「東大生はレールに乗ってる場合じゃない」【世界初・ケータイをネットにつないだ男、鎌田富久氏が起業を激推し】

鎌田富久氏
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みなさん、 NetFront をご存知でしょうか。聞いたことないですかね。

では、ガラケーを持ったことはありますか?ガラケーを持ったことのある人は、NetFront を絶対見たことがあるはずです。

NetFrontはガラケーで使われていたブラウザです。 NetFront は日本中のガラケーに搭載されていました。特に、 NTT ドコモの i モードは世界初の携帯電話のインターネット接続サービスですが、そこに使われていたブラウザもNetFrontでした。

実は、その NetFront 、東大発のベンチャーが作ったものなのです。

☞学生証

  1. お名前:鎌田富久さん
  2. 所属:東京大学大学院 理学系研究科情報科学 博士課程修了
  3. 進路:東大在学中に起業し、 ACCESS を設立。 NetFront などを開発。現在は TomyK を設立し、ベンチャー企業の立ち上げサポートしている。

「東大生よ、企業に就職し、このままレールに乗った人生を歩むのか。レールを作る側になれ。優秀な東大生がイノベーションを起こす側に回らないといけない。」

鎌田富久氏は語ります。

この記事を読むと、きっと、「自分たちが起業して、イノベーションを起こさなければならない!」と思うはずです。

 

在学中に起業、iモードを実現、そして、エンジェル投資家へ

本日はお忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いいたします。まずは鎌田さんの経歴を教えていただきたいと思います。

よろしくお願いします。

私は東京大学の情報科学専攻の出身で、1989年の3月に理学博士を取得しました。

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あの世界初の携帯電話インターネット接続サービスである i モード実現に携わったみたいですが、起業は在学中にされたんですか。

大学 4 年生の時にソフトウェア会社 ACCESS を設立し、初めはネットワークの通信ソフトウェアを開発していました。

ネットワークの通信ソフトですか。当時はまだインターネットも普及していないですよね。具体的にはどのようなものを開発していたんですか。

最初は工場の機器をネットワークで繋ぐソフトウェアを開発していました。その後、ワープロやテレビをインターネットに繋ぐ開発をしたりしました。インターネットをテレビに繋ぐのは時代が早すぎましたね。(笑)

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テレビがインターネットに繋ぐのが普及し始めたのは最近ですからね。随分時代の先をいった開発をしていたんですね。その後、あの世界初の携帯電話 IP 接続サービスである i モードの開発に携わったのですね?

そうですね。色々なものをインターネットに繋いだ後、 NetFront という世界初の組み込み向けブラウザソフトを開発し、 NTT ドコモの「 i モード」を実現しました。 ACCESS は 2001 年に東証マザーズに上場しました。

i モード実現は当時を振り返った記事を読んだことがあるのですが、ドラマですよね。現在は何をされているのでしょうか。

そして、 2011 年 10 月に ACCESS を退任し、 2012 年 4 月からスタートアップを支援する会社 TomyK を設立し、活動しています。

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ーーーいわゆるガラケーのブラウザは、全て ACCESS が作ったものなんですって。皆さん一度は使ったことがあるはずです。自分の技術で作ったものが日本中の人々に使ってもらえるって本当にすごいです。

やりたいことをやらないで後悔したくなかった

そもそも、起業したキッカケは何だったのでしょうか。

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大学 4 年生の時にプログラムを書くアルバイトをしていたのですが、その当時、マイクロソフト社がソフトウェアのライセンスビジネスを始めたころでした。

ビル・ゲイツは法学部出身で頭が良くて、ソフトウェアをライセンス契約にして、生産にお金のかからないライセンスを売って稼ぐことを始めたんですよ。

このビジネスモデルはすごいぞ、これはアルバイトでやっている場合じゃないと思い、起業しました。

 

マイクロソフト社が出てきた時代だったんですね。やはり、当時、起業するというのは珍しいことでしたか。

はい。当時は起業することは珍しく、まず、周りに勧める人はいなかったですね。両親も反対していました。先生にも変わった学生だと思われていましたね。周囲から応援をされるようになったのは、i モードの仕込みの時期からです。

周りから反対されている中でも起業したのはなぜだったのですか?

