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進路に迷っていた東大女子が就職前に異国でアイドルになった話

2017.11.23

象使いからアイドルに?!

こんにちは!PEAK4年の金子萌です。

前回の記事では象使いになっていた私ですが、本記事では外国でアイドルになったお話をしたいと思います。

進路に迷える東大女子が就職やめて象使いになろうかと思った話
社会・文化
進路に迷える東大女子が就職やめて象使いになろうかと思った話
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こんぶ
2016-12-15

前記事でも4年生ですが、デンマークに留学に行っていたため卒業を1年遅らせ、現在2回目の4年生をやっています。(※象使いになろうとして就職しなかったわけではありません。)
その留学先のデンマークでアイドルになってきました!!

象使いになったあの日

その前に、少し前のことからお話ししようと思います。

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憧れと諦めと

遡ること3年前、私は一番最初の東大娘。の公演で駒場祭の舞台に立っていました。今でこそ東大Honeypot(Z)さんなどの存在で有名になってきましたが、当時はUNIDOL(ユニドル・ユニバーシティアイドルの略)という言葉すら知らなかった頃。

大学受験期にモーニング娘。擁するハロー!プロジェクトのアイドルに嵌ってしまった私は、アイドルが好き!!との気持ちだけで、私が思うアイドル5つの要素である、容姿もスタイルも歌唱力もダンス力も愛嬌も何も無いのに右も左も分からないままに参加していました。

2014年の駒場祭・2015年の五月祭と2回続けてパフォーマンスし、それ自体は大変楽しかったのですが、前述の5つの要素をいくつも兼ね備え、素晴らしいパフォーマンスをするメンバーと同じ舞台に立つのがいたたまれなくなりまり、自分の努力不足を棚に上げて、「元々私が人前に立つのが間違いだったんだ…」と生来の卑屈さを更に拗らせてその後は再びオタクに専念。

東大娘。’14の駒場祭公演

羨望半分で輝いているアイドルやユニドルを見ながら、アイドルとは正反対の象使いになるなどして過ごしていました。

壮絶な思い込み

そんな私を変えたのもアイドルでした。

デンマークへの留学直前、初めてハロー!プロジェクトのメンバーが勢揃いするコンサートを観に行った時、あまりのパフォーマンスの素晴らしさに衝撃を受け、「この素晴らしいパフォーマンスをもっと沢山の人に知ってもらわなければならない…!」と謎の使命感が私に沸き起こりました。(今考えるとなぜ私がやるんだよとか、私は誰だよとか突っ込みどころ満載です)

留学前だったため、海外の人にもっと知ってもらいたいという気持ちが自然に生まれ、本物のアイドルを海外に招待する、ライブ映像をパブリックビューイングで流すなどを考えましたが、どれも私一人の力で半年という留学中の短い期間に達成するのは厳しい。

諦めかけていた時、突然「アイドルのコピーダンスをすれば良いんだ!」と閃きました。

本物のアイドルを呼ぶことはできなくても、アマチュアのコピーダンスグループを作ってパフォーマンスをすれば、楽曲や踊りの素晴らしさを多くの人に伝えることができると考えたのです。

フィナーレを観ながら、絶対にこの計画を成功させてやると決意を固めたのはよく覚えています。留学前ハイになっており、今なら何でもできそうという思い込みから来る無敵感を抱いていたのも事実です。

こうして、謎の使命感と、壮絶な思い込みにより、海外でのアイドルグループ創設プロジェクトは始まりました。

モーニング娘。’16の韓国での公演の様子
(引用: https://ja.wikipedia.org/wiki/モーニング娘。 作者: DaftTaengk 作成: 2016年10月6日 ライセンス: CC 表示 3.0)

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怒涛の2週間

先ずはパフォーマンスができる機会探し。

日本大使館主催の日本文化紹介イベントが毎年4月に開かれていることを知り、日本からメールを送るもけんもほろろに断られました。しかしそこで諦める私ではありません。

デンマーク渡航後すぐにアポ無しで日本大使館へ突撃しました。(大使館って在留邦人がもっと気軽に行ける場所かと思ってたのですけどそうでもないことをその時に知りました(遅) そういう機能は各地に点在する日本人会が担っているようです。)

結果的にそのイベントでのパフォーマンスは認められませんでしたが、Jpopconという民間主催の日本のポップカルチャーイベントの存在を教えて頂きました。

そちらの運営の人に連絡すると、その方が私が留学中のコペンハーゲン大学出身だったこともあり、大変興味を持ちすぐに認めて下さったため、パフォーマンスの機会を確保することが出来ました。

