「演劇以外ありえなかった」東大卒・演劇一本で生きる笠浦さんの「すべてを捨てる覚悟」

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あなたの「好き」って、本物ですか?

好きなことを続けたい、仕事にしたい。誰だって思うことです。でもその好きって本物ですか?

ここに、本物がいました。演劇が好きで、本当に好きで、全てを捨てて演劇を仕事にしている人です。

「私も演劇好きだし気になるな〜」と軽い気持ちで取材に行ったら私にとって、彼女はまぎれもなく衝撃でした。心して読んでください。

  1. 笠浦静花さん
  2. 教養学部2014年卒業 東大駒場の演劇サークル TheatreMERCURY出身
  3. やみ・あがりシアター 主宰・脚本・演出 

 

演劇以外の選択肢は存在しなかった

筆者「ご卒業されてからも、ご自身が在学中に立ち上げた劇団を演劇一本で続けられているとのことで」

笠浦さん(以下笠浦)『大学3年の時に「やみ・あがりシアター」っていう劇団を立ち上げて、今に至ります』

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筆者「周りは普通に就職していく中で、演劇を続けるって、当然相当な覚悟が必要だったんじゃないかと思うんですが」

笠浦むしろね、あっさり就職していった同期に対して、「お前ら好きだったんじゃないの?」って思う。』

筆者「グサッ……」

笠浦『夜通し、あの劇団がどうだとか、あの演出はこうすべきとかって語って、私より明らかに演劇に懸けていた人たちが、みんな辞めていくあの時間は嘘だったのかなって。

筆者「それはしょうがなくないですか……」

笠浦『でも結局、演劇が好きだったっていうよりも、居酒屋でアーティスティックなことを語りたかっただけなんじゃないのって』

筆者「手厳しすぎる」

働く時間がもったいない

筆者「就活は全く考えなかったんですか?」

笠浦『社会人劇団(※会社勤めをしながら演劇をする劇団)も考えたんだけど、時間がもったいないんだよね。』

筆者「時間がもったいない・・・?」

笠浦『フリーターだったら毎日稽古ができるでしょ』

筆者(マジもんだ……) 

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筆者「就職しないことについて、ご家族に心配されたりとかは……?」

笠浦『まだ納得させられてないですね。でも公演だけは観に来てくれています』

 

できなかったことばかり思い出す

筆者「でも演劇だけをやり続けるって、どれだけ好きでもなかなかできないと思うんです。私も演劇好きなつもりですけど、どこかで満足したり、飽きちゃったりとか」

笠浦「飽きるんなら初めからそんなに好きじゃなかったんだろうし、本当に好きなら満足するってありえなくないかな。

筆者「なんというか、真実の愛しか許さない! って感じですよね」

笠浦「そうかな? やってもやっても、今回はあれができなかった、これができなかった、っていう無念が積み上がっちゃうんだよね。だから満足するって考えられない。前の公演で吊れなかった灯体(照明)の夢とか見たりする。本当に悔しいんだよね』

筆者「夢に出てくるほど使いたかったんですか……なんか、私なんかが演劇好きとか言ってごめんなさいって気分です」

演劇との出会い

筆者「笠浦さんがこれほど一途に愛し続けている演劇。出会いはいつだったんですか?」

笠浦さん『中学生のとき。親が転勤族だったので、訛りを直したくて。それで演劇部に入って、そこからずっと続けてる。主に役者をやってたかな』

筆者「今は主に脚本と演出をされてると思うんですが、始めたきっかけは?」

笠浦『大学時代には駒場のTheatreMERCURYに所属していて、その2年の夏合宿が最初だったかな。私の同期には演出をやりたい子は多かったけど、役者を上手く使う気のある人はあまりいなくて。だから自分でやろうって』

▲やみあがりシアター第6回公演「マルカジット、マーカサイト」の様子

 

筆者「役者を上手く使う、ですか」

笠浦『役者を上手く魅せることって、実は役者自身よりも半分以上書き手の問題なんだよね。書き手が配慮して書けばいいだけの話で。』

筆者「確かに、台本がめちゃくちゃ面白くて演出が良かったら、いい役者に見えるし、演じてて楽しいだろうなぁ」

笠浦『私は役者をずっとやってきてたから、やりづらい役をやらされることが役者にとってどんなにつらいかわかるつもり。だからなんとかしたくて。それが作・演出をやったきっかけかな

東大が誇る最高の劇場・駒場小空間

笠浦『東大で演劇をして良かったことは、駒小が使えたこと。(駒場小空間。東大駒場キャンパス多目的ホールの通称。駒場演劇団体の多くが公演に利用する。生協書籍部の奥にある灰色の建物のこと。)本当にいい劇場なんですよ。大好き。』

筆者「確かに、大学が持っている劇場としては破格ですよね」

笠浦『普通に借りたら1週間で100万は軽く越えるようなレベルの劇場なの。

すっごく面白い劇団でも、東大外だと駒小の半分くらいの劇場しか使えないのに、下手な劇で駒小使ってると腹が立つんですよね。

以前、駒小の劇を見ながら、あまりのつまらなさに怒って太ももをひっかきすぎて、気づいたら血だらけになってた

筆者「尋常じゃない」

▲人の2倍以上の大きさのプレゼント箱が突如駒場小空間に出現した「ハコモノズキ」の公演

笠浦『でも基本は、駒場にいる間しか使えない。だから、やみ・あがりシアターの第三回公演「ハコモノズキ」っていう公演は、駒小っていう最高のハコ(劇場)にお別れするために作ったの。