やりたいことをやらないで後悔することだけは絶対にしたくなかったからです。昔からやりたいことは通すタイプでした。成功する自信があったわけではないです。

実際に起業して会社を経営していくのは大変でしたか。

そうですね、特に、お金は常に無かったですね。ソフトウェア会社なので、大きな仕事を受けられるようになっても、お金がもらえるのはソフトウェアが完成したあとなので、開発時に人件費を払うのは苦しかったです。

また、銀行から融資を受けようにも、銀行がソフトウェアをどのように評価して良いのかわからず、融資を受けられないという問題がありました。しかし、お客さんが支えてくれて、先に完成した後にもらえるお金の半分をくれたりしました。

ただ、自分の中の決め事として、家族や友人にお金を借りたりなど、周りに迷惑を掛けるようになったら辞めようというのはありましたね。一度お金を借りて、その場はうまくいって返せても、一度借りてしまうとまた借りてしまいますからね。それで返せなくなったりする。これはしっかり決めておいたほうがいいですよ。

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確かに、ソフトウェアって完成するまでは売ることが出来ないですからね。開発期間が長くなるほど、やりくりが大変だったのだと思います。

ところで、起業する上で仲間が必要だったと思いますが、一緒にビジネスをやる仲間はどこから見つけてきたんですか。

創業者は 2 人で、最初の頃は 5 – 6 人でやっていました。その後、後輩を引っ張ってきました。自分たちが新しいものを作るっていうのはやりがいがありますから、やりたがる人がいました。しかし、経営に必要な人など、技術者以外を雇うのが難しかったです。あと、最初は ACCESS で働きたいって人がいても、その人の両親が不安に思っているってことがあって、私が手紙を書いたりしました。

実際、自分たちが時代の最先端を行く新しい物を作っていると言うのは、エンジニアとしては燃えますよね。しかし、学校とビジネスを同時にやるのは大変ではありませんでしたか。

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また、時間もなくて、大学の課題とかも大変でしたね。演習課題でソフトウェア書いて提出するのですが、 ACCESS で書いていたプログラムをちょっと変えて持って行って、これでなんとかお願いしますといったら。「まあしょうがねえな」 と教授は寛容にも受け付けてくれました。(笑)

寛容な教授ですね。(笑)

ーーーやらないで後悔するよりは、やって後悔したほうがいい。「あのときああしていれば良かった」など思わないように、思い切って行動するのは大事だと思います。鎌田さんの行動力を見習いたいです。

研究とビジネスは似ている

大学 4 年生の時に起業された鎌田さんですが、どのような学生だったのでしょうか。まずは、進学先に情報科学科を選んだ理由からお聞きしたいです。

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情報科学科は私の代が第6期なのですが、情報科学科の先輩が学科の紹介記事を書いていて、その記事を読んで興味を持ったことがキッカケでした。新しく情報科学科が出来たようだが、何やら面白そうだと。記事を書いた先輩のところへ話を聞きに行き、進学先に決めました。

情報科学科は当時まだ新しかったのですね。時代の最先端を行く学科だったのだと思います。研究はどのようなことをされていたんですか。

研究分野は、情報の視覚化、グラフ描画のアルゴリズムでした。当時はこの分野をやってる人なんてほとんどいませんでしたね。そのためか、博士課程の時に書いた論文は 2000 ほど引用されているんですよ。

それはすごいですね!ビジネスをしながら博士号を取得したのですよね。

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研究とビジネスを並行してやっていたのですが、研究とビジネスには共通点があると感じました。それは、どちらも課題設定が大事ということです。研究で問題設定が大切なことはもちろん、ビジネスにおいても、いい問題を見つけて解けば、それが利益になります。研究では、そのような問題設定と解決のプロセスを学べました。

起業成功の秘訣は課題設定だったんですね。なるほど。

ーーー論文が 2000 も引用されているのは本当にすごいと思います。課題設定が大切というのはビジネスでも同じなんですね。参考になります。

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鎌田さんは TomyK でスタートアップの支援を行ったり、東大のアントレプレナーシップ道場で講師をしたりと、積極的に起業したい人をサポートされていますね。そもそもどうして起業のサポートを始めたのでしょうか。

近年スマートフォンや、クラウドなどは、アメリカに牛耳られてしまいました。このように牛耳られてしまったフィールドでビジネスをしても、勝てません。人の畑で耕しても勝てないんです。そこで、自分でプラットフォームを作れるものを応援しようと。しかし、ベンチャーを立ち上げるのは大変です。経営もそうですし、何より資金面で苦労します。そこで、私が投資を行ったり、取締役をしたり、ベンチャーキャピタルの紹介するんです。そうして、 0 から 1 にするのが私の役割です。

