「男と女」では終わらない――魚の性転換に見る性別の不思議

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生き物について、私たちは「性別はオスとメスの2つに分かれる」ことをよく前提にします。ですが、ちょっと待ってください。

「女性らしい女性」や「中性的な男性」といった概念があるように、性別というのは実はあいまいで、色々な状態があるものなのです。

人間を例にするとデリケートな問題ですが、一般的にも生物学的にも、性別はとても興味深いテーマです。その多様さを知ると、より興味をひかれることうけあいです。

 

本記事では、魚類を例に、オスとメスだけではおさまらない性別の世界をご紹介します。

 

【自己紹介】

所属:農学生命科学専攻 博士課程1年

研究分野:魚類の脳の性転換メカニズム

 

魚の性別は変わる

魚類には、「性転換をする」という大きな特徴があります。

一生の途中で性別が変わるのです。

 

ホンソメワケベラという魚で、性転換の例を見てみましょう。

P1020124

10センチほどの海水魚で、他の魚についた寄生虫を食べるので「クリーナーフィッシュ」とも呼ばれ、水族館によくいます。

 

ホンソメワケベラはオス1匹とメスが数匹の集団で生活しています。

1匹のオスが何匹ものメスと繁殖をする、いわばハーレム状態です。

そのオスが何かの拍子にいなくなると、メスだった個体がオスに変わります[1]。一番大きな1匹だけがオスになり、残りはメスのままです。

性転換模式図

さらに、集団にオスしかいなければ、一度オスになった個体がメスに戻る現象さえ見られています[2]。

つまり、ホンソメワケベラは性別をメスからオスへ、オスからメスへ行ったり来たりできるのです。

 

性転換には、メスからオスに変わるもの、オスからメスに変わるもの、そして両方を行ったり来たりできるものと3つのパターンがあり、それぞれ何種類もの魚で確認されています。

記事のはじめに写真で登場する魚はキイロサンゴハゼといい、行ったり来たりできる種類です。

 

また、性転換の途中には、どちらの性別でもない状態をとります。魚は性転換するとともに、生涯の中に性別がはっきりしない段階をもつ不思議な動物なのです。

 

魚は皆性転換をするのか?

通常の条件で性転換をする魚は数多くあります。ホンソメワケベラのほかに、以前映画で有名になったカクレクマノミ、食材として人気の高級魚マハタなど。

カクレクマノミ

カクレクマノミ

現在、自然条件下での性転換が確認されているのは、魚類全体のおよそ2%です。

 

ほかに、自然にはしないけれど、人が手を加えると性転換をすることが確認されている魚もいます。キンギョ[3]やメダカ[4]などです。

性ホルモンなどホルモンの量を操作することで、人為的に性転換を起こすことができます。

キンギョ

キンギョ

そのため、研究者の間では、自然条件下で行うかどうかにかかわらず、魚類全体が性転換の能力を持っていると考えています。

 

次ページ:性転換ができるメリット

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ABOUTこの記事をかいた人

農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 博士課程在籍。
魚類の脳の性転換の仕組みを研究しています。
大学院生が高校生に向けて研究内容を発信する活動を行っています。 https://sites.google.com/site/baputokyo/
大学院生・若手研究者による、社会人含む一般向けのトークイベントも開催中です。 http://bapcafe.blogspot.jp/

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