あるべき「イカ東」の新しい姿、とは~北欧翻訳家・柳澤はるかさんインタビュー~

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私がまだ高校生だった頃。

同い年の東大志望だった(そして後日合格したと聞いている)旧友が、電車の窓から東京の夜景を見下ろしながら言った言葉を、今でも覚えています。

 

「こうして東京の景色、東京の人びとを見下ろしていると、この日本全体を自分が背負っていってあげたいと思うんだ。

 

私はそれができる、選ばれた人間なんだ。

普通の仕事をしている、他の人たちとは違うんだ

 

結論から言えば、私たちはこの後30分間、冷たい風の吹く冬の駅のホームで、大ゲンカしました。

自身は働いたこともなく、まだまだ親に食わせてもらっている身分の高校生が、なぜ職業を勝手にランク付けし、自らが良しとする「勝ち組」エリートコース以外を歩む人を見下せるのか。

 

なんて傲慢なんだろう、と思いました。「エリートなんて嫌いだ」、そんなことを一丁前に呟いていました。

 

ーー今思えば、私も子供でした。

確かに事実、多くの東大生は卒業後、「エリート」的な働き方を選んでいきます。

例えば、衆議院議員の20%、参議院議員の16%が東大OB/OG。

しかし当たり前ですが、「エリート」であることと、「エリート」であること自体をステータスと捉えることは全く違います。

「エリート」と呼ばれるがその働き方、生き方を選んだ理由は千差万別で、一つに絞れるようなものではありません。

 

 

でも、そのはどうでしょう。

自分の望む生き方が、いわゆる「エリート」コースから外れていたとしたら。

自分の好きなことを追いかけた結果、あえて大変な道を選んだとしても、

あなたは周囲からの視線をものともせず、

自分の選んだ道に自信を持って、進んでいけますか?

 

こんにちは。就職のことも頭にちらつきつつ、まだまだ自由な大学生生活を謳歌中のりつこです。

先日、東大OGの北欧翻訳家・ライター、柳澤はるかさんのもとへ、取材に行ってきました。先日第二巻が出版された、フィンランドで大人気の本、「マッティ」シリーズの翻訳をも担当しているのだとか。

※「マッティ」シリーズとは?

内気で繊細な、典型的なフィンランド人「マッティ」が、日常の敏感に感じてしまう、日常のささいな喜怒哀楽を、かわいらしい絵と共に紹介していく作品。2016年フィンランド国内売上No.1(コミック部門)の大人気作。日本でも2017年ガイマン賞センバツ!作品賞・第1位に選出。

東大生なのに、「出世コース」だと呼ばれる職業を選んでいない方だという事実にも興味を持ちましたし、

「北欧」の響きの女子力の高さにも、正直ドキドキしてしまう…

字面からこんな女子力満点のイメージがわいてきてしまう

そして取材当日。緊張しつつ集合場所に向かうと、そこにいたのは

 

ああ…私もこうなりたい…

そう思わせるような、洗練され凛とした雰囲気を漂わせた女性でした。

 

でもこの後2時間取材する中で、彼女から一番感じたのは、あろうことか

 

ただならぬ「イカ東」感

確かに誇りと愛をもって自らの仕事に打ち込み続ける彼女の姿が、メディアで揶揄されるような、試験の点数ばかり気にする、負のイメージである「イカ東」像とは程遠いのは言うまでもありません。

でも、好きなものへの愛が彼女自身の生き方の軸としてぶれずに存在し続けている、しなやかにしてあまりにも強い生き様は、もしかしたら東大生にありがちな性質を持ちあわせる「イカにも東大生」が目指すべき、あるべき「イカ東」の新しい姿なのかもしれません。

☞学生証

  1. お名前:柳澤 はるか さん
  2. 所属:東京大学文学部卒業
  3. 職業:北欧翻訳家・ライター
 

 北欧との出会い

ー「マッティ」シリーズ、読ませて頂きました。とても面白かったです!

「雑談のやり方が分からない」ーそんな内気さは日本人的でも、東大生的でもあるような気がして、思わずくすっと笑っちゃう。

 

舞台となっている北欧自体が元々お好きと伺ったのですが、北欧が好きなのは学生時代からなんですか?

いや、北欧が好きになったのが大人になってからなので、学生時代はまさか北欧関係の仕事をするとは思っていませんでした。新卒で入ったのも全くの別業種でしたし。北欧に初めて行ったのが20136月、社会人6年目でした。

人生を変える旅へ出発。

 

就職したての頃は、ワーカホリックというのでしょうか、土日含めて仕事漬けだったんですよ。でもそういう働き方をしていく中で体調を壊したり、転職したりするうちに考え方が変わってきて、旅行にでも行くかとなって。

行先を北欧にしたのは、友達が行きたがっていたとか、そういう偶然の理由です。今から考えると仕事で行き詰っていたから、というのもあったのかもしれません。

 

―そこで、北欧と出会ったと。

そうですね。最初に行ったときから、大好きでした。

まず自然はホントに素敵ですね。北欧の人びとって、自然と共に生きている人たち、って感じがするんですよ。都会のヘルシンキ住まいのバリバリのビジネスマンでも、夏休みは田舎のコテージに行って何週間もゆったり暮らすのが好きな人が多い。自然に還りたがっている人が多いんですよ。

 

北欧って、自然享受権が認められているので、森にだれでも入って、土地の所有権に関係なく、自然の恵みを誰でも自由に享受できる。キノコやブルーベリーを摘むのも自由です。それに、アウトドアに慣れていない人でも行って気軽に自然に癒されます。日本にいるとハードルが高くて、結局何もなにもしないんですよね。

そして旅する中で何より感じたのが、

 

何この居心地の良さは、と。

 

観光地の美しさだけではなくて、そこに流れる空気感自体が、楽で心地いいんです。

居心地の良さの理由を後から探すと、静けさってあるんですよね。わりと静かめな人が多いし、パーソナルスペースもゆったりしている。だから無理にテンションあげなくてもいいし、楽だなーって思って。

街の中にいても、横断歩道のないところでも渡りたいなあって思って立っていると、車やバスが止まってくれるんですよ。世界観が違ってびっくりしました。

 

そんな場所だったから、もともとの友達に再会したような……。昔から知ってた気がする人、運命の人にあったような感覚がして、むしろなんで私は日本に今までいたんだろう、と不思議に思ったほどです。

北欧の話になると、表情も自然と柔らかくなる柳澤さん。

次ページ:好きなことのためなら、何だってできる。

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