データから見る東大野球部の姿【第二回】~チーム打力の分析~

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今回の記事には前回をお読み頂いていることを前提の内容が多数ある。まだお読みになられていない方は、今回の内容を理解するためにも是非、拙稿「データから見る東大野球部の姿【第一回】~得失点と投手・守備力の推移~ 」をご覧頂きたい。

前回はチーム全体の得点と失点、得失点差から大まかな攻撃力と守備力、そして総合的なチーム力を追い、さらに失点を投手力と守備力に分解して見ることを試みた。

今回は、得点、つまり攻撃力の部分について具体的に考察する

得点よりおおまかな攻撃力を知る

とにかく野球には得点が重要で、1試合あたりの得失点だけでもチームの総合的な力はある程度推し量れることは前回示した通りだ。

得失点の内、得点の部分がチームの大まかな攻撃力となる訳である。

ということで、前回の復習も兼ねて、前回示していなかった「1試合あたりの得点(とついでに失点)がリーグ平均の何%に当たるか」を勝利数と共に示す。詳しい図の読み方や何故、平均に対して何%かに換算しているのかは前回を参照していただきたい。これにより、前述の通りおおまかな攻撃力(と守備力)が分かる。

得点 失点

やはり、勝利したシーズンは得点と失点がある程度優れていた傾向がなんとなく読み取れる。また、近年は宮台の活躍が注目されがちだが、攻撃力も東大の歴史の中では安定して高い成績を残していることが分かる。

ちなみに、勝利したシーズンとしていないシーズンの1試合あたり得点と失点の平均は以下の表のようになった。

  得点(点) 失点(点)
勝利 1.53 6.55
未勝利 1.11

8.10

また、リーグ平均に対する比率の方を平均した場合はこうなる。

  得点 失点
勝利 42.4% 183%
未勝利 30.4% 222%

こうしてみると、勝利したシーズンでは特に失点の数字の改善の方が得点の増加よりも良い。東大の勝利の裏には優秀な投手の存在があるのかもしれない。

東大の勝利するための条件は具体的に何か。機会があれば考察したいと思う。


少し話が逸れた。ともかく、このようにおおまかな攻撃力はチームの得点を見れば把握できる。ここからは、実際に得た得点から一歩踏み込み、打者の状態について詳しく分析する。

攻撃力の部分はおおまかに打撃と走塁に分けられるが、少なくともプロ野球では打撃の方が影響が大きいとされること、走塁を考察するにはあまりにデータが足りないこと(盗塁成功数しか公開されていない)の2点から、今回は打撃を主に考察し、特に出塁能力と長打力にスポットを当てる。この2つは打者の能力を測る際に特に注目される点であり、簡易なデータからも見ることが出来る。

出塁能力

出塁能力を知るために、まずは出塁率を見る。出塁率は文字通り打席の内、安打と四球で出塁した割合を示す。

ただし、出塁率は本来は分母は「打数+四死球+犠飛」とし、犠打(バント)を除くべきなのだが、残念なことに公開されているデータでは犠打と犠飛が分離されていない。そこで、分母は打席数とし、犠打を含めることにした。

犠飛打を考慮しないのではなく、犠打を含めることにした理由 (読み飛ばし可)

今回は、「犠飛を分母から取り除く=ノーカウント扱いにする」か「バント成功を分母に含めてしまう=アウト扱いにする」の選択をしなくてはならない。それぞれの問題点を考えた。

・犠飛をノーカウント扱いにする場合……文字通り犠牲フライの打席がノーカウントになってしまう。すなわち、犠牲フライが多いチーム=ランナーが3塁にいる状況が多い=出塁能力が高いチームは有利になる。

・バントをアウトとする場合……バントを多用するチームが不利である。ただし、バントは作戦上の問題なので自分たちから行わなければ不利にならない。

実はプロ野球ではバントはプラスになるケースは少ない、むしろマイナスを生むことが多い作戦である。特に、今回はバントの結果がヒットやエラーのような「最高の結果」になった場合ではなく、バッターがアウトになりランナーが進塁する「バント成功」のケースの扱いについて考えている分尚更である。バントを分母に含めれば、チームの作戦上のミスによる出塁率(≒アウトにならない確率)の低下についても考慮できると考えることも出来る。

ただし、六大学野球ではプロ野球と得点環境や守備力が違うため、もしかするとバントという作戦自体は実はプロ野球より多くのケースで有効である可能性は否定できないことには気をつけてほしい。少なくとも、バントの結果がエラーやフィルダースチョイス、処理しきれずにヒットというケースは多いだろう。これは、あくまでどちらを選択した方がマシかという話で、出来るなら慣例通りの計算をすべきである。