デンマークや周辺諸国からオタクが集結するJpopcon


次の難関はメンバー集め

コペンハーゲン大学で、日本語を学んでいる学生と日本人との交流会があると聞きつけ、すぐに突撃。日本のアイドルが好きな学生を探す中で、アイドルはあまり分からないけれどJファッションは好き、という学生を探し出し、初対面で挨拶もそこそこに「私はアイドルグループを立ち上げようとしているんだけど、あなたアイドルをやってみない?」と切り出しました。

初対面のよく分からない日本人からのよく分からない企画への突然の誘いにも関わらず、その女の子は「良いね!面白そう!ダンスはしたことないけどやってみたい!」と二つ返事で承諾してくれました。

JpopconのFacebookページでもメンバーを募集したところ、何と投稿後30分で5人からの応募があったのです!
応募できない人もグループなどでシェアをしてくれ、最終的には13人からの希望があり、誰も集まらないのではないかという心配は杞憂に終わり嬉しい悲鳴を上げることとなりました。

更に、東大からの留学生にもプロデューサー役を頼んだところ、彼もすぐに受け入れてくれました。
その時点で本番まで2ヶ月弱。グループ名は”Sekai girls”に決まり、踊る楽曲、衣装なども慌ただしく決め、練習に明け暮れました。

意欲満載の応募メール

異文化での”アイドル”

違う文化の人と一つのものを作り上げるのですから、当然トラブルはつきものです。
予想もつかなかったような行動や考え方に驚くことばかりでしたが、その中でも特に印象的なエピソードを幾つかご紹介します。

嬉しい驚き

まず嬉しい驚きとしては、メンバーの積極性が挙げられます。

最初は私が全て決めて進めなければならないかと考えていましたが、楽曲でのポジション決めや衣装決めや広報、ロゴやチラシ作りなど、それぞれの仕事に担当を決めると驚くほど積極的に引き受けてくれ、私の考えの及ばないところまで自分達でどんどん進めてくれました。

私はリーダーと言いつつも最後の方は殆ど何もする必要がなくなっており、私が授業で少しメッセージを見ないうちにいつの間にかメンバーカラーが決められているような状況までありました(笑)

公平に全てのメンバーの意見を聞いてから決めるべきだと意見するも、「常に公平性が保たれる訳ではない。公平性を重視していては何も進まない。」と逆に説得され、リーダーとしての在り方を考えさせられました。(ただ私に威厳がなかっただけという説もありますが…笑)

授業の間に勝手にメンバーカラーが決められていました

それでも、日本語もあまり分からないにも関わらず、彼女達が異文化の”アイドル”になることをそんなにも楽しんで、積極的に取り組んでくれることが純粋に嬉しかったです。
             

考え方の違い

また、パフォーマンスへの意識の差も大きな驚きでした。

パフォーマンスは「自分達が楽しむためにやるものだ」という姿勢が徹底しており、日本よりも「個」のスキル向上を重視しているように感じられました。

一人一人がダンスを覚えた後は練習中でも遊び出してしまうメンバーなどもおり、グループでダンスを揃える意識などがあまり無いようでした。

メンバーの1人はノルウェーに住んでおり、デンマークでの練習には参加することができないため、定期的にスカイプでダンスをしてもらうことで練習状況を把握していましたが、その人は他のメンバーと一回も一緒に練習をすることなく本番に臨もうとしていました。

その時は流石に焦りましたが、考え方の違いを大きく感じることとなりました。

結局そのメンバーを説得し本番当日の早朝に練習できましたが、そのために朝早く起きるのに対して不満を隠さないメンバーもいるなど驚きの連続であり、特に今回は年齢幅も16歳から26歳までと大きく(同い年くらいかと思っていたメンバーが17歳のピチピチのJKだと知った時には衝撃を受けました…笑)“異文化”の中でプロジェクトを行うことの難しさを痛感しました。

どちらの考えの方が優れていると一概には言えませんが、少なくとも今回は日本のダンスをコピーしており、特にアイドルダンスはグループで踊って見栄えが良くなるような振り付けとなっているため、練習のビデオを撮影してバラバラだと汚く見えることを理解してもらうなどでメンバーの意識を統一できるように務めました。

左から、23歳、17歳、16歳、26歳、22歳(私)、22歳

             