クリスマスにまつわるおもちゃ屋さんのお話だったんだけど、3m以上高さのあるプレゼント箱を舞台に配置して、箱がパカって開いて開演するっていう仕組みでした』 

卒業してからも演劇を続ける方法

筆者「大学卒業してからも演劇を続けるって、どうすればいいのかイメージがつかないのですが」

笠浦『具体的に、いくつかルートがあって。大学系、劇団系、劇場系かな。大学系っていうのは、早稲田大学とか演劇がすごく盛んなとこで劇団に入って、そのまま行くルート。

劇団系っていうのは、成功してる劇団に入れてもらって、人脈と能力を培うルート。

私もある劇団に演出助手として参加してたことがあったんだけど、本当に演出につきっきりで、3日とか寝ないで一緒にあれこれ考えたりとかした

筆者「ストイックとかいうレベルではないですね」

笠浦『私は今、劇場で働いてる。そこの公演を無料で見させてもらったり、色んな劇団の人とお話させてもらったりして少しずつ人脈を得ていくっていう劇場系のルートね』

筆者「戦略が必要なんですね……」

笠浦『劇団を大きくすること、前に進めて行くことだけ、ひたすら考えて行動してる。演劇やるには、人脈がどうしても必要だからね。スタッフさんも役者も集めなきゃいけないから。まぁ経験上、マジで頼めば大体なんとかなるけどね』

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お客さんの納得が全て

筆者「過去の作品より面白くないんじゃないかみたいな、過去の自分を越えられないかもしれない恐怖ってないんですか?」

笠浦『あるある。自分の前の作品に勝てるのか、期待に応えられるのかどうかっていうのは、脚本を書いている時も、稽古をしている時も、仮説を組み立てている段階でしかないんだよね。本番までは本当に不安。

本番、お客さんが納得して見てくれているかどうかっていうのは嫌でも感じる。

その本番の瞬間のために、自分がしていることが、本当に面白いかどうか、伝わるかどうか、ずっとずっと疑い続けて、その疑う自分を、納得させようとし続けてる。

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好きを選ぶということは、他を全て捨てるということ

筆者「好きなことを本当に突き詰めていく人と、そうでない人って、どこで分かれるんでしょうね」

笠浦『他の全てを譲れるかどうかという話だと思う。私の生活は本当にギリギリ。

あまりにお金がなくて、周りの人が服を恵んでくれる。だから参加してない公演のTシャツいっぱい持ってます。ろくに食べれてないし、寝れてないし。人としての最低水準をこすっていってる(笑)』

筆者「そ、そんなにですか……

笠浦『前回公演の舞台で石を100㎏使ったんだけど、砂が出ちゃうでしょ。だから、全部自宅でひとつひとつ洗ってニスを塗ったの。そしたらふとんが砂だらけになって。で、その大量の石を家に置いておいたら、湿気がすごいもんで、布団全面がカビた。

筆者「嫌すぎる」(本当にグロ画像らしいので写真掲載は断念しました)

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すぎ山食堂での取材風景

笠浦『突き詰めれば、他に欲しいものがなくて、一人で死んでいいと思えるのなら、っていうことだと思う。自分以外の人を安定させたいとか、綺麗なお洋服着たいとか、そういう欲があるならできない選択だね』

筆者「そこまで思い切って一途に何かを愛し続けるって、憧れると同時に、できないなと思っちゃいます」

笠浦『やりたいことをやらせてもらうって、本当に自分勝手なことだから、他の人にとやかく言う権利は全くないと思ってる。

客観的に見て、やりたくないことを飲み込んでちゃんと就職して納税している人の方が立派に決まっている。でも私はそれができないから。それだけ。


 終始ありえん多量のエネルギーをひしひしと感じました……。

信じられないほどに愚直で、あまりに一貫していて、絶対に妥協できない人でした。そしてその目には一片の迷いも曇りもない。だからこそ自分にも人にも厳しくて、好きなことへの真実の愛しか信じないロマンチストのようにも映りました。

逆に、色んな事に中途半端な自分が恥ずかしくなりました。

ぜってぇ次回公演観に行くぞ。

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そんな笠浦さんが次に出演する舞台は、11月5,6日!

『ビハインド スコアボード』 11/5-6@高田馬場ラビネスト

スコアボードの裏側のお話。巨大な手動の得点盤の裏で働く人たちが出てきます。「劇団高校四年生」OBの小河優祐さんのプロジェクト劇団「コボルテ」の旗揚げ公演です。

笠浦さん曰く『劇団を背負って生きて行くつもりの私にとって、このタイミングで学生の劇団に役者で出るのは何のメリットもないんだけど、主宰の小河くんに頼まれて侠気を発揮してしまいました』とのこと。

役者としての笠浦さんを観れるチャンスは、もう滅多にないかもしれません。

そしてなんと、この劇、UmeeT編集長の杉山も出演します。なんなら主演です(!?)そしてほとんどUmeeTそのまま、みたいな役どころらしいです……?

是非、笠浦さんの生の演技を見に行きましょう! (ついでに編集長の演技も!)もちろん私も行きます。

<ご予約はこちら!>

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『ビハインド・スコアボード』稽古中の一枚

そして笠浦さんが主宰する、やみ・あがりシアターの情報はこちら。

演劇サークル TheatreMERCURY出身の笠浦静花、本間結が大学在学中の2012年に立ち上げた劇団。
「ヒトのやんでるところとあがってるところを両方、病気が治ったばかりのようなハイテンションでお届けしたい」
というコンセプトのもとに芝居作りを行う。

次回公演は2017年3月を予定。

公式HP:やみ・あがりシアター

Twitter:@yami_agari_t

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ABOUTこの記事をかいた人

うみべ

拠点を転々としているひと。おしゃべりと歩くのが好きです。 活字文化は好きですが活字は嫌いです。

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