よくわかる流行語のつくりかた

よくわかる流行語の作り方
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この記事を、最近メディア露出の多い東大生に捧げます。

 

流行語のつくりかた

まずは簡単に、流行語の作り方を見ていきましょう。詳しい説明は後述します。

  1. 自らの生活から、出ない語」「長い語を見つけます。
  2. 「出ない語」「長い語」に、新たな名前を付けます。
  3. その名前を広めます

以上です。とっても簡単ですね!

「出ない語」「長い語」とは?

…いきなり新しい言葉を出してしまってごめんなさい。でも、読めばきっと分かってくれると思います。

私たちは、普段生活をしている中で、「語彙が足りなくて困る」という経験は、めったにないはずです。

家族や友人との会話なら、特に意識をせずとも返す言葉が思い浮かびますし、バイトで使うような慣れない言葉も、ある程度働けばマスターできるでしょう。

かといって、この世界のすべてを言葉で表すには、ちっとも語彙が足りないのです。

例えば、「自分のファッションに自信がない人ほどモノトーンでまとめたがる現象」や、「女子が5人以上の仲間とつるんでいる際、誰か一人は笑いに走ることで自らの存在意義を満たそうとする現象」を一言で表すような言葉は、まだ生まれていません。

先ほどの例のような、現象自体は存在するのに、言葉が存在しないものを、「出ない語」と呼ぶことにしましょう。

また、頻繁に使う言葉であるにもかかわらず、その言葉が長ったらしいものを、「長い語」と呼ぶことにしましょう。

例えば、大学生のガソリンともいえる「モンスタエナジードリンク」は、たくさん飲む割には言葉が長すぎます。これも「長い語」です。(先取りになりますが、これを略した「モンエナ」は大学生の間に定着しており、立派な新語であると言えるでしょう。)

こうした「出ない語」「長い語」を、身の回りから探し出してください。できれば、多くの人が日頃から目にするようなものだと、爆発的に広まるようになるので望ましいです。「出ない語」を見つけるには鋭い人間観察を要求されるので、「長い語」より難易度は高いのですが、その分広まりやすいのでチャレンジする価値はあるでしょう。

どうやって名付けるのか?

さて、「出ない語」「長い語」を見つけたら、次は名づけの作業です。

といっても、この名付けの作業にはいくつかのルールがあり、これを守らないとちっとも流行らなくなります。守るべきなのは以下の3つ。

  1. 音節は4つまで
  2. 会話で使いやすい
  3. 同音異義語が少ない

これらのルールは絶対に守らなければなりません。なぜなら、流行するということは「バカに見つかる」ということであり、バカでも使える言葉でなければ流行らないからです!

音節が5つ以上になると、バカの頭はパンクします。会話で使いやすくないと、バカは喋れません。同音異義語が多いと、バカは意味を聞き取れません。流行語となり、新語として定着するには、これらのルールは絶対に守らねばなりません

例えば、「女子力」という言葉。音節は4つ。会話でも使いやすいです。同音異義語で混乱することも、ほぼないでしょう。「壁ドン」「セクハラ」「ニート」「エモい」「エゴサ」「パリピ」「ワンチャン」なども、これらの原則に綺麗に当てはまります。この3つのルールは、流行語になるための明らかな必要条件なのです。

名付けに困ったら、とりあえず縮めてみましょう。もしくは、辞書で似たような言葉がないか、別の言語ではどういうのか(フランス語が人気です)を調べてみましょう。それでもだめなら、その言葉が使われる情景を思い浮かべて、関連するキーワードをリストアップし、2つの言葉をくっつけてみましょう。聞いただけで意味が何となく分かるような、良い流行語ができるはずです。

どうやって広めるのか

基本的には、自分で使って広めていくか、メディアでその言葉を紹介する方向になります。

特に現在では、TVに出ずともSNSによる拡散で広める手法もあることですし、割と流行語を作りやすい時代なのではないかとも思います。

もちろん、TVの影響力はまだまだ大きいですから、そこで新語を使えれば、普及の第一歩としては上出来でしょう。(東大生、流行語を広めるの、いつやるの?い…クッソ古すぎるな)

