「東大生こそ、起業しよう」マッキンゼー出身、電子回路のイノベーター・AgIC清水社長に聞く”これからのキャリア”

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電子回路を印刷する−−−想像できるだろうか?

あらゆる電子機器に入っている電子回路は、いわば機械における血管です。わたしたちにとって身近なパソコン、スマホ、はたまた電子レンジにも。

この電子回路は従来、材料を塗ってから必要な部分以外を溶かして作られていましたが、なんと、必要部分だけ「印刷」する“プリンテッドエレクトロニクス(PE)”の時代がまさに到来しようとしています!

そんな新分野の中でも今一番波に乗りまくっているベンチャー、「紙に描ける電子回路」で有名なAgIC株式会社の清水社長にお話を伺ってきました!!

理系も文系も、大学院生も学部生も、起業に興味ある人も「起業何それ?」な人も、起業に対して何とも言えない感情(後述)を抱いている筆者がインタビューしてきたので、安心してお読みくださいませ。

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2016年10月某日、本郷付近のAgICオフィスにて−−−。

「どうぞ、こちらの部屋でお待ちください」

案内された部屋には謎の物体がちらほら。椅子の上に置かれている、毛布のようにたたまれたシートはいったい・・・?

 

「これ、ヒーターなんですよ」と気さくに説明してくださったのはAgIC・清水信哉社長だ。

👉学生証

  1. お名前:清水信哉さん
  2. 経歴:16歳から電子回路設計を始め、17歳からは論理ゲートからのPC設計を始める。電子情報工学科に進学し、電気自動車設計サークルに所属。化学・電気・機械・そして情報と幅広くエンジニアリングを学ぶ。情報理工学研究科で修士を取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでビジネスを学び、2014年に独立しAgIC株式会社を立ち上げる。

 

起業するまで 〜運命の出会い〜

Q.学生時代から起業にいたるまでの経緯を教えてください。

もともと、高校生の時には化学オリンピックに挑戦したり、16歳から電子回路の設計をしたり、17歳から論理レベルからCPUを設計したりしていました。大学に入ってからは電子情報工学学科に進み、電気自動車を作るサークルを創設し電気自動車を作ったりしていました。化学や電気や機械、そして専門は情報と、エンジニアリングを一通り学んできました。

(化学しかやってきていない割に全然習得できていない筆者「・・・(すごすぎる)!!」)

そして、修士を出た後について考えた時、メーカーにいっても面白くなさそうだな、って思いました。周りの電気系の人々はみんなメーカーに行きましたが、僕は自分の手でモノ作りをしたかったんです。大企業だと、自分の作りたいものを作れるようになるまで十年以上かかりますよね。それは嫌だな、と。

じゃあ会社を作るしかないかなとも思いましたが、ずっとエンジニアリングをやっていて、当時はスタートアップという言葉もベンチャーキャピタルという言葉も知らなかったので、マッキンゼーに入ればわかるかなと思って入りました。

(理系修士出たら順当に企業技術職就職を考えている筆者の背中に冷や汗が・・・。最近感じるもやもやを見事に言い当てられた気分であります。)

マッキンゼー入ってから二年間くらいして起業したんですが、これには良い出会いがあったんです。当時僕は仕事でボストンにいて、MITのメディアラボにいた東大の川原先生にお会いして、プリンテッドエレクトロニクスの技術を聞いたんです。その時すぐに「これで起業したい」と思いましたね。

実はスタートアップといっても、本当に新しい技術を使ってやっているところはそれほど多くないんです。でも私はやっぱり技術者なので、マーケティングとかブランディングではなくて技術力で勝ちたいと思ったんです。しかも、日本は印刷技術が世界一で、素材も強い。プリンテッドエレクトロニクスならこの日本の強みを存分に活かせるのではないかと思いました。

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Q.「この技術ならいける」と思ったのは、エンジニアリングの幅広い素養があったからでしょうか?

そうかもしれません。しかし最初はそこまで戦略とかはありませんでした

当時マッキンゼーやめてスタートアップをやろう、となった時私は25歳でした。25歳で始めれば失敗しても30歳。何も問題ないですよね。

実際に25,6歳の独身が一番スタートアップに向いているという話があります。若すぎても経験がないし、歳をとるとリスクを取れないし仲間を集めるのが難しい。あの時起業したのは良いタイミングだったと思います。最初から勝算があったわけではないし、2年半経った今もそうです。

(論理的でわかりやすく話してくださる聡明さの塊のような清水社長に「最初から勝算があったわけではない」と言われると、少しホッとします。)

Q.仲間集めはどうされましたか?

やはり友達、元から知っている人をとるしかないです。それは人数の少ないスタートアップにおいては、一人でも性格の合わない人がいるとチームが崩れてしまうから。25,6歳というのは一番仲間も集めやすい頃で、大学の後輩・同期・先輩を中心に友人ベースで集めることができました。

あと、やっぱり場所は大事です。それはそこに集う人が大事なので。この大都市のど真ん中にトップの大学がある東京はすごいと思います。最近ではシリコンバレーよりもサンフランシスコにオフィスを置く企業が増えてるんです。田舎のシリコンバレーではなく、都会のサンフランシスコじゃないと人が集まらない。私は本郷をテクノロジー系ベンチャーの場所にしたいと思っています。

(テクノロジーベンチャーの街・HONGO…ワクワクしますね!!)

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ベンチャーだからこそ、できること

Q.ベンチャーならではの強みは何でしょうか?

もちろん、ベンチャーでは大変なことはもちろん多いです。人も少ないし、お金もない。弊社ではこれまで合計で資金調達も3億5千万程度行っていますが、大企業の資本力に比べれば大きいものではありません。

でも、大企業の決済プロセスだと、市場があるかわからないところにお金を下ろせない。うちがやっている分野は10年後にどうなるのか全くわからない。そういうところに億単位の資金とリソースを全力で投入できるのはスタートアップだけです

他にも、ベンチャーだとチームが小さいので意思決定をしやすいです。また同じ人数でやる時には無駄が少ないベンチャーの方が強い。マッキンゼーで働いていたとき見てきましたが、大企業は従業員が全員優秀でなくても動くようなシステムになっているので

あと、実は最初立てた事業プランは、「プリンテッドエレクトロニクス業界」というところ以外ほとんど全部変わっているんです。方向転換出来るのがスタートアップの強みなので、こういうふうにやってだめだったから次はこうしよう、と意思決定していきます。最初は甘い考えで始めたんですが、加速試験とかをやったら耐久性がなくて、全然ダメだったんですよ。そこでまずは教材という形で売りつつ、技術を高めて、今では専用プリンターも内製できるようになりました。

(なるほど・・・ここで「少人数で新しい分野を切り拓く」という点に既視感を覚えました・・・そうです!大学院生おなじみの”研究”です!)

Q.まだない市場を作るというのは研究と似ているように思いますが・・・?

たしかに、研究と新事業をやることは似ています。世界で誰も正解がわからないことに仮説を立てて、それが正しいか検証してゆくというプロセスは研究と全く同じですね。例えば、実験なら多数のパラメーターがあって、どのパラメーターをどれくらい振ればいいのかわからない。

起業も同じで、自由度が無限なんです。例えば技術を上げるという話があったときに、内部でどうにかするというのもあるし、大企業と提携するというのもあるし、提携するとしてもどことするかという話もあって、本当にあらゆる方法があります。

→次ページ、若いうちに一生分のお金を稼ぐ唯一の方法とは…。

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ABOUTこの記事をかいた人

ま寿司

化学系の院生です。

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