【東大生が徹底分析】これからの官僚に求められる考え方とスキルとは?【制度改革で何が起こるか】

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「専門性」が求められる時代

官僚が活躍できる、活躍すべき領域は残されています。それは「目立たないが重要な政策」を粛々と実行することです。

当然ですが政治家、特に首相が全てを決められるわけではありません。冒頭で取りあげた事例の通り、「あまり専門性の要求されない分野」あるいは「方針に関してのみ」政治家が関わる余地があります。それ以外の領域において、優秀な官僚が活躍しなくてはいけないのではないでしょうか。

例えば、先日医学部の学生から次のような話を聞きました。
公衆衛生の分野では、玄米は無機ヒ素を含むため毎日の摂取は奨励していないそうですが、厚生労働省が健康促進と謳い毎日の玄米摂取を推奨しようとしていたため内閣府の食品安全委員会がストップをかけたそうです。
食品中の無機ヒ素の慢性曝露は皮膚の他に肺や尿路に発がん性を示し、特に米の周りの「糠」に多いとされ、発がんなどの根拠に基づいて幾つかの欧州当局が摂取制限をしています。*12
 

警察庁は実証実験の結果を踏まえ視覚障害者の方のための音響信号のメロディー変更を行っています。*13

他にも交通事故の多発を受けて対策に乗り出したのも警察庁です。
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死者減少の理由の一つに「シートベルト着用率上昇」が挙げられます。後部座席での着用を義務化した直後から着用率が急増しています。

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外交分野からは二つ事例を紹介します。
一つは、過労死という大変残念なニュースで取り沙汰された外務省の松田交渉官の話が有名です。交渉のプロになるだけではなく、具体的に必要な貿易関連のルールについて膨大な資料を読み込み、本来の専門の担当官よりも精通していたと言われています。*16
ここで重要なことは、単に交渉にあたるだけではなく松田交渉官は「TPPのその先」を見据えていたことです。

もう一つは、在外公館数の増加です。産経ニュースは「外務省は、南太平洋のサモアやインド洋のモーリシャスなど4大使館を含む5カ所の在外公館新設のため、28年度予算案に9億円を計上した。」と報じています。*17
この背景には、他国と比較した時に「外務省職員の数」ならびに「在外公館の数」が少ないことが挙げられます。
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外務省は上記理由から、従来から予算の計上と外交機能の強化を訴えており、ようやく実現しました。

また情報収集はもちろんのこと、日本製品のセールスなどの狙いも込められているようです。

上記事例のように、「専門性」を活かし「目立たないが重要」な政策を行うことが大切になってきます。

ヒ素の例や横断歩道の音響、在外公館数などの話は、恐らく一般にあまり知られていません。多くは読み飛ばされてしまうようなニュースでしょう。しかし国民の健康や視覚障害者の方の安全、外交への影響などどれも重要な施策です。

 先日ノーベル賞を受賞された大隈教授は「誰もやっていないことを見つける」ことの重要性を説かれていました。「誰にもできる」「誰かが既注目している」ものに注力してもリターンは少ないはずです。

くまモン以降のゆるキャラ市場を見れば明らかです。今からゆるキャラを作っても、もはや大量に存在するため注目を集めるのは難しいでしょう。言語でも同じことが言われています。今更英語に特化しても英語ができる人材は供給過多なのでそこまで需要はありません。もちろん英語能力は大切ですが、実はインドネシア語の方が有用と言う人もいます。なぜかというと人口が多く経済も発展しつつありビジネス関連で需要があり、且つ供給が少ないからです。

 
そしてまさに上記のことを理念として活動しているのが「瀧本ゼミ政策分析パート」です。

例えば瀧本ゼミでは、これまで突然死を減らすためにAED設置条例の制定に向けて地方議会にロビイングを行ったり、火災において初期消火が重要ということで消化器に関する論文を大学教授と協働して執筆したりしています。

また現在も新規プロジェクトが次々と発足しており、理系学生含め多様な人材が多様なジャンルの問題を扱い活動の幅を広げています

社会において「新規かつ重要な問題」を発見・実行していくことに興味のある方は是非一度見学に来てみてください。

瀧本ゼミ政策分析パートHP
http://seisaku.strikingly.com/


*1「法律の改正案を自動作成 政府、働き方改革へ新システム」 日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H1H_W6A920C1PP8000/ (参照 2016/10/10)

*2 「国家公務員、毎年2%削減 政府が方針決定」 日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS25H12_V20C14A7PP8000/ (参照 2016/10/17)

