こんにちは。ライターのゆみです。
今回は、「東大生姉弟が起業し、LGBT就活サイトを作った理由・前編【誰もが自分らしく働けるように】」に続きまして、
LGBT求職者への情報提供サービス、求人サービスを運営する「JobRainbow」の方々のインタビューの後編をお届けします。

後編では、
「LGBTフレンドリーで有名なところって大企業ばかり。結局高学歴の人しか入れないのでは?」という疑問をぶつけてみたり、
「危うさを併せもつLGBTブームをどう考えるか」
といったお話を伺ってきました。
LGBTの学生も、そうじゃない学生も、熱い信念と賢い戦略を兼ね備えた、「JobRainbow」さんの話を聞いていってください!
☞学生証

- お名前:星賢人さん
- 経歴:東京大学情報学環教育部特別研究室2年。2016年1月に「JobRainbow」を立ち上げ、3月にウェブサイト運営を開始。多数のメディアに取り上げられる。
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- お名前:星真梨子さん
- 経歴:東京大学法科大学院。弟の星賢人さんとともに「JobRainbow」を立ち上げ、取締役を務める。
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- お名前:本荘 悠亜さん
- 経歴:東京大学文学部4年。東大のセクシュアルマイノリティサークルtoposの運営も行う。「JobRainbow」ではインターンとして星姉弟とともに活躍。なんとピアニスト。
実家のトイレの前で姉とのブレインストーミングの日々
ー 2016年の1月に会社を立ち上げるまではどういった活動をされていたんですか?

賢人さん:僕は大学2年生のころから、サイバーエージェントとかMicrosoftとかでインターンをしていて、ウェブサービスの新規事業を立ち上げたり、スタートアップの開発手法を学びながら、実際にプロトタイプを作ってくみたいなことをやっていました。
それで、3年生になって就活を始めたんですが、その時に気づいたLGBTの就活に関する情報が少ない、足りないという問題を、いままで身につけてきたWebサービスの知識やスタートアップの手法で解決できないかなと考えました。
姉には自分がゲイであることを20歳くらいの時にカミングアウトしていたので、もうその頃からいろんなアイディアを姉と二人でブレストしていましたね。
真梨子さん:もともと、弟は「社長になりたい」って小学生の頃からずっと言っていたんです(笑)
私たちもともとすごい仲が良かったんですけど、カミングアウトしてもらったことで、ますます距離が近くなりました。
「こんなことしたいよね~」って夜中2時3時とかまで、半分妄想、半分本気みたいな計画をずっと2人で話しちゃうんですよ。そういう話の中で「JobRainbow」も出てきて。

すごく素敵な星姉弟。
賢人さん:名前は真梨子が考えたんだよね。
真梨子さん:そうそう。私はビジネスのこととかよく知らなかったけど、弟が外で学んできたことを私は「うんうん」って聞いたり、「ここはこうしたらいんんじゃない?」って意見したりして。
だから、実家のトイレの前でずっと立って話してたことがだんだん形になっていったみたいな感じですね。
ー でも、実際会社を作るってなると、結構ハードル高いですよね?
賢人さん:そうですね。自分にはビジネスの知見が全くなかったですし。社会人をやったこともなかったので。
でも、その時にビジネスコンテストに参加して、元マッキンゼーの方などにアドバイスを頂いたりして、コンテストは優勝できまして。
ー え、すごい!!
賢人さん:そのビジコンには経営者の方とかがいっぱいいらっしゃったので、「君がこのサービスを本当にやるんだったら僕たちは賛同してサポートする」って言われたりもして。じゃあ会社として立ち上げようとなりました。
TRIGGER2015の優勝は
JobRainbowです!!
おめでとうございます!!#trigger2015 pic.twitter.com/DlKtmdVD6p
— TRIGGER2016 (@trigger_pr) September 20, 2015
ー ビジネスコンテストやインターンでの経験が、ビジネスとしてLGBT就活サイトを運営することにも活きているんでしょうか?
賢人さん:そうですね、特にミニマムバリュープロダクト(MVP)を用いた仮説検証のやり方は活きてますね。
例えば求人サイトである「ichoose」を始める時も、突然サービス開発に着手したわけではなく、それもまず求人機能をテストしてみて、ニーズがあるってことがデータでわかってから実装しました。
「社会貢献としてこれをやります!」というよりも、まずはテストを出してみて、ユーザーのニーズにこたえていくというスタートアップ的な手法を使っています。
LGBTフレンドリー企業は結局高学歴な学生しか受からない?
ー 先ほどお話に出てきたMicrosoftとか、LGBTフレンドリー企業っていわゆる「いい会社」が多いような気がします。
でも、そういうところに入れる学生ってそもそも限られていませんか?

「JobRainbow」の人気企業情報ランキングでも、スタバ、リクルート、JAL、資生堂とそうそうたる企業が並んでいますが…
賢人さん:そうですね。いわゆる「いい大学」ではないLGBTの学生、あとは地方にいる子たちにとっては、すごく難しいと思います。
新幹線に乗って、わざわざうちのイベントに来てくれる子たちもいるんですが、なんでかっていうと、地方だとそもそもLGBTフレンドリー企業という選択肢がないところもあるから。
あと、都心にいても、そういうLGBTフレンドリー企業に、学歴の面で入れないっていう学生もいます。
でも、実はフレンドリーな企業って本当は大企業だけじゃないんですよ。ここでも情報が行き届いていないのが問題だと思っています。
大企業は、プレスリリース一本打てば、yahooニュースにのって、みんなにどんな取り組みをしてるか知れ渡ります。
例えばサントリーとキリンが同性婚を容認したってことはすぐニュースになりました。でも、東大出たってそういう会社って入れなかったりもするわけです。
キリンとサントリー、同性婚を容認 多様な人材確保へ人事制度見直しhttps://t.co/fg38qnFG9E #LGBT
— 産経ニュース (@Sankei_news) June 29, 2017
私たちがサービスにおいてこだわっているのは、そういうLGBTフレンドリーであることが知られているけど入社するのが難しい大企業だけでなくて、掘り出し物みたいな企業さんを紹介することです。
例えば、8月5日にある合同会社説明会も、みんなが知ってる大企業もいらっしゃいますが、それほどまだ知られていない企業もいらっしゃることになっていて。神奈川にある、世界展開してる50名くらいの精密機器会社とか。
もちろんそういう大きくはない会社さんたちとも私たちはしっかり話をしているし、LGBTの受け入れ態勢がしっかりした会社だけを選んでいます。
真梨子さん:でも同時に、大きな会社さんと組んだり、イケてる雰囲気を作ったりしていかなきゃいけないとも思っています。東大とか早慶とか、高学歴の子も巻き込んで、企業にとって魅力的に感じてもらわなきゃいけない、とも。
企業と自分たちとwin-winの関係のビジネスを築いていくには、困っている人たち「だけ」、地方にいる学生「だけ」、高学歴ではない学生「だけ」に向けたサービスではやっていけない。
こういうのは、NPOではなく会社としてやっている私たちだから持てるバランス感覚だと思っています。

賢人さん:LGBTのサービスの中で戦ってるっていうよりも、大手就活サイトと戦ってるサービスだと思ってる。
弱者の目線を持つっていう面と、大きな市場経済の中でビジネスとして戦っている面、2つがありますね。
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