを奏で、それに合わせて踊る。文化体験をトータルサポートしてくれちゃう施設、それがTDFです。

ジェンベってこんな楽器!

さて、「ジェンベってどんな楽器?」って思った人も多いでしょう。ジェンベはこんな楽器です!

木彫りのボディにロープが張られている、日本の鼓(つづみ)にも似た楽器。

西洋楽器であるティンパニなどは、違う楽器であっても同じ音程がでるように調律したりするのですが、ジェンベは一個一個音域が違ったり、太鼓ごとに固有の雑音が混じってくるのが個性!音階や楽譜という概念を持った「曲」というよりは拍子の連続としての音楽を奏でる。そんなジェンベは、即興性も高く、踊りとの相性は抜群です。

▲現在はこんな風に、持ち運びに便利なケースもあります。ソフトケースで背負うタイプなんですね。

他の打楽器同様、側面のロープの張りのきつさで音程を調整します。このロープは、この工房では好きな色を選んで張っているそう。カラフルでかわいいですね。このロープの色や彫り込みの柄にも、西アフリカでは地域に伝わる意味があったらしいのですが、現在はあまりよく分からなくなっているとか…。

ジェンベはアフリカの伝統的な楽器という側面を持つ一方で、外国に広がったことで新たな文化を吸収し、変化を続ける楽器でもあります。

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変化する伝統、異文化との融合ー町屋オリジナルジェンベ?

西洋に広がったことで「音階」や「楽譜」の概念をジェンベにも取り入れよう、とする動きが近代以降現れました。一方で、ポップミュージックがアフリカンリズムを取り入れていった流れもあります。日本でも「ワールドミュージックブーム」が訪れ、全盛期の西武グループの総合文化施設だった六本木の「ウェーブ」にはワールドミュージックコーナーにCDがずらっと並んだと加藤さんたちは振り返ります。
ギニア出身のジェンベのレジェンド・ママディケイタ氏は楽譜や教則本を作成することでジェンベを他文化圏にも広めてきましたが、ワールドミュージックブームの流れにのり、90年代に初来日を果たしました。

また太鼓の皮に使う布も、アフリカ産ではなく現在は中国産が増えたそうです。西アフリカ産の繊維は比較的弱く、結果として音も繊細になってしまうという問題を抱えていました。そこで、伝統的にインドネシア産の布を利用することで、強い音色や大きい音量まで出せるようなった歴史があるとか。前回の生地のワックスの歴史を思い出しますね。

ちなみに、TDF製ジェンベのロープは日本産。しかも!お店がある町屋にある工場が生産する「登山ロープ」なんだとか!下町の工業力とアフリカの伝統がフュージョンした音楽が奏でられるかも…?

もちろん、大昔の繊細な音を復活させたい!というグループや、「雑音」などの特徴を維持したい!というグループもあります。外来の音楽との融合が進むものと、西アフリカらしさを守るもの、それぞれが活発になるとジャンル全体が盛り上がっていきますね。

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はじめまして! @balenoptereです。UmeeTのライターをやっています。よろしければ私の書いた記事を読んでいってください!
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