ーーー確かに、最近の IT はアメリカに牛耳られてますからね…新しくプラットフォームを作るのは、日本の発展にも大切ですね。

起業は割がいい

ところで、起業するメリットってなんでしょうか。

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起業するのはキャリアのショートカットになるんですよ。例えば、東大生でしたら、これから新卒で大企業に入って、新規事業のトップになる。これは 20 年くらいかかります。しかし、スタートアップして M & A されると、数年で大企業で新規事業のトップです。出世についても割が良いですよ。例えば、新入社員が 1000 人いたら、 その中で社長になれる確率 0.02 %  、幹部になれる確率は 0.1 % です。しかし、起業すればその時点で社長か幹部です。

確かにそう聞くと起業は割が良い気がしますね。

それに、イノベーションを起こしたいなら間違いなくベンチャーです。大企業はひとつの事業をするのにも、たくさんの人が動くので、事業計画をじっくりと立てます。しかし、イノベーションにはスピードが大事です。ベンチャーのスピード感はまさにイノベーション向きなんです。

イノベーションにはスピード感が大事という話はよく聞きますね。東大生は最先端の研究をしているはずなので、イノベーションを起こす側に回るべきですね。

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まだ、東大発ベンチャーって言うのは珍しいんです。だから、ニュースでも”東大発”ベンチャーって付きます。しかし、アメリカのスタンフォードとか MIT ではそういうのは”〜発”って言うのは付きません。それは、起業するのが当然のことだからです。この、まだ珍しいうちはチャンスです。起業すれば、メディアが取り上げてくれて、宣伝してくれます。もう少し時代が進むと、東大も起業が当然になっていると思います。

なるほど、メディアが注目してくれる今がチャンスなんですね。東大生は積極的に起業すべきというのがわかりました。

東大生は頭が先を考えてしまい、一歩進んでやってみるという行動がでないのですが、まずやってみることが大事です。今の時代は Kickstarter などのクラウドファウンディングもあるのでやりやすいと思います。クラウドファウンディングは、プロダクトに対してお金を払ってくれる人から意見を聞けるのでいいですよ。

ーーー起業ってリスキーなイメージばかりだったのですが、意外と割りにあっているのかなと思いました。鎌田さんが起業された時代と比較して、今は環境が整ってきているイメージなので、まさに、起業すると注目してもらえる今がチャンスなのかもしれません。

まずは何かを真剣にやってみることが大事

さて、実際に起業するにはどうすれば良いのでしょうか。起業はしたいけど、何をビジネスにすれば良いのかわからないという人もいるかと思います。

まずは何かを真剣にやってみることが大事です。はじめから大ヒットするようなものが作れるわけではなく、やっていたらネタが沸いて来ます。例えば、 TomyK でスタートアップを支援した WHILL は、初めはメーカーでの仕事の傍ら、週末に仲間たちで集まってものづくりをしていたところで、一人の車いすユーザの「 100 m 先のコンビニに行くのをあきらめる」という声から、スタイリッシュで機能的な電動車いすの開発が始まりました。

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起業をするにも、電気系や情報系はハードルが低いと思いますが、機械系、農学系や文系の方はどうすればいいでしょうか。

機械系は、まずはなんとかして 1 台プロトタイプを作って、動くものを見せると良いです。数十万円とかの開発資金であれば、頑張ればやりくりできるはずです。農学系は、先生と仲が良ければ、初めは大学の設備を借りるのもありかと思います。また、文系は、課題解決型で取り組むと良いと思います。技術から出発するのでなく、自分が思い入れのある課題を見つけ、技術者を捕まえて最強のチームを組んで取り組めば良いのです。そして、どの分野でもそうですが、真剣にやっていると、必ず応援してくれる人が現れます

ーーー私も大学の教授によく言われるのですが、まずは自分でものを作って動かしてみるのが大事だと。実際に作ってみることで、新たな発見があったり、解決すべき問題が出てきたりすると。「まず何かを真剣にやってみる」のは大事なのだと思います。

東大生よ、レールを作る側になれ。

貴重なお話ありがとうございました。最後に東大生に向けて一言お願いします。

レールを作る側になりましょう。戦後すぐ、 1946 年に創業しグローバルに成功した会社が 2 社あります。ソニー、ホンダです。このクラスに成功する会社が日本から出ないといけません。日本には新しいイノベーションが必要です。そして、優秀な人がイノベーションを起こす側に回るべきです。

ーーー本日は本当にありがとうございました!

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鎌田富久氏

ABOUTこの記事をかいた人

情報系の院生をしています。星空が好きです。

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