また、個人の出塁率を考える場合はこの理論は使えない。バントをさせられることによる出塁率の低下はチームの責任とは取れるが、選手の責任ではないからである。

 

ちなみに、敬遠も全て四死球に含まれている。前回述べたのと同じ理由で、リーグ平均に対して何%の出塁率だったかも示す。

OBP OBPAVR

東大の出塁能力は、グラフから分かるように、他のチームより著しく低い。しかし、15秋から16春にかけては他チームの90%の出塁率は確保できている。15秋から16春にかけてチームが高い得点能力を持っているのは前述のとおりだ。出塁能力が高いということはアウトになりにくいということだ。この「アウトにならない」ということは、野球において得点を増やすために非常に重要であると考えられていることである。高出塁率であった近年、東大が以前より高い得点能力を持っていたことも頷ける。

では、高出塁率であった要因は何なのか。もちろんヒットを多く打つことも出塁する一つの要因だが、近代的には四球を選ぶ能力が、出塁を増やすために非常に重要とされている。

ここで、打者の四球に関する能力を見るために三振率(K%)と四球率(BB%)に注目する。いずれも前回の投手の分析でも用いたが、今回用いるものは、それらを打者の側から見たものである。K%は打席の内何%で三振したかを示し、BB%は何%で四球を選んだかを示す。ただし、データの都合上BB%には死球と敬遠も含まれる。また、リーグ平均に対しての比率も示す。また、BB%をK%で割ったBB/Kも示す。BB/Kは、打席でのアプローチの適切さやストライクゾーンの管理能力を表すとされている。高いほどよい値である。

K%K平均比BBBBarBBKbbkavr

これまでの分析と同じように、東大の選手には高いK%で低いBB%、すなわち三振しやすく四球を選ぶ能力が低いという悪い特徴が見られる。これは、選手がボールにバットを当てる能力やストライクとボールを見極める能力が低いことが示唆している。また、両者の比率であるBB/Kを見ても、やはりストライクゾーンの管理能力は低いと言わざるをえない。

ただし、やはり近年に著しい向上が見られることもこれまでの指標と同様である。得点力増加には出塁率の向上があり、その背景には三振を減らし、四球を増やすといった、ボールにバットを当てる能力、ストライクとボールを見極める能力、打席でのアプローチの適切さの向上があるだろう。また、打力が高い選手には投手は慎重に攻めざるを得ず、四球が多くなってしまう。相手に「東大には打撃が良い選手が増えた」と警戒され、相手の攻め方が慎重になった可能性も考えられる。

注意して欲しいのは、K%が高い、BB%、BB/Kが低い=その打者が優秀でないということではないことだ。その分、長打力によって貢献する選手も数多く存在する。勿論、その場合は出塁能力の低さを補うだけのものが必要である。

 

 

長打力

次に、東大の長打力の様子も確認する。ここでは、二塁打と三塁打と本塁打のみを用いて長打力を評価するISO(Isolated Power)を用いる。二塁打を2、三塁打を3、本塁打を4として重み付けをして足しあわせ、打数で割ったもので、純粋な長打力を測ることが出来る。これまでと同様に環境によって左右されるため、リーグ平均に対する比率も示す。

isoisoave

やはり、基本的に東大の長打力は低調であるが、近年は昔と比べて良好な部類の長打力を持っていたと言える。ただし、特にリーグ平均との比を見ると、先ほどのB/KKのように著しい改善とまでは言えない。長打力は以前と比較して及第点と称した方が適切かもしれない。

まとめ

・東大の選手は出塁能力が低い。その原因として、三振が多く四球をあまり選べていない。ミートに関する能力やストライクボールの判別、打席でのアプローチに欠陥があると思われる。

・東大の選手は長打力が低い。

・近年は上述の状況が改善されており、得点力の増加に繋がっている。特に、三振が減り、四球が増えたことによる出塁能力の向上は著しい。

以上のように、宮台を始めとする投手力の改善にのみ注目が集まりがちだが、打力についても、出塁率の大幅な向上、長打力の改善が得点力の増加に繋がっているということが分かった。野手である桐生がベストナインに選出されたり、田口がに日本代表候補に選ばれたという事実からも今の東大には優秀な野手がいると言える。

次回は(あれば)、近年の個人成績について考察する。

使用した式

出塁率=(安打+四死球+敬遠)÷打席数

K%=三振÷打席数

BB%=四死球(敬遠含む)÷打席数

BB/K=四死球÷三振数

ISO=(二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4)÷打数

 

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