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「実はおれ、バイセクシャルなんだよね」と言われたら。〜東大セクシャルマイノリティ支援団体「TOPIA」インタビュー〜

2017.01.23

こんにちは、りほです。

突然ですが、皆さん、大切な人はいるでしょうか。その人に、

「実は自分、同性が好きなんだよね」

と言われたら。あなたはどう答えますか?

2015年3月31日、東京都渋谷区で、「同性パートナーシップ条例」が可決され、同年11月5日から「パートナーシップ証明書」の発行が始まりました。

この条例は同性パートナーシップを法的に保障した日本で初めての条例であり、同性婚やセクシャルマイノリティについての議論を日本中に引き起こしました。

テレビのニュースでも大きく取り上げられ、セクシャルマイノリティに関する問題が広くお茶の間に届くきっかけになったのではないでしょうか。

そして、この問題は画面越しの遠い出来事でなく、あなたの身近に存在しています。

東大には、セクシャルマイノリティの方が気軽に集まり親睦を深めることを目的とするUT-topos

またセクシャルマイノリティの支援を目的とするTOPIAという団体があります。

今回は、TOPIAさんにお話を伺ってまいりました。

セクシャルマイノリティの方々はもちろん、自身の性自認や性的指向に違和感を感じたことのない人にも読んでほしい。

友達が「おれ、ゲイなんだよね」と言ってきたらあなたはどうしますか?

後輩が「わたし、実は身体の性は男なんです」と言ってきたらあなたはなんと返しますか?

誰かが発した「おまえらホモじゃん、気持ち悪www」という言葉が、あなたの同クラ、サークル同期、ゼミのメンバーを深く傷つけていたとしたら、あなたはどう思いますか?

そんなことを考えながら読んで頂ければ、と願っています。

セクシャルマイノリティが東大で感じる不便、受ける差別

2016年12月某日、渋谷のあるカフェにて。私は、突然の「取材させてください!!」という私からのメッセージに快く応じてくださったお二方と席についていました。

筆者「初めまして、今日は宜しくお願いします!」

918「はい。初めまして、TOPIAメンバーの918です」

シン「初めまして、シンと言います。当事者としてTOPIAで活動しています」

筆者「まずはじめに、東大で感じる不便や差別があったら教えていただきたいです。

…というか、絶対めっちゃありますよね」

シン「はい…。まずはやっぱり、差別的な言葉ですね。ホモとかキモいとか、明らかに差別的な言葉をよく聞きます。

セクシャルマイノリティが周りに存在するなんて、考えてもないんだろうなって思います」

918「なんか、ワイワイして、みんなが楽しければよくない?みたいな雰囲気がありますよね。

あとは異性愛者っていうことが確定してない段階での『彼氏いるの?』『彼女いるの?』とか、なんというか、みんな異性愛者だっていう前提で全てが進んでいくのが息苦しいと感じますね。

例えば同性愛者の人とかだと、性別を置き換えて話す人もいるんですけど、やっぱり矛盾が出てきてしまって嘘を積み重ねることになって、結局壁を作ることにつながってしまったりします」

筆者そうですよね〜って頷きたいんですけど、『彼氏いるの?』って、私も何も考えずに聞いてた…

なんて言うのが正解なんでしょう?」

918「うーん、『恋人はいるの?』とかですかね…

でも、アセクシャルみたいに、恋人がいる状態がありえないような人の中には、その質問自体が恋愛することを前提とするのでやめてほしいと思う人もいるし、

あと『みんな恋人はいた方がよい、いるべきだ』っていう価値観を不快に思う人もいます。これはセクシャルマイノリティに限らないですね。

唯一の正解はなくて、相手自身のことを考えて決めるといいと思います

・アセクシャル(日本語圏での用法)…性的感情と恋愛感情を抱かなく、(性愛・恋愛の意味で)好きな人がいない人々。

・ノナモリー…交際関係を求めない人々。

引用:TOPIA駒場祭展示「性的少数者に関する基礎知識」

シン「先生も差別的なこと言ったりするよね」

918「しますね」

筆者「えっ教授もですか」

シン同性愛者を馬鹿にしたり、変なものとして表現して生徒のウケを狙いに行ったりする先生を見たことがあります。なんか、全員ヘテロっていうことを前提として会話が続くので…ストレスが溜まります。

