「ラ・ラ・ランド」からひもとく、ミュージカルの歴史と魅力

ブロードウェイ
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先日、あるミュージカル映画が日本で公開されました。

 

その名も「ラ・ラ・ランド」

エマ・ストーンとライアン・ゴズリング主演で、今年のアカデミー賞で監督賞、主演女優賞、主題歌賞、作曲賞、美術賞、撮影賞の最多6部門を受賞した、話題の映画です。

 

 

日本では‪2/24に公開されたばかりですが、公開前からプロモーションが大々的に展開され、また作品賞で間違えて名前を呼ばれるというハプニングもありましたので、知っている方も多いのではないでしょうか。

 

ミュージカルが好きで好きでたまらない私は、公開前からサントラに惚れこみ、前売りを買って公開初日に観に行きました。

そしてハマった

そしてハマった

 

この映画を語る際によく使われるのが、

「これぞミュージカル!」

「黄金時代への回帰」

などといった、「古き良きミュージカル映画」という意味の褒め言葉。

 

ですが、「古き良きミュージカル」って一体なんなんでしょう?

 

古き良きっていうことは、今のミュージカルは違うってこと?

黄金時代っていつ?

そもそも「ラ・ラ・ランド」以外のミュージカルって何があるの?

 

一言にミュージカルと言っても、歴史の中で様々な形の音楽やストーリーが生まれ、廃れ、そして再興してきました。

今回は「ラ・ラ・ランド」公開に寄せて、ミュージカルの色とりどりの歴史をたどった後に、私が思うミュージカルの良さ、面白さを書きなぐりたいと思います。

Waitress

去年の夏、ブロードウェイの土を踏んできました。

ミュージカルとは

 

そもそも、ミュージカルとはなんなのでしょうか。

 

ミュージカルの起源は、オペラにあります。

オペラは、曲はクラシック調、セリフはなくすべて歌で表現した、貴族のための娯楽でした。これを庶民用にわかりやすくしたものがオペレッタ。能から狂言が生まれたみたいなものですね。

そして、ヨーロッパで発展したオペレッタがアメリカへと渡り、ダンスやマジックなどショー的要素を組み込んだ、つまりさらに大衆向けに作られたものがミュージカルです。

 

基本的に歌手とダンサーは分かれ、曲はクラシックであるオペラ・オペレッタに対し、

ミュージカルでは基本的に役者は歌・ダンス・演技すべてをこなす上、曲はクラシックからロック、ポップス、最近ではヒップホップと多岐にわたります。

 

そしてこの、歌・ダンス・演技の3つの要素は、お互いに働きかけあい、作品をより人の心に訴えかけるものに磨き上げています。

 

演技やストーリーに歌の力をプラスすることで、より観客に届きやすい感情表現をすることができる。

ダンスがあれば舞台をパッと華やかに見せることができる。

面白いストーリーや迫真の演技は、終演後も作品を観客の心にとどまらせる役割を果たします。

 

歌もダンスも演技も、クラシックもロックもポップスもラップも、バレエもジャズダンスもヒップホップも、ファンタジーも社会派ストーリーも甘い恋愛モノも、なんでもアリ!

広い表現の幅をフルに使って、観客を魅了するのがミュージカル、と言えると思います。

 

ミュージカルの成立

 

さて、最初のミュージカルは(諸説ありますが)「ショウ・ボート」という1927年初演の作品だと言われています。

それまでの作品が歌!ダンス!マジック!という、演劇というよりもショー的要素が強かったのに対し、「ショウ・ボート」では人種差別問題が組み込まれるなど、本格的なストーリーが展開されました。

 

その後、1946年の「アニーよ銃をとれ」、1951年の「王様と私」など、大ヒットミュージカルが次々と製作され、ブロードウェイミュージカルは黄金時代を迎えます。

 

渡辺謙さんが主演を務めた、2015年版「王様と私」。日本でもニュースになりました。

 

 

映画とミュージカル

 

1950年代に入ると、ミュージカル映画が数多く製作されるようになります。

「王様と私」も1956年に映画化されましたし、他にも

「雨に唄えば」

「ウエスト・サイド・ストーリー」

「サウンド・オブ・ミュージック」

「マイ・フェア・レディ」

などなど、「これぞミュージカル!」といった作品が次々と生まれました。

 

 

これぞミュージカル!

