【東大生が徹底分析】これからの官僚に求められる考え方とスキルとは?【制度改革で何が起こるか】

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 「官邸主導」は本当に起きているのか

 まずは、「官邸主導」が進んでいることを示すデータを三つの観点からご紹介します。

①官僚の意識調査

②政治家の行動調査

③首相の面会データ

 

官僚は「政治家が主導権を持っている」と認識

 「国の政策を決める上で最も力を持っている」と官僚が認識したもの

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上のグラフは「現代の日本において、国の政策を決める場合に、最も力を持っているのは、次の中のどれだと思われますか」という問いに対して官僚が回答したものです。*8 
1976年、1986年、2001年と「政党が力を持っている」という回答が増えています。官僚の認識レベルでは、主導権が政治家に移っているようです。

 

政治家と官僚の接触は減少傾向に

次のグラフは官僚と与党一般議員の接触の頻度を表したものです。
官僚に対して行ったアンケートで「頻繁に(毎日、いつも)、時々(数日に一回)、ある程度(一週間に一回くらい)、あまりない(一ヶ月に一回)、ほとんどない(一ヶ月に一回未満)」の尺度で尋ね、集計されています。

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*9

 二点観測ではありますが、官僚と一般議員の接触は減少していると読み取ることができます。

明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授の笠京子は、第一回(1976-77年)、第二回(1985-86年)、第三回(2001年)の官僚調査を分析した上で、官僚と族議員や利益団体の接触は減少し、同時に官僚は内閣の影響力を大きく認識するようになっていると指摘しています。加えて、政治的中立な立場からの専門的な政策提案と行政執行を官僚は自らの任務と捉えていると述べています。*10

これらから官僚の役割は脇役へと転じ官邸に権力が集中していると考えられます。

以下、首相の面会データを用いて本当に官邸の影響力が強まっているかを検討していきます。

 

首相が一般議員と会う回数は減少している

待鳥(2012)では、朝日新聞の首相動静記事を利用し首相の面会データを分析しています。*11

 次のグラフは、竹下・海部・小泉・安倍(一次)各総理の就任一年目における面会パターンを割合で示したものです。

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竹下・海部の場合に比べ、小泉・安倍では執政部との面会が増えています執政部の重要度が増していることが窺えます。

 この傾向は、その後の福田・麻生・鳩山・菅と続いていきます。以下は前記4名の全在任期間の面会データです。

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麻生政権時にやや竹下・海部時と同様の傾向が見られるものの、特筆すべきは政治的リーダーシップの弱かった福田政権でも小泉・安倍時に類似している点です。
これらのことから政権担当政党や首相のパーソナリティーに依存せず、「官邸主導」の傾向があると推察できます。

 

「官邸主導」の原因

根底にあることは1980年代から湧き起こった「政治により民意を反映すべき」という動きです。当時、KDD事件やリクルート事件など、自民党と中央官庁、利益団体が関わった汚職事件が多数明るみに出て問題視されるようになりました。そうした世論の影響を受け、幾つかの政治制度改革が進行していきます。

具体的には小選挙区制導入、政治資金規制改革、地方分権改革などです。
小選挙区制導入・政治資金規制改革により、各候補者は選挙区全体から多数の支持が必要となり資金も政党から配分されることになったため、利益団体ではなく政党に依存していきます(待鳥2012)。1980年代から続く一連の地方分権改革も「利益誘導政治」の終焉を目指したものでした(御厨2011)。


ー各制度についての補足説明ー
【小選挙区制】
特徴は一つの選挙区から一人の候補者しか当選できない点です。以前の中選挙区制では同一選挙区から数人の当選者が出ました。したがって同一政党から複数人候補者が擁立され、同一政党の候補者同士もライバル関係にありました。結果として各政治家が自らの支持団体に利益配分を行う「利益誘導政治」が重要になりました。ところが小選挙区制では、そうした事態は起こらず一般有権者から広く支持を得る必要があり、各候補者は政党の方針に従い「マクロな視点の政策」を提示するようになりました。
【政治資金規正改革】
この改革により個人や団体からの献金が原則として禁止となり、代わって「政党助成金」として国から政党に選挙費用が配分され、更に政党から各政治家に分配されるようになりました。結果として、政治家は政党に資金を頼ることとなり容易に反発できないようになりました。
【地方分権改革】
従来は国が地方自治体に予算を配分していました。しかし予算配分はまさに官僚の特権であり公共事業費などを分配する、利益誘導政治の温床となっていました。そこで地方に財源を移すなどし、国が分配するのではなく地方自治体が自ら財源を確保できるような制度改革が断続的に進められました。


以上の改革に加え、橋本龍太郎政権の行政改革で首相・内閣府の権限を拡大する法整備が行われ(野中2008)、小泉改革では経済財政諮問会議の活用や省庁幹部職員の人事介入が進められました(飯尾2007)。

この流れは現在も続いています。第二次安倍内閣では2014年に国家公務員制度改革関連法を成立させ、官僚人事への介入をさらに強める法整備などを行っています(川人2015)。

先進国諸国でも無党派層が増え、「利益団体の活動=民意の反映」という構図は崩れていく傾向にあります。
いかに一般市民の民意を汲み取っていくかが重要になっている昨今の事情を鑑みると、この流れは続いていくと予想されます。

これらを踏まえると、まさしく「制度的」に官僚の権限は弱められているように思われます。

もはや官僚は政治家に従って事務作業をこなすだけの職業となってしまったのでしょうか。

次ページ:では、これからの官僚はどうあるべきか?

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瀧本ゼミ政策分析パート

瀧本ゼミ政策分析パートは、京大客員准教授である瀧本哲史氏のもと、政策立案だけに留まらず、起業・研究なども含めて、幅広い形で問題解決を行う自主ゼミナールです。週1回のゼミでは、政策分析の発表を行ったり、プロジェクトの進捗報告、勉強会などを実施しています。

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