あと、セクシャルマイノリティの東大卒業生・学生・教職員が集まる、Porta Rubraっていう団体があるんですけど、それが東大の卒業生団体をまとめた雑誌みたいなのに載りかけたんですよ。

そしたら、それを編集した人の上司が『こんなもの載せるな』って言って切らせたっていう話を聞きました。伝聞なのでどこまで正確かわからないんですが…」

筆者「…やばい」

シン「トランスジェンダーならではの悩みも結構あります。

一番は性別欄ですね。トランスジェンダーにとって、自認する性別でないほうの性別に丸をつけなきゃいけないっていうのは、ものすごい苦痛です」

918「性別欄ってどの書類にもあるんですよね。医療系とかならわかるんですけど、ただのアンケートとかいらなくないか?と思います」

筆者「確かに。トランスジェンダーにとっては、性別欄に丸をつけるたびに、自分を否定することになるんですもんね…。

TOEFLだったかな、男女の他に『答えたくない』っていう欄を見たことがあります」

918「いいですね。でも、本当は、聞く必要がないのならその設問自体無いほうがいいですね」

シン他に代表的なのだと、やっぱりトイレは困ります…。多目的トイレが少ないので。7号館は最悪ですね」

筆者「悪しき7号館トイレ…」

シン「女子トイレが2階にしかないっていう不平等もありますし、最悪です。

あと、トランスジェンダーにとってオリ合宿も鬼門です。部屋割りとか入浴があるので。

だから廃止してほしいとかじゃなくて、説明をもっと早くにしてほしいですね。入学して、オリ合宿についてあんまり説明がないまま、突然上クラに来てって言われるじゃないですか」

筆者「そうですね。トランスジェンダー以外にも、例えば金銭的に厳しい人とかもいるだろうし、詳しい説明はもっと早くにあった方がいいですね」

シン「そう思います。もしかしたら事前に大学に申告したら考慮してもらえたのかもしれないけど、それが当事者には全く伝わってないので・・・

もし何らかの処置があるなら、それを知らせることも必要だと思います」

筆者「今、トランスジェンダーの方が東大で受けられる特別措置とかって何かあるんですか?」

シン「名前を変えられます。4種類くらい書類を提出するんですけど、通称名使用許可書っていう書類と、性同一性障害としての医師の診断書2枚と、あと親の承諾書が必要です」

筆者「親?!」

多くのセクシャルマイノリティの方々にとって、親へのカミングアウト(自分がセクシャルマイノリティであることを伝えること)は非常にデリケートな問題です。

シン「たいてい大戦争を引き起こします。成人してても必要なんですよね」

918「それ、親が亡くなってたらどうするんですかね…」

シン「どうするんだろう…」

筆者「めちゃくちゃデリケートなところを直球で刺してきますね。提出した後はどうなるんでしょう?」

シン「所属する学部の教授会に通されます。ただ、それって、アウティングの可能性があるんですよね。知られたくない人に知られてしまう」

※アウティング…セクシャルマイノリティであるという事実が、本人の許可なく周囲に知れてしまうこと

筆者「またデリケートなところを直球で刺してきた…」

シン一番問題なのは、こういう対応ってマニュアル化されてなくて、対応してくれる職員さんとか教授によってどうなるか変わってしまうんですよ。学部によっても違いますし。

教養学部は前例があるし、手続きを踏んだこともあるらしいんですが、進振り後の学部は、学部によってどうなるかもう本当にわからないですね」

筆者「本当にひどい場合は、相談中に差別的な言葉を投げかけられて、必要な措置も取ってもらえなくて、自分のセクシャリティを広められる可能性もあるってことですもんね。怖すぎないかそれ…」

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