そう、「ラ・ラ・ランド」で再現されたと言われる、「黄金時代」とはこの、1950年代、1960年代のことを指します。

華やかな音楽、明るく楽しいダンス、美しい映像。

みんなが楽しめる、完成度の高いミュージカル映画がたくさん生まれた時代でした。

 

ちなみに「ラ・ラ・ランド」がこの黄金時代を再現したというのは、批評家が勝手に想像しているだけではなく、作品自体にこの時代の映画のオマージュがちりばめられていることからもわかります。

参考:https://www.businessinsider.jp/post-925

 

ミュージカルの多様化

 

ここまでのミュージカルは、音楽がクラシックに近いものがほとんどでしたが、1960年代後半からはバリエーションがどんどん増えてきます。

ベトナム反戦運動をテーマにした「ヘアー」は、ブロードウェイに初めてロック・ミュージックを持ち込んだ作品として有名です。

ここで、「ロック・ミュージカル」というジャンルが生まれます。

 

ちなみに、「ヘアー」の日本公演を最初に行ったプロデューサーや俳優らが、東京公演終了後に大麻パーティーを行い逮捕されるという事件が起きています。ロックですね…

 

 

その後も、「ジーザス・クライスト・スーパースター」「グリース」「シカゴ」といった、クラシック音楽から脱皮したミュージカルが次々生まれていきます。

ちなみに「ジーザス・クライスト・スーパースター」は、

ひとりの人間として神や民衆の狭間で苦悩するイエス・キリスト(英語式発音で「ジーザス・クライスト」)と、その使徒の一人でありながら「裏切り者」の名を浴びて歴史にその名を刻むことになるイスカリオテのユダのふたりに、現代的な視点から「教団主導者には必須なはずの計画性に欠け、早すぎた聖者としての名声の上にあぐらをかいて、新しい方策を見いだすことができないジーザス」と「そのジーザスに対する期待があまりにも大きすぎたゆえに、やがてそれは大きな失望となり、ジーザスの存在はローマ支配下にあるユダヤ人社会を危険にさらすものになりかねない、という危惧を抱くようになるユダ」という新しい解釈を加え、その愛憎に満ちた両者の関係に、マグダラのマリアとの愛情に満ちたもうひとつの関係を絡めて、鮮やかに描き出した作品。

 

ー引用ー
「”ジーザス・クライスト・スーパースター”」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
“2017/2/14″ UTC
URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/ジーザス・クライスト・スーパースター

という作品で、敬虔なキリスト教徒たちからめちゃくちゃ批判されました。ロックですね!

 

 

「ジーザス・クライスト・スーパースター」の作曲者、アンドリュー・ロイド・ウェイバーは天才でして、ロック・ミュージカルの他にも「キャッツ」「オペラ座の怪人」なども書いています。

日本では劇団四季のおかげで、こちらの方が有名かもしれませんね。

 

ロック・ミュージカルとクラシックが混在するこの時代には、他に「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などのロングランミュージカルも生まれています。

「レ・ミゼラブル」は2013年に映画が公開されたことでも話題になりました。

 

 

その後は、1999年の「マンマ・ミーア」の成功に見られるような、特定のアーティストの曲で構成されたミュージカルがヒットしたり、

「美女と野獣」に始まる、ディズニーのブロードウェイへの参入が起こったりと、ミュージカルの多様化はさらに進みました。

 

また、脚本もその幅をどんどん広げてきています。

1996年の「RENT」は、同性愛、HIV、貧困といった、現代の社会問題を扱った超名作です。

 

そして、2016年には、「Hamilton」という、アメリカ建国の物語を描いたヒップホップ・ミュージカルが、大・大・大ヒットを記録しました。

動画を見てもらえば分かりますが、キャストやダンサーのほとんどが黒人です。そして、ヒップホップはもともと、黒人の音楽。

実際のアメリカ建国時には奴隷として虐げられていた黒人たちの子孫が、黒人たちの音楽とダンスで、アメリカ建国の立役者たちを演じる。

ミュージカルの真骨頂と言っても差し支えないでしょう。

 

 

しかし、このように「クラシックから離れ、ストーリーを複雑化させる」のが今のブロードウェイミュージカルの潮流なのかと思えば、そうとも言えないのが面白いところ。

「ラ・ラ・ランド」に限らず、黄金時代を彷彿とさせるような楽しいミュージカルは制作され続けていますし、昔のミュージカルの再演も常に行われています。

 

ブロードウェイの論理は単純明快で、「売れるものを、売れなくなるまで売る」ということ。

批評家にどんなに絶賛された作品でも、売れなければ数ヶ月でクローズしてしまいますし、一方売れる作品はいつまでも上演され続けます。

この仕組みが、60年前の作品である「王様と私」が2015年に再演されたり、「レ・ミゼラブル」が25年以上上演され続けたりしている理由なわけです。

 

この商業主義は批判されることも多々ありますが、

商業主義のおかげで、ある程度のレベルが保証された、素人も玄人も楽しめる作品が提供され続けている、つまりブロードウェイミュージカルが大衆のものであり続けている

ともいえるでしょう。

 

大衆に寄り添いながら、面白いものを作る。

これが、ブロードウェイミュージカルが廃れない理由だと私は思っています。

 

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女子校の申し子

美女にPV数を伸ばしてもらいがち。犬と一緒に毛布をかぶってテレビを観るのが最上級の幸せだと思っています。

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