あるべき「イカ東」の新しい姿、とは~北欧翻訳家・柳澤はるかさんインタビュー~

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「東大生」レッテルを、斬る。

 

ー内向的でシャイな本作品の主人公、「マッティ」とご自身の相違点について今まで伺ってきましたが、東大生とマッティにも共通するところがあるとか…?

自分が何を研究してるのかについてとかは熱く語れるけれど、テーブルでたまたま一緒になった人たちとするたわいのない雑談が苦手、大勢での飲み会がうまく盛り上がらない、というのは割と東大生っぽいかなと思っていました。もしかしたらひとつのことを深くつきつめられる人が多いから、それでマッティと同様内向的な人が多いのかな、と。

 

ーなるほど。私はこの作品を読んでいて、例えば同じタイミングで外に出てきた隣人を意識してしまう「マッティ」と、世間の評価を気にしてエリートコースを選びがちな「東大生」に、外部からのの目を必要以上に意識してしまう点で似たものを感じたのですが…

 

そうですね…学生の時も、就職してからも、「なんでいちいち東大生って言われるんだろう」とは思いますよね。東大生だというだけで否定されて、いろんなコミュニティから排除されてしまう。就職の面接時にも「東大生だから挫折したことないんでしょ」と嫌味を言われたり、たくさんのおじさんたちに囲まれて延々と意地悪な質問をされたり。

 

別にずるして東大入ったわけでもないし、勉強が好きだからそれを追求して東大に入っただけなのに、なぜ悪く言われたり揶揄されたりしちゃうんだろう、っていうことを感じる機会はすごく多くて。絵が好き、スポーツが得意・・・・・・などあるなかで、私は勉強が好きだった。それぞれの個性を、もっとありのまま受け入れたらいいじゃん、って気持ちが強まったんですよ。

 

パーソナリティについても、明るく社交的な人がよいとされているけれど、暗くてもじもじしている、一人でいるのが好き、それも別にいいじゃないですか、という。優劣じゃないし、そういうヒトだけに見える世界があるんだからそれでいいよね、っていう。それぞれでちゃんと多様なものとして共存したいんです。

 

今でも「東大」のレッテルで嫌な思いをすることはありますか?

 

そうですね…。心無い言葉を投げられることはいまだにあるし、地味にいちいち傷ついたりもします。私って誰からも理解されないのではないか?って。

 

でもそれはそれで、そういう役割を背負ったんだなって思うようになりました。マイノリティですとか、優劣で悪いような烙印を押されている側に回って、彼らの気持ちをライターとして代弁しよう、と。

同じ東大生でも、たとえば官僚とかになっていたら、その世界では東大生という属性が多数派だから、同じような悩みは抱えなかったかもしれない。でも「好き」が高じて新卒でも好きな作品を扱うエンタメ系の中小企業に入った私は、たまたまマイノリティの働き方、生き方を選んでしまった。マイノリティを選ぼうとしたわけではないけれど、就職する時には会社の規模、だとか職業威信、だとかいう、一般的に気にするべきだとされる判断軸が抜け落ちていて、好きなものに突き進む生き方を貫いてしまったのだから、どうしようもない。

 

ー好きなものへの愛をそこまで貫くとは…!就職する時、自らのやりたいことと「東大生なんだから」という世間の目との間で葛藤する東大生もきっと多い中で!

 

え?東大生でも葛藤するんですか?

 

ーしますよ!!!(いい意味での東大生としての自信で満ち溢れている…なんなんだこの自信!)

 

そうなのね…(笑)好きなものを持っている人は多いはずなのに、仕事にはしない人、確かに多いかも。正解はないにせよ、やってみたい気持ちがあるのに、「せっかく東大に入ったのに」とあきらめてしまうのはは勿体ないと思うけれど…

「せっかく東大に入ったのに」、のトウダイは、有名企業への就職で有利に働く肩書としてのトウダイじゃないですか。

でも、例えば私の視点からすれば、東大が意味するものはそれではなくて、好きなことを深く勉強できる力があるとか、興味があるものに対して深く掘り下げられるだとか、割と一人で淡々と作業できるとか、そういう性質がたまたまそういう大学にいきついているだけなので、それを活かして思いっきりマニアックな事に挑戦してもいいんじゃないかな。

学内にいると気づかないかもしれないけれど、たとえば東大生は10ちゃんとすべての観点から検証した上で結論を出したがる人が多い印象なんですよ。処理する情報量も多いし、複雑なことをはしょらないで捉えようとする人も多いし、物事の本質を見ようと努力を惜しまない人だって多いと感じます。

3割調べただけで10知ってるかのように発表できる人は目立ちやすいし、確かにスピードも大事ではあるけれど、違う良さだってきっとある。社会に出てみると、アプローチの違いなどで気づくことも多いですね。肩書としてのトウダイばかりでなく、なんだかんだそういう特殊能力をもっているんだから、そっちのポジティブな面にフォーカスしてもいいんじゃないかな、と思います。

「いい働き方」は、一つじゃない。

 

「東大生だから」って色々なコミュニティから疎外されることも、確かにある。

でも、だからこそその特殊性を逆手にとって、東大生にしかできないことをやってやろうじゃないか、って思えばいいじゃないですか。

 

ーそうはいっても、大企業への憧れだとか、本当にここの会社のやっていることが自分のしたいことなんだろうかとか、怖くなりませんか?

 

そしたら転職すればいい。

な、なにも言い返せない…!

私も大企業で通用するのか自分を試したくて、一度IT系の大企業に転職したことがあったんです。でも半年でやめました。利益至上主義的な文化や、長時間働く働き方が合わなくて。それで満足しました。

 

最初から自分に合ってる仕事なんてわかるわけないし、どの仕事にだって自分と合わない部分がある。

そんなの当たり前です。その時に新しい仕事を探すのか、自分の置かれた状況を改善するための解決策を探すのか。東大生お得意の「問題を解決するチカラ」を、ここで使えばいいんです。

 

取材を終えて

…ぐうの音も出ませんでした。

 

「東大生だから世間体のいい会社に入らないと」「東大生だから就活ではこの会社には有利で、ここでは不利だよね」

確かに世間がレッテルを押し付けている面もあるのかもしれないけれど、それを結局受け入れてしまっているのは、東大生そのもの。

 

「東大生」の特徴を最大限生かして、やりたいことをやり抜けばいいじゃない。

「東大生」のレッテルを気に病むことなんてない、むしろ「東大生」を自分なりに謳歌しちゃえばいいじゃない。

 

そんな柳澤さんのメッセージは、すがすがしいほどにシンプルで、だからこそまっすぐに胸に響きました。

 

ーーー自分はどう生きたいのか。どう働きたいのか。今こそ、静かに、問い直してみませんか。

 

※今回インタビューでもあがっていた「マッティシリーズ」の第二巻が先月21日に発売されました!↓

第一巻「マッティは今日も憂鬱」https://www.amazon.co.jp/マッティは今日も憂鬱-カロリーナ・コルホネン/dp/4908925127/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1513263158&sr=8-1&keywords=%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3

第二巻「マッティ、旅に出る」https://www.amazon.co.jp/マッティ、旅に出る。―やっぱり今日も憂鬱-カロリーナ・コルホネン/dp/4908925224/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1513263158&sr=8-2&keywords=%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3

 

是非チェックしてみてください!

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