諦めから再挑戦へ

一方で私を苦しめたこの「自分達が楽しむためにやるものだ」という意識は、他方で私にも大きな影響を与えました。

メンバーはJファッションや漫画、コスプレ好きなど、元々何かの日本文化に親しんでいた人が殆どです。
日本にいると日本好きの外国人ばかりに出会い、マスメディアでもよく取り上げられているので多くの外国人が日本文化に親しんでいるように錯覚してしまいますが、彼らは母国ではあくまでもマイノリティー

人口500万人のデンマークで、Jファッション好きのコミュニティに入っているのがたった100人ということで、いかに小さなコミュニティかが分かるかと思います。
そういう人達は往々にしてオタクや変人と思われることが多いらしいですが、そんな中でも、彼女達は自分を貫き、いつも好きなJファッションを着ています。
冬になると街中が黒服ばかりになるデンマークで、彼女達のカラフルな服はかなり目立ち、注目を浴びていますが全く意に介する様子はありません。

Jファッションを見事に着こなしていますが、如何せん目立ちます。

私自身は今回は、パフォーマンスせずに裏方に徹する予定でした。

しかし、メンバーに「萌も一緒に踊らないの?」と聞かれ、先述のアイドル5つの要素を説明して私には何も無いからと断ると、「私達自身が楽しむためにやっているんでしょ?何で周りの目を気にするの?なぜ一番アイドルが好きな萌がパフォーマンスしないの?」と本当に何を言っているのか分からないという顔で聞かれ続けました。

実際に自分を貫いている彼女達に言われると返す言葉が何もなく、殆ど私を知っている人がいないこの国では何も恥じる必要がないと思ったこと、そして、特に「萌が楽しんでパフォーマンスしないで、どうやってアイドルの魅力を伝えるの?」という言葉に説得され、アイドルの要素など何も持っていない私でも、楽しみながらパフォーマンスしている姿を見せることで魅力を伝えることができると考えるようになり、結局私もSekai girlsのメンバーとなることになりました。

諦めを捨て、再挑戦を決意した瞬間でした。

衣装が届いた日に喜んで浮かれてるメンバー

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草の根”クールジャパン”

そんなこんなであっという間に時間が過ぎ、本番を迎えました。

1000人位入るのではないかと思うほどの大きいステージを充てがわれたにも関わらず、知名度がなく集客が絶望的だったため、リハーサルの日から毎日、朝からメンバーがコスチュームを着てビラ配りに徹しました。

デンマーク語も話せないアジア人の、変な衣装着た私がいきなり知らない人に話しかけるのは最初は恥ずかしかったですが、日本のアイドルとアニメのコピーダンスをする、というと大変興味を持ってくれて笑顔でビラを受け取ってくれる人が多いことも励みになりました。

このビラを500枚程配りました

                 

そしていよいよ本番。

練習の過程などでメンバーが抜け、最終的に4カ国(デンマーク、アメリカ、フランス、ノルウェー、日本)9人でのパフォーマンスとなりましたが、100人以上の方が観に来て下さいました。

殆どのメンバーがダンス未経験だとは思えないほど皆堂々とパフォーマンスしており、技術的に未熟な部分があることを除いても、多国籍のメンバーが国境を超えて楽しみながらアイドルを表現することでそれぞれの個性が化学反応を起こし、”アイドル”の魅力を発揮できたように思えました。

殆どのお客さんが曲をあまり知らない中、オタ芸やコールなどは勿論見られず、お客さんも座ったままという日本のアイドルのライブとは大分違った雰囲気で最初は盛り上がるか不安でしたが、Jpopconの音響のスタッフの人がノリノリで一緒に踊ってくれたり、パフォーマンスが進むにつれてお客さんも思い思いの合いの手を入れるようになるなどしたことで、Jpop、アイドルの魅力を伝えたいという想いが通じたように感じて終演後は不思議と涙が溢れてきました。

実際、曲を口ずさみながら帰るお客さんがいたり、アイドルソングに興味を持ったというコメントも頂き、何より、アニメにしか興味を持っていなかったメンバーがアイドルを好きになって他の曲も聴いたり踊ったりするようになり、自分達で新たなコピーダンスグループを作るメンバーも出てきたことで少しでもデンマークでのアイドル文化普及の種を蒔くことができたかなと嬉しく感じました。

感動のフィナーレ

                       

