「資金調達より、手を動かしてユーザーと対話するのが面白い」
落ち着いた口調でUmeeT取材陣にそう語ったのは、Gunosyの創業メンバーだ。
株式会社Gunosyは、ニュースアプリ「グノシー」や「ニュースパス」の開発・運用を手掛ける東大発ベンチャー企業である。2012年の設立からおよそ2年半でマザーズ上場とアプリ累計1600万ダウンロードを成し遂げ、設立4周年を11月14日に迎えた今も順調な成長を続けている。
若干27歳で上場企業の社長になった代表の福島さんは、東大の学部在学中から起業サークルTNKに所属。大学院工学系研究科システム創成学専攻在籍時に学部の同級生だった吉田・関両氏とサービスを始めた。三人は企業の内定も得ていたが、周囲から好評を得ていたGunosyのサービスを続けるために、修士課程修了後は揃って起業を選択した。
テレビCMを展開するなど派手な印象が強かったGunosy。事業が順風満帆な中で、思いっきり遊んできたのでは…?
そんな取材陣の勝手な想像と裏腹に、インタビューに現れた創業メンバー三人は、ユーザー目線のサービスづくりに真剣に向き合う生粋のエンジニアだった。
―最初に自己紹介をお願いしてもよろしいですか?
福島 PSI(工学部システム創成学科知能社会システムコース)にいました。
吉田 同じくPSI、大学院からTMI(工学系研究科技術経営戦略学専攻)、データ分析部とGunosy開発部で部長をしています。
関 学部は福島吉田と同級生で、修士はTMIにいました。今は会社でデータ分析をしながら東大の松尾研で博士課程をやっていて、来年3月修了予定です。
ーありがとうございます。それではまず、サービス作ったきっかけをお聞きしてもよいですか?
福島 きっかけはすごくシンプルで、起業しようとかいう考えは特になくて、何か面白いサービスを作ってみたいよねっていうところからスタートしています。当時ベンチャーが流行っていたんですが、ピンとくるものがなくて、これって世の中を良くしているのか、自分たちが便利になっている実感を得られないサービスが多かったんですよ。もともと自分たちがデータマイニング系の研究をやっていたので、そう簡単には人が真似できないようなサービスを作りたいと思ったことがきっかけでした。
当時RSSリーダが流行っていて、たくさんサイトを登録して、15分で1万記事読むライフハックみたいなものがあったんですが、非常に非人間的なのと全く頭に入ってこないので(笑)、意味があるのかなと。それから当時SNSが出てきて、個人のデータがたくさん取れるようになったので、それを解析したら良いRSSのフィルターができるのではないかという発想からGunosyが始まっています。なので、最初は自分たちが持っている技術を生かして、自分たちが便利になるようなものが作れたらいいなと思っていました。
―それは、福島さんがそういうことをやろうと言って声をかけたのですか?
そうですね。やる段階では特に作るものは決まっていなくて、「暇だからサービス作ってみない?」という感じでしたが。
―どなたか憧れていた人がいたりしたんでしょうか?
インターネットの世界で、自分たちがサービスをつくるというのは、結構普通の考え方で、少ない人数でより多くのユーザーを相手にできるというところに魅力を感じて、この業界の勉強をしていたので、そこは自然と。やってみて上手くいったら、どんどん時間使ってみようよみたいなノリでしたね。サービスをつくることは面白いということがフィーリングとして合っているメンバーに声をかけたという感じです。
―お二方も、そういう話に共感されていたんですか?
吉田 いや、最初はたぶん、そんな話はしてないですね(笑)。
福島 最初は「こういうの作ってみると面白そうだからやらない?」という話をしてましたね。
―Gunosyの元になるアイデアを聞いたときは、どう思われましたか?
吉田 「そっかぁ」っていう感じでしたね(一同笑)。学生時代は暇なので「作ろっか」みたいな。特に始めがM1の夏休みで、学科も暇なところなので。
―その時にはすでに、3人のフィーリングが合うことはわかっていたんですか?
関 まあ三人ともプログラミングをやっていて、ネットサービスも好きで、というところですかね。
―もともとデータマイニングなどの分野に興味を持ったのはなぜでしょうか?
関 コードを書くのが好きだったんですけど、所属していた学科の研究室は経済シミュレーションばかりやるところでした。ちゃんとしたコード書けるのがそういうところしかなかったというのもあるんですけど、データを元に人の考え方を知るのは面白いかなと。それって考えるのすごくめんどくさいんですけど、それがログから分かるのは面白いと思っているところはありますね。それは当時も、今でもそうです。
―学部時代から研究が好きだったんですか?
福島 研究は嫌いでしたね(笑)。
吉田 PSIっていう時点で、研究はあんまりやりたくない(笑)。
福島 研究された技術を、上手く社会に生かしていくこと自体がまた研究になってくる。新しい技術をこだわって作りこんでいくっていうよりは、どうすれば社会に応用してユーザーが使える形になるか、というところが面白いと僕はずっと思っていたので。
関とかはサービスも好きだし、データの裏にある心理を追求するのが好き。僕はどちらかというと研究で上がってきた成果は全て手段だと思っていて、そこからいかに社会にとっていいものを作るかという方に興味があって、吉田は何を考えているかわからない(笑)。
―実際はどうなんですか?
吉田 そうですね。多くの人が使うサービスが作れればいいかなと…。
関 僕とかは研究好きだから今でも大学に行ってやってますし、三人の方向性は違いますね。
―三人の方向性が違うからこそ良かったということは…。
福島 そういう美談はないですね(一同笑)。
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