*3『「戦力外通告」の財務省、最後まで蚊帳の外 増税の「誤ち」認めず官邸が不信感』産経ニュースオンライン http://www.sankei.com/premium/news/160602/prm1606020004-n1.html (参照 2016/10/03)

*4 国立国会図書館, “ISSUE BRIEF 消費税を巡る議論”
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0609.pdf (参照 2016/10/09)

*5「官邸、宮内庁にてこ入れ=お気持ち表明で不満」時々ドットコムニュース http://www.jiji.com/jc/article?k=2016092500057&g=pol (参照2016/10/03)

*6 「安倍が天皇“お気持ち表明”に報復人事安倍官邸が天皇“お気持ち表明”に報復人事! 宮内庁に子飼いの公安警察人脈を送り込み天皇を監視、封じ込め」 LITERA http://lite-ra.com/2016/09/post-2589_3.html (参照 2016/10/10)

*7 「慎重論にも意向変わることなく」NHK NEWS WEB http://www3.nhk.or.jp/news/special/japans-emperor/ (参照 2016/10/10)

*8 村松岐夫(2011) 『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』,p35, 東洋経済新報社.

*9 伊藤光利(2006)「国会「集合材」モデル」,村松岐夫・久米郁男編『日本政治 変動の30年』,p40 ,東洋経済新報社.

*10 笠京子(2006) 「日本官僚制—日本型からウェストミンスター型へ」,村松岐夫・久米郁男編『日本政治 変動の30年』,p223-p255 ,東洋経済新報社.

*11 待鳥聡史(2012)『首相政治の制度分析』, p114-p122, 千倉書房.

*12 例えばEU全体では食品中の無機ヒ素の最大基準値に関する規則(EU)No 1881/2006 改正Commission Regulation (EU) 2015/1006 of 25 June 2015 amending Regulation (EC) No 1881/2006 as regards maximum levels of inorganic arsenic in foodstuffs (Text with EEA relevance)
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:JOL_2015_161_R_0006
委員会規則(EU)2015/2006
ドイツなどでは
Rice and rice products contain high levels of inorganic arsenic 11.06.2015 http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2015/14/rice_and_rice_products_contain_high_levels_of_inorganic_arsenic-194366.html(ドイツ連邦リスクアセスメント研究所)

*13 「横断歩道、減る「通りゃんせ」 音響信号「ピヨピヨ」化」 朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASJ9N3VTNJ9NTIPE00Z.html (参照 2016/10/10)

*14 画像出典(http://www.jiko110-akb.com/diary/%E5%A4%8F%E4%BC%91%E3%81%BF%E7%89%B9%E5%88%A5%E4%BC%81%E7%94%BB%E3%80%80%E4%BA%A4%E9%80%9A%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%A7%E4%BA%A1%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1%E3%82%AD/ )

*15 警察庁交通局/一般社団法人日本自動車連盟(2015)「シートベルトの着用状況について」
http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/seatbelt/npa_jaf_research27.pdf (参照日 2016/11/6)

*16 「TPP合意にかけた或る外交官の死」 NHK NEWS WEB http://www3.nhk.or.jp/news/imasaratpp/2016_0211.html (参照日 2016/10/23)

*17 「外務省、来年1月に6カ国で大使館開設へ」産経ニュースhttp://www.sankei.com/politics/news/151228/plt1512280074-n1.html (参照日2016/11/6)

*18「第4章第3節2外交実施体制の強化」.外交青書, 平成27年度版.外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2015/html/index.html

【参考文献】

飯尾潤(2013) 『政権交代と政党政治』, 中央公論新社.

川人貞史(2015)『シリーズ日本の政治1 議院内閣制』, 東京大学出版会

野中尚人(2008) 『自民党政治の終わり』, ちくま新書.

待鳥聡史(2012) 『首相政治の制度分析』, 千倉書房.

待鳥聡史(2015) 『政党システムと政党組織』, 東京大学出版会.

御厨貴(2012) 『「政治主導」の教訓:政権交代は何をもたらしたのか』, 勁草書房.

村松岐夫・久米郁男編(2006)『日本政治 変動の30年』,東洋経済新報社.

村松岐夫(2011) 『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』, 東洋経済新報社.

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瀧本ゼミ政策分析パート

瀧本ゼミ政策分析パートは、京大客員准教授である瀧本哲史氏のもと、政策立案だけに留まらず、起業・研究なども含めて、幅広い形で問題解決を行う自主ゼミナールです。週1回のゼミでは、政策分析の発表を行ったり、プロジェクトの進捗報告、勉強会などを実施しています。

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