流行語の副作用①:行動を規定する

さて、ここまで流行語の作り方をお伝えしたわけですが、この強力な技術には当然副作用があるしかも2つも!)わけでして、それをお伝えしないのは大変にマズいことだと思います。その副作用の一つというのは、「行動を規定する」ということなのです。

例えば、「女子力」という流行語がありました。この流行語は、「飲み会とかで甲斐甲斐しく料理を取り分けたりするなどの母性的な一面を持ちつつ、自らの女性的な魅力に磨きをかけることに余念も無いような、いわゆる社会から求められる女子像にどれだけ適合しているかを示す尺度」のような、色々な人々にもやもやと浮かんでいた「出ない語」を解決する言葉です。「よくぞ言語化してくれた!今まで頭の中でもやもやと存在していたのはこれだったんだよ!」といった調子です。もやもやを解決する言葉は大変に気持ちがいいので、爆発的に広まりました。

ここまではいいのですが、流行語の副作用はここから発生します。

長ったらしい「出ない語」を「女子力」という言葉で言い表せるようになったのは良かったのですが、今度は、この言葉によって、人々の生活が変わってしまうのです。

例えば、この言葉が広まる以前、就寝前にベッドでポテチをむさぼる食習慣を持っていた女子がいたとしましょう。

女子力」という言葉を知ってからというもの、その食習慣を行うのに抵抗を示すようになったのです。その理由は、「女子力が足りない」から。

なぜこのような変化が発生するかというと、今までのその人は、自らのその食習慣について考えようとしても、考えるのに必要な言葉が存在せず、無理やり考えようと思ったらあの長ったらしい「飲み会とかで(中略)を示す尺度」という「出ない語」を使わなければならず、思考を維持することができなかったのです。

そこに、女子力」という言葉が与えられたことで、「女子力が足りない」という簡潔な思考をすることができるようになりました。

すると、今までの行動に対して抵抗を示すようになるのです。

 

言葉は人々の行動を規定しています。そして、新しく生まれる流行語は、その行動を変える存在でもあるということは、十分に留意しなくてはなりません。

流行語の副作用②:踏み絵的用法

もう一つの副作用は、「踏み絵的用法」です。文字通り、踏み絵として流行語が使われるようになる、ということです。

例えば、料理を取り分けてもらって「女子力高いね!」というべきところを、「気配りの効く素敵な方ですね」と言おうものなら、その文化圏からは排除されるでしょう。「何あの人貴族なの?」とか「育ちからして話が合わねーわ」などといった会話上の違和感が発生するのです。

このとき、「女子力」という言葉は、その文化圏に属しているかどうかを判定する、踏み絵として機能していることになります。

流行語の別タイプ「踏み絵語」

この踏み絵的用法を説明するために、敢えて触れずにおいたタイプの流行語があります。それは、「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム」という流行語です。

これは2013年2月頃、Twitterを中心に広まった流行語で、「猛烈に怒っている」という意味を持つ言葉です。もちろん現在使っている人はほぼ消滅したわけですが、この言葉は先ほど流行語のルールで述べた「短音節の原則」に真っ向から対立しています

実は、流行語には2タイプあります。一つは、実用的な観点から生み出され、人々の生活に定着した流行語。もう一つは、踏み絵的用法を主目的とした一過性の流行語です。

これまで「よくわかる流行語の作り方」として説明してきたのは、前者のタイプの流行語なのです。

後者のような「踏み絵語」の効果は、大きく分けて2つあります。

一つは、新鮮な流行語を同じ文化圏に属する仲間と共に使うことで、同じコミュニティに属しているという安心感を得られる、というもの。

もう一つは、廃れた流行語を同じ文化圏の仲間と共に「廃れた流行語」として認識し、同じ時間軸に生きているんだという安心感を得られるというものです。

少し難しい言い方をすれば、一定時点に依存する踏み絵語は、同一文化圏に属する者同士で相対的な時間感覚を一致させることで安心感を得る営みを可能にしている、と言えるでしょう。同じものに対して同じ感想を抱く人は自分の仲間だと思う、そんな人間の心理に根差した流行語なのです。

次ページからは本題。流行語を使って、東大のイメージを良くする方法。

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