最初はアイドルソングだけのコピーダンスの予定でしたが、メンバーの強い要望によりアニメソングときゃりーぱみゅぱみゅの曲もダンスすることになり、Jpop全般のパフォーマンスとなりました。

当初の私の意図とは外れましたが、本番ではラブライブなどのアニメソングは、イントロがかかった途端歓声が起きるほどの人気ぶりであり、結果的にアイドルソングだけに絞らずにJpop全般としたことは大正解の選択でした。

クールジャパンなどが取り沙汰されて久しいですが、海外でのポップカルチャーの入り口はアニメであり、アニメからどうやって他のポップカルチャーに興味を持ってもらうかが鍵だと実感しました。

更に、Jpopconでのパフォーマンスが成功した後、なんと最初は断られた大使館主催イベントでのパフォーマンスが認められました!正規のステージではない路上パフォーマンスとなりましたが、コスプレやアニメ好きだけでない人にも見て頂くことができました。

路上パフォーマンスの様子が現地のウェブメディアに掲載されました。

困難の果てに悟った哲学

アイドルとは偶像です。

アイドルとは、どこのグループ/事務所に所属するか、運営から推されるかなどどんな理不尽な外部要因に大きく運命が左右されます。

私がアイドルを好きな理由は、そんな状況でも、自分達の偶像性という役割を理解して目の前のお客さんを楽しませ、笑顔にするためにダンススキルや歌唱力の向上など、彼女達自身が出来ることを惜しまずに努力し、人の心を動かすパフォーマンスを披露する姿から自分も頑張る元気をもらえるからです。

私自身、Sekai girlsでの経験を経て、多国籍なメンバーが、各々楽しんで行ったJpopの表現が、何よりもJpopの魅力を伝えられることになることを実感し、その力は日本のみならず、世界のどこでも発揮できると自信を持って言えます。

Being continued…

ここまでこんな長文を読んで下さり有難うございます。

Sekai girlsに少しでも興味を持って下さったでしょうか?

頷いて下さったそこのあなたに朗報です!

なんとSekai girlsが新たなメンバーを加え生まれ変わり、Sekai girls2ndとして日本で活動しているのです!

11月初旬には早稲田祭でパフォーマンスを披露し、今週末の駒場祭でも公演を行います!!

早稲田祭での様子

最初は8人いたメンバーが早稲田祭では5人になり、最終的には7人に落ち着くなど今回は前回以上に波乱万丈でありますが、早稲田の留学生や語学学校への留学生など、個性も強い4カ国(デンマーク、フランス、スウェーデン、日本)7人のメンバーがアイドルとアニメソングをパフォーマンスします。

現在、飛ぶ鳥を落とす勢いの乃木坂46の「ガールズルール」から始まり、
人気沸騰中のアイドルマスターの「star!!!」、
知る人ぞ知るモーニング娘。の隠れた名曲「女と男のララバイゲーム」、
MVがザ・女の子で可愛すぎる、カントリーガールズの「恋泥棒」、
ニコ動で大人気の初音ミクの「千本桜」、
デンマークで大歓声が起きたラブライブの「start:dash」、
そして、モーニング娘。史上初の全編英語詞であり、まるでSekai girlsを象徴しているかのような「One and Only」で終えるという、

Jpopを代表する曲盛り沢山の7曲を、11/25 9:25-9:55 @いちょうステージ、 11:50-12:15 @グランドフェスティバルステージでお届けします。

土曜日は私達だけでなく東大娘。’17さん、東大Honeypot(Z)さん、東大ハロプロ研究会さん、UTparadeさん、Aquotさんなど、多くのアイドルやアニメのコピーダンスグループがパフォーマンスを行う競演の様相を呈します。

それぞれのグループごとに”アイドル”が表現するものは違うと思いますが、お客さんを楽しませるために全力でパフォーマンスすることは共通していると思います。

このアイドル揃い踏みの機会を逃さず、アイドル好きの方はもちろん、今までアイドルなんて興味がなかった方にも遊びに来て頂けると嬉しいです!!

Showroomでの公演の配信も予定しているため、駒場までは来られないよ、という方も、ぜひオンライン上での応援を宜しくお願い致します!

SNSで情報を鋭意発信中です。
Twitter: @sekaigirls2017
Facebook: https://www.facebook.com/sekaigirls/

この記事を書いた人
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こんぶ
はじめまして! こんぶです。UmeeTのライターをやっています。よろしければ私の書いた記事を読